レクサスRC F 開発責任者に聞く(2/3)
世界一乗りやすいスポーツカー
LFAは限られたお客様に買っていただいたクルマですが、けっして扱いにくいクルマではありません。あの外観とあのエンジン、そしてあの排気音からして、「こいつはすごい」と構えてしまいますが、実際に乗ってみるとすごく運転しやすいクルマです。
世界一乗りやすいスポーツカーであること。運転が上手な人だけに限らず、幅広いお客様に走りの楽しさを提供したい。それこそがレクサスがやりたいことです。“F”ブランドの「F」はその開発をおこなってきた富士スピードウェイの「F」からとったものですが、同時にFUN(楽しさ)の「F」でもあるのです。
しかし、だからといって、運転がつまらないクルマになっては意味がありません。運転スキルの高い人は、クルマの特性が分かりやすくなっているので、それをより上手に引き出して走ることができる。一方、普通のスキルの人も電子制御等のサポートによって知らないうちにその特性を使って、上手に安全に走りが楽しめる。そういうクルマでなくてはいけません。
また、クルマはドライバー(オーナー)の生活を支える手段であり、モータースポーツを楽しむ道具であり、ライフスタイルを演出する小道具の一つであって、主役はあくまでもドライバー(オーナー)です。手段が主役より目立ってはいけません。さりげなく、必要なときに適切にドライブをサポートする。主役であるドライバーに楽しんでいただくことに徹する黒子であるべきなのです。しかし、控え目ながらも、ちゃんと輝きがあって存在感がある。それがレクサスです。
現在、世界中のさまざまなメーカーから山のようにスポーツモデルが発売されています。それぞれ個性が違っているので、お客様の選択肢は拡がっています。たくさんある中からお客様が自分にあったスポーツカーを選んでいただければいい。運転が上手な人が乗れば、もっと速く走れて楽しいクルマは他にたくさんあると思います。ただ、そんなお客様にもぜひ一度、“F”に乗ってみていただきたい。そして、どっちのクルマが自分の感覚に合っているのかを確かめていただきたいと思います。
矢印の先は尖っていないといけない
さて、RC Fです。LFAは予定の500台を作りきりましたし、IS Fの生産も終了してしまいました。これからは新しいRC Fがレクサス“F”ブランドのフラッグシップとしてブランドを牽引していかなければいけません。だから以下3つを開発コンセプトにしました。
1.LFAを想起できるリアルスポーツとしての世界観/技術の継承
2.“F”の楽しさの3要素「サウンド」「レスポンス」「伸び感(パワー)」の継承
3.RC Fによるモータースポーツへの参戦で“F”のイメージを向上
ですから、現在、RC Fのレーシングカーを準備していて、今後、IS FでもやったCCS-Rも作りますし、GT3カテゴリーのレースカーも作りレースに参戦する予定です。これまでLFAがやってきたことをRC Fがカバーし、モータースポーツの舞台でレクサス“F”のパフォーマンスを証明するとともに、認知度のアップを図っていきます。
RC Fは最初からレースに出ることを念頭に置いて開発しています。だから、モータースポーツ参戦のベース車になりやすい2ドアのクーペなのです。現在開発中のレーシングカーは世界中に供給していきますし、一般のお客様への市販も検討していきたいです。
IS Fは完成車をベースに開発をおこないましたが、RC FはRCと並行して開発してきました。同時開発ですから、RCの要件で仕様が変更になると、そのキャッチアップが大変でした。「あれ、前はこうなっていたよね。変わっているじゃん。じゃあ、こっちも対応しないと…」ということがしばしばありました。しかし、その一方で、2ドアのクーペというパッケージしかり、ボディ剛性の強化など、後から強化しにくい要件を開発に盛り込めたことは大きいです。
また、IS Fはクルマに詳しい人であればISとの違いを識別できますが、普通の人には一見すると違いが分かりにくいクルマでした。もっとも、クルマ好きの住職さんや病院の先生などは、逆に「目立たないのでありがたい」「往診にも使える」と評価いただき、購入いただいたケースもありましたが(笑)、やはりこういうクルマには華が必要です。
RC Fはレクサスブランドの向かう方向性を示すフラッグシップです。矢印の先端は尖っていないと意味がありません。ですから、LFAがそうであるようにアピール性の高い外観と意匠が必要なのです。もちろん、それ以上に重要なのは走行性能であることはいうまでもありません。
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