ヴォクシー/ノア 開発責任者に聞く(3/4) ― 低床化と薄型化 ―
低床フラットフロアによる優れた乗降性
二つ目の“WAO!”は新開発低床フラットフロアにより、大幅に向上した室内の広さと乗降性です。2代目では路面から360ミリの位置にステップがあり、床面の高さは465ミリでした。新型では床面をフラットのまま85ミリ下げてステップなしで乗り降りができるようにしました。
この360ミリという高さにはこだわりがあります。人間が楽に乗り降りできる床面の高さは大腿筋の最大筋力の30%以下といわれていて、それは身長に比例します。360ミリという高さは身長150センチ以上の人なら楽に乗り降りできる高さなのです。もし、これが390ミリになると、身長160センチ以上ということになり、女性の多くが楽に乗り降りできないことになってしまいます。また路面からのクリアランスを守りながらの360ミリというのは限界の高さです。
しかし、これを実現するためにはいろいろなものを薄型化し、配置も工夫しなくてはいけません。今回はダッシュから後ろの部分はリアサスペンションも含めて、まるまる新設しました。例えば燃料タンクは長さ約1.1m×幅約40cm×高さ約15cmの薄く細長い形状にして、車両の左側に配置していますが、この形状だと燃料計を正しく表示させるために、さらにひと工夫が必要になります。こうしたさまざまな工夫の積み重ねの結果、理想的な低床フラットフロアが実現しました。
また、デザインや空力抵抗を考慮して全高を25ミリ低くしていますが、それでも低床化によりクラストップの室内高1,400ミリを実現。小学校3~4年生くらいのお子様なら立ったまま移動が可能です。荷室フロアの高さもクラストップまで低くなり、重い荷物の積み降ろしもラクラクになりました。さらに、低床化によって前列の座席の下にスペースができ、そこにハイブリッドのバッテリーを収納することができました。
革新のパッケージがもたらす大空間
全長を100ミリ伸ばし、さらに低床フラットフロアによって車内空間は圧倒的に広くなりました。しかし、物理的に広くしただけでは不十分です。空間を使いやすくしなければ、その広さは実感してもらえません。そういう意味で室内の広さを演出する重要な方法がシートアレンジです。
ホイールベースの拡大やシート形状の工夫などにより、後部座席の膝まわりのスペースがグンと広くなりました。とくに3列目シートは、開放的な広がりを生む高いアイポイントやトリム形状、自然な着座姿勢、そして座り心地のいいシートで長時間のドライブでも快適です。
さらに、ワンタッチスペースアップシートになっている3列目のシートを薄型化し、リアクォーターガラスの凹部にスッキリ収まるように改良して、大きくてスッキリと使いやすい荷室を作り出すとともに、その空間に左右に横スライドさせた2列目のシートをピッタリ格納できるようになり、クラス初となる最大810ミリの超ロングスライドを可能にしました。2列目を後ろまで下げると、そこにはリビングのようにくつろげる広大な空間が出現します。この他にも、2列目の横スライド+超ロングスライド機構を活かした多彩なシートアレンジができるようになりました。
また、スライドドアの開口幅を75ミリ大きくし、両手が塞がったままの乗り降りや大きな荷物の積み降ろしもスムーズになっています。さらにスライドドアの脇のアシストグリップと低い位置にある子供用のチャイルドグリップを大きく使いやすい形状に改良し乗降性をよくしています。
こうした“WAO!”はぜひ実車でご確認ください。きっと、その広さや乗降性のよさに驚き、感動していただけるはずです。
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