レクサスRC F 開発責任者に聞く(3/3)

「も」と「が」の違い

5L V8自然吸気エンジン
サーキットでも日常シーンでも快適な室内。

RC Fのエンジンは新開発の5L V8自然吸気エンジンです。シリンダーブロック以外はすべて新開発して最高出力477ps/7,100r.p.m.という圧倒的なパワーを実現しています。クルマに詳しい人からは「ターボも使っていないのに、どうしてそんなパワーが引き出せたの?」と不思議がられるくらいの自信作となっています。

また、RC FはLFAやIS Fと同じように「サーキットがちゃんと走れるクルマ」として開発しました。これは実はとても大変なことです。F SPORTは「サーキット“も”走れるクルマです」といっていますが、この「も」と「が」の間には大きな隔たりがあります。

サーキットがちゃんと走れるということは、1日中、サーキットを走って遊んでいられるということです。そのためにはエンジンの冷却性能や信頼性、ブレーキ、TVD(Torque Vectoring Differential)、メーター類、シートなどあらゆるパーツがそれに耐えうるものでなければなりません。もちろん、ご購入いただいたお客様がすべてサーキットを走行されるわけではないでしょうし、それは極一部のお客様に限定された使い方かも知れません。しかし、私たちが「サーキット“が”走れます」と自信を持っていえるための設えというのは、普通のクルマとは全然レベルの違うものになってくる。「も」じゃなくて「が」を成立させるために、あらゆる要件が変わってくるのです。

こうしたものづくりの考え方ややりたいことはLFAやIS Fの時と変わっていません。ただ、それがどれだけレベルを上げてできているかということが重要です。IS Fを発表したときは、「レクサスがあのボディに5Lのエンジンを積み込んで、とんでもないクルマを作った」と出したこと自体に驚いてもらえました。しかし、すでにIS FもLFAも出ている今回はそうはいかない。ゼロから1を作れば、それは驚いてもらえます。しかし、1を知ってしまった人に2を見せても驚いてもらえない。100にしないといけない。だから、最初にIS Fを乗ったお客様に100倍驚いていただけるクルマを作らないといけなかったのです。

そして、そんなクルマに仕上がりました。乗っていただけると、それはご理解いただけるはずです。セールスのみなさんからは「IS Fのいいところがレベルアップしたというより、2段階くらいジャンプアップしている」と評価をいただいています。

“F”の世界観を体感していただきたい

また、“F”シリーズのRC Fには新しい技術を創り出し、それをF SPORTに展開するという重要な役割があります。そして、再び新しい技術を生み出して展開していく。このサイクルを繰り返して、新しい技術が泉のように涌き出しては展開されていくようにしたい。

“F”シリーズは台数が少ないし、お客様が限定されています。クルマに詳しくて、一緒に新しい技術を作っていくことや試すことを楽しんでいただけるようなレベルのお客様が多いので、新技術に挑戦しやすい。実際に乗っていただき、いろいろなご意見をいただける。そうして技術が成熟され、それがF SPORTに展開されていくのです。

そして何よりも“F”シリーズのRC Fに求められるのは、繰り返しになりますが“F”の世界観を分かりやすくお客様にお伝えするということです。今回、販売店にはたくさんの試乗車を用意いただいて、「できるだけたくさんのお客様に乗っていただき、“F”の世界観を体感していただけるようにしていただきたい」とお願いしています。それによって“F”の世界観を気に入っていただき、結果、F SPORTを購入していただく。それでいいと思っています。RC Fとはそういう役割のクルマでもあるのです。ですから、販売台数も大切ですが体験していただく試乗人数の方も重要だと考えています。

ぜひ、みなさんもこの機会にRC Fを通じて“F”の世界観に触れてください。

取材・文:宮崎秀敏(株式会社ネクスト・ワン)