新型オーリス 開発責任者 安井慎一氏に聞く

トヨタ初、ダウンサイジングターボエンジン搭載!

欧州戦略車として、ヨーロッパの道路で鍛え上げた走行性能、ダイナミックでスポーティなスタイルを特徴とするオーリス。
2015年4月に、話題の1.2Lダウンサイジングターボエンジンを加え、ビックマイナーチェンジが行われた。このダウンサイジングターボエンジンをはじめ、今回、どのようにビックマイナーチェンジしたのか開発責任者を務めた安井慎一エグゼクティブチーフエンジニアに話を聞いた。

競合車ひしめく欧州Cセグメント市場で認められたグローバル・スポーツハッチバック

2012年にモデルチェンジし、2代目となったオーリスは、外形スタイル、感性性能ともに、「スポーティ」とうい明確な方向性を示し、オーリスのDNAである「直感性能」をブランドイメージとして構築してきました。「直感性能」とは、見た瞬間に感じられる格好良さや、乗り込んで走りだした瞬間に感じられる個性と走りの良さなど、ドライバーに瞬時に訴えかけるクルマの性能のことです。

2006年に登場した初代のオーリスは、当時、欧州ではショート&トールのスタイルが流行っていたこともあり、同じスタイルのヤリス(日本名ヴィッツ)の評判が現地で良かったことから、ショート&トールという方向性にチャレンジしました。その結果、欧州では一定の評価はいただきましたが、正直なところ「見た感じ、大きなヤリスに見える」と言われてしまったのです。つまり、車格が安っぽく見えると、捉えられてしまったのですね。

また、欧州の厳しいCO2排出量規制が始まってきたこともあり、2012年に発表した2代目オーリスは大幅にデザインを見直し、低重心で空力性能の良いスポーティなスタイルに仕上げました。あわせて加速性能や操縦安定性といった動力性能でも有利となるパッケージを実現。「スポーツハッチバック」という明快なコンセプトを忠実に具現化しました。モデルチェンジ後は、欧州でご好評いただき、初代の時は欧州Cセグメントのハッチバック市場で販売台数が8~9位くらいにいたのですが、現在、フォルクスワーゲンゴルフ、フォードフォーカス、プジョー308に次いで、販売台数4位にランクされるまでになりました。

今回のマイナーチェンジでは、この2代目オーリスの「スポーツハッチバック」というコンセプトをキープした上で、発売後のお客様の評価、直近の市場動向を踏まえ、さらに「スポーティ」に磨きをかけ、改良を施しました。 トヨタ新開発のダウンサイジングターボエンジンを搭載するとともに、外観スタイルを変更、また、外観スタイル以上に内装・インテリアを大幅に変更し、さらに衝突予防安全装置を導入しました。

オーリスのDNA「直感性能」を熱く語る安井エグゼクティブチーフエンジニア

さらに「スポーティ」を求め、爽快な走りと低燃費を両立した、新開発1.2L直噴ターボエンジンを搭載

ダウンサイジングターボは、ヨーロッパや中国ではフォルクスワーゲンTSIの代名詞のようになっていて、欧州メーカーがこぞって開発を進めている中、「なぜトヨタはやらないのか?」と様々な方から言われてきました。そこで、なんとか同じ欧州Cセグメントのハッチバック市場でフォルクスワーゲンゴルフと競合する、このオーリスにダウンサイジングターボエンジンを投入してみようと努力をしてきた結果、搭載することが出来たのです。もともとこのエンジンはヨーロッパがメインの市場になると考えていたのですが、日本でも、環境に優しいハイブリッドとは別に、エンジンをダウンサイジングすることで、燃費も良く、更に、加速フィーリングが良く、走りも楽しい方向になることから、是非、試してみたいと、導入に踏み切りました。

このエンジンは、トヨタ初、新開発の1.2L直噴ターボエンジンで、走りの楽しさと低燃費を両立しています。低回転域から高いトルクを出すことができるため、走りだしから軽快に加速し、また、アクセル操作に対する瞬時のレスポンスや、滑らかに素早く伸びていく加速感が得られます。技術的には、ターボ(タービンのフィン)を小型化することによって、抵抗を少なくし、低速から、ターボの効きを高めております。このターボエンジンは、ある程度回転数が上り、ターボが効いてくると一気に加速する「かっ飛びターボ」のイメージでなく、1クラス上の排気量並にパワーがあり、ドライバーの意図通りに加速できるようなものになっています。

燃費も、JC08モードで19.4㎞/Lを達成しています。私たちはこのエンジンを、1.8Lの走りを1.5Lクラスの燃費で実現する1.2Lターボエンジンだといっています。まずは数字にこだわらずに試乗して実感していただくのが一番ですので、ぜひ店頭で試乗してもらいたいですね。

オーリスに搭載された、トヨタ初、新開発の1.2L直噴ターボエンジン

外観スタイルも、よりダイナミックに、さらに先進的に進化

外観スタイルは、大幅な変更は行わず、より最近のトヨタのデザインを象徴する「アンダープライオリティ」(バンパーの下部を強調するデザイン)で、より「キーンルック」(フロントフェイスの先端が鋭く尖って薄く見えるデザイン)を強調したデザインに進化させました。

具体的にはワイド&ローを強調するフロントの立体造形、フロントグリルをより薄くシャープにし、ロアの開口部を両サイドに広げ、スポーティでダイナミックな印象を与えています。サイドは全長を55mm伸ばし、さらにシャープなキャラクターラインを通すことによって、伸びやかで勢いのあるプロポーションに進化させました。リア周りではLEDを使ってテールランプを横一線のラインのように見せる光りかたに変えました。フロントのヘッドライトにもLEDのクリアランスランプを横一線に光らせ、前後のつながり、統一感を持たせています。
ダイナミックさと先進性を進化させ、強い存在感を放つスタイリングを実現できたと思います。

低重心感が増し、ダイナミックなスポーティさを体現したフロントビュー

上級ハッチバックにふさわしい上質で洗練されたインテリア

実は、2代目オーリスを発表後のお客様の反応は、「外観はかなり変わったのに内装が今一つ」だったのです。具体的には「1980年代に戻ったようだ」と言われました。例えば時計だけがぽつんと中央のエアコン吹き出し口の左側に配置されているなど、まるで1980年代のラジカセのような感じに見えてしまったようなのです。

そこで、今回のマイナーチェンジでは、インパネとセンタークラスター(ナビやエアコンスイッチ周辺)を立体的に配置することで、浮かんでいるかのような印象を与える先進的なデザインにしました。センタークラスターはピアノブラックとサテンクロームメッキ加飾により質感を高め、また、iPadのようなフラットで凹凸の少ないシンプルなデザインを採用しました。インパネには、各グレードの個性に合わせて木目調、ソフトレザー等4種類の加飾を施すとともに、加飾部分の下部にステッチを施すなど細部にまでこだわり上質感を持たせました。また、メーターもメッキリング加飾を施し、立体的な筒の形を強調することで先進感も演出しています。その他にも、左右のエアコンの吹き出し口も回転式ノブを採用し、デザインの印象を変えました。もちろん時計に関してもナビ画面の左に配し、全体にインテグレートされるようにデザインしていますし、メーター照明はブルーイッシュホワイト(クリアブルー)に統一した結果、上質で洗練されたインテリアに仕上がっていると思います。

今回のマイナーチェンジで、大幅に見直した内装・インテリア。上級ハッチバックにふさわしい、質感の高い先進性と スポーティさを表現(写真は、オーリス120T)

衝突予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense C」を設定

先日(3月30日)発表したカローラフィールダー/アクシオに続いて、今回のオーリスにも、衝突予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense C(トヨタ・セーフティ・センス・C)」を設定しました。カメラとレーザーレーダーという異なる特性の2つの検出装置で前方を監視して、事故・衝突を回避・軽減支援するシステム(プリクラッシュセーフティ)です。それと、‘レーンディパーチャーアラート’(間違えて車線をはみ出しそうになった時に警報を出す機能)と‘オートマチックハイビーム’(暗い道路での視認性向上する機能)の3点をセットにしたシステムで、衝突回避支援パッケージとなっております。今回追加した1.2L直噴ターボエンジン車、1.8Lエンジン車に標準装備をしており、1.5Lエンジン車にもオプション設定しています。

 

衝突しそうな場合に、警報を発して回避操作を促し、約30km/h~80km/hで走行中にブレーキを踏むと、強力なブレーキアシストが作動。仮にブレーキを踏めなかった場合でも、自動ブレーキが作動し、約30km/hまで 減速。また、30km/h以下の車速域では自動ブレーキが作動し、衝突回避支援する。

スポーティで上質なハッチバックを好むお客様へ

今回のオーリスのマイナーチェンジでは、時流に合わせて先進安全機能を搭載するとともに、オーリスのDNAである「直感性能」(見た瞬間に感じられる格好良さや、乗り込んで走りだした瞬間に感じられる個性と走りの良さなど、ドライバーに瞬時に訴えかけるクルマの性能)をさらに進化させました。

今回、投入した1.2L直噴ターボエンジンは、まさに走り出した瞬間から、走りの楽しさを感じていただけるものと確信しております。スポーツカーとまでは言っていないのですが、取り回しのし易いスポーツ感覚、街乗りで楽しめるスポーティカーです。走りを楽しむお客様に是非、買っていただいて、ターボの良さを味わっていただければと思います。 また、今回、内・外装ともに上質感を高め、欧州からの輸入車に対抗していくようなイメージを打ち出していこうと思っています。より上質なハッチバックを好まれるお客様、従来、大きいサイズのクルマからダウンサイジングしてこのクラスのサイズに乗り換えられるお客様に是非、乗ってもらえればと思います。

安井 慎一

1963年愛知県生まれ 明治大学理工学部大学院修了後、1988年にトヨタ自動車入社 入社後は、エアバッグ/シート/シートベルトの設計を担当。1997年に製品企画部に異動し、ファンカーゴ、初代bB、初代イストの製品企画を経て、2002年に10代目カローラのコンセプトプランナーを担当し、以来、カローラシリーズ、オーリスの製品企画を担当。現在は、両車種のエグゼクティブチーフエンジニアを努める。
幼少のころよりクルマが好きで、日産スカイライン2000GTRやトヨタ2000GT、ポルシェなどに心を躍らせた。家に最初にあったトヨタパブリカも想い出のひとつ。大学在学中に初めて赤い日産パルサーの中古車を購入。トヨタ入社後はカリーナEDやソアラをはじめ、様々なクルマを乗り継いだ。ソアラ購入時には同時にランドクルーザ80と悩むなど、どちらかというと人とは少し違うクルマに乗りたかったという。因みにその時はウィンドサーフィンに凝っていた時代で、ソアラにウィンドサーフィンを積んで出かけていた。
海外出張中は出来るだけ自分でクルマの運転をしているとのこと。その理由は、その国の交通状況やドライビングビヘイビア(作法)を知ることで、それぞれの国に合ったクルマのセッティングを見極めたいからだ。
ちなみに運転マナーではインドが一番ひどかったそうで、片側2車線道路の遮断機が下がった踏切の場合、片側2車線からクルマがはみ出してきて4車線になる。それが反対車線も同じ光景で、遮断機が上がるとそれらが一斉に進み出てきて、結局路肩まで使いながら走っていくという、信じられない光景の目にしたと笑いながらエピソードを披露してくれた。

MORIZO on the Road