ノア・ヴォクシーとステップワゴンを「試乗」で徹底比較!
大きくなっても運転はしやすく
子育て中の家族にとって、2022年はファミリーカー選びの大チャンスである。年の前半には、トヨタ・ノア/ヴォクシーとホンダ・ステップワゴンが相次いでフルモデルチェンジした。
いずれもユーザーニーズの高い、ミドルサイズミニバンだ。FFプラットフォームを使ったワンボックス型で、室内の広さは圧倒的。3列シートで7~8人の乗員を乗せることができ、荷物の積載能力も高い実用性に優れたモデルである。
これらは海外ではあまり見られないジャンルで、日産・セレナも合わせて、日本の3大自動車メーカーが総力を挙げて開発してきた。負けられない戦いだからこそ、お互いに切磋琢磨し、どんどん進化する。
スペース効率や使い勝手、収納やシートアレンジ、乗り心地や動力性能、さらに燃費、安全装備など、あらゆる面で激しい競争が繰り広げられてきた。もうこれ以上、改良点はないだろうと思われたうえに、さらに、モデルチャンジのたびに新たな機能が付け加えられるのだ。
かつては“5ナンバーミニバン”と呼ばれていたが、車体のサイズは次第に大きくなってきた。ノア・ヴォクシーもステップワゴンも、新型は全車が、いわゆる“3ナンバー車”だ。
ノア・ヴォクシーは全幅が1730mmとなったが、全長は4695mmで先代モデルと同じ。ステップワゴンは全幅が1750mm、全長は4800~4830mmと、ひと回り大きい。
数字を見れば大きなクルマなのだが、実際に乗ってみると、両車ともに小回りが利いて運転しやすい。必ずしも運転の得意な人ばかりが乗るわけではないので、取り回しがよくないということは商品として致命的なのだ。
ステップワゴンの最小回転半径はノア・ヴォクシーより0.1m小さい5.4m、これは先代モデルと同じ数値(スパーダ プレミアムラインの2WD車のみ5.7m)である。ここはどうしても譲れないポイントだったのだろう。ドアミラーの取り付け位置を変更し、後方も含めて死角を減らすことに注力している。
重要なのは、運転席からの視界である。見晴らしがよく、車両感覚がつかみやすくなければならない。それをわかっているからだろう、両車とも似たようなソリューションを採用している。
どちらもAピラーを2本に分割して死角を減らしているのだ。シートでの開放感は素晴らしく、車内には光があふれる。ダッシュボードの上部をスッキリさせているのは両車で同じだが、ステップワゴンは前方も側方もきっぱりと直線で構成されていることが特徴的だ。
ルックスは極めて対照的
エクステリアデザインでは、方向性が分かれた。ミニバンは、見た目の力強さや立派さを競ってきた歴史がある。ちまたでは“オラオラ顔”とも呼ばれるほどで、さすがに行き着くところまで行った感じがあった。新たなテイストを模索する段階にきたわけだが、その手法は対照的だ。
ノア・ヴォクシーのエクステリア
ノアのフロントマスクは先代の意匠を受け継ぎながらブラッシュアップ。ワイド化したグリルは、標準仕様ではボディー同色で、エアロ仕様にはキラキラしたメッキが施されている。
ヴォクシーは大胆かつ斬新な造形である。フロントグリルは極大化し、前面を覆い尽くしている。ただし、単純に威圧感を増す意図ではない。5段のルーバーと細かいひし形のメッシュで構成され、薄型のヘッドランプとも相まって洗練された表情をみせる。すごみよりもクールさのほうが強く感じられるのだ。これまでになかったデザイン手法である。
ステップワゴンのエクステリア
いっぽう、“きれいな箱”を目指したのがステップワゴンだ。ワンモーションフォルムだった先代モデルから方向転換し、初代モデルを思わせる形に回帰した。シンプル&クリーンというのは、最近のホンダ車に共通するデザインである。メインストリームではないが、オルタナティブを求めるユーザーも3割ほどいる、というのがホンダの説明だ。
ベーシックグレードのステップワゴン エアーはこのポリシーが貫徹されていて、潔いほど飾り気がない。
ステップワゴン スパーダはメッキパーツを増やしてややスタイリッシュ志向だが、それでも物足りないと感じるユーザーには無限(M-TEC)やホンダアクセスのカスタムパーツで対応するという構えだ。
ステップワゴンのインテリア
インテリアでも、ステップワゴンのエアーは独自の道を行く。シート地やトリムにざっくりとした風合いのファブリックが用いられている。家のリビングルームのような空間を目指したのだという。ダッシュボードにも同じファブリックが張られていて、和みの空間を形作る。ダークな合成皮革を主体にしたインテリアが普通であり、リビングルーム志向のインテリアがどう受け入れられるか、興味深いところである。
ハイブリッドには個性がある
パワーユニットについては、どちらにもガソリンエンジン車とハイブリッド車が用意されている。
ノア・ヴォクシーは2.0L のガソリンエンジンと1.8Lハイブリッドの2本立て。ハイブリッドシステムは最新の第5世代だ。出力が向上し、ユニットそのものがコンパクトになっている。ハイブリッド車には新たに4WD 機構が加わった。リアをモーターで駆動する「E-Four」である。
ステップワゴンのパワーユニットは1.5Lターボエンジンと、2.0L自然吸気エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e:HEV」の2種類。4WDはガソリンエンジン車のみで選択可能である。
ノア・ヴォクシー、ステップワゴンともに、ガソリンエンジン車でも静粛性には不満がなく、加速力をはじめ十分な動力性能を実現している。しかし、電動化への流れが進むなかで、どちらもハイブリッド車の売れ行きが好調だ。
ただ、ハイブリッドシステムという名前は同じでも、両車ではその成り立ちは大きく違う。ノア・ヴォクシーはこれまでのシステムをブラッシュアップして効率を高めた。エンジンとモーターが複雑に協調し、高い燃費性能を実現する。
ステップワゴンのe:HEVは、エンジンが脇役に回ってモーター駆動が前面に出るタイプ。ハイブリッド車では“電動感”が強調されるという最近のトレンドに合っている。低速ではほぼEV走行で、スピードが上がってエンジンがかかっても発電に専念する。依然としてモーター駆動だから、走りの味は変わらない。エンジンが駆動に参加するのは、高速走行時くらいだ。
ドライバーが運転を楽しめる
先進安全装備や運転支援システムは、両車ともに最新のものが搭載されている。アダプティブクルーズコントロール(ACC)も、今では必須の機能になった。
なかでも注目されるのは、ノア・ヴォクシーに搭載された、プロアクティブドライビングアシスト(PDA)だ。
街なかを走っている時に歩行者や先行車を感知し、前方のカーブを把握。危険を先読みして操舵や減速操作をサポートする。PDAが先行車や歩行者を検知すると、メーター内とオーバーヘッドディスプレイにアイコンが示される。コーナーが近づくと、S字カーブの道路標識のような表示が現れた。そのままでは衝突の危険があるとシステムが判断すると、自動で減速が行われる。
ACCと違って完全には停止しないから、最後には自分でブレーキを踏むことになる。おせっかいになりすぎず、安全に寄与する、いい塩梅の設定である。煩わしいと感じる人もいるだろうから、設定でオフにすることもできるようになっている。
ノア・ヴォクシーには停車していても周囲を監視し、リスクを知らせる機能もあり、安全への配慮は徹底している。
走行シーンにおいてステップワゴンが重視したのは、旋回姿勢の最適化だったという。ミニバンでは後席乗員の快適性が優先事項となるが、コーナーでアンダーステア気味になると後ろに乗っている人の体が横に振られてしまう。
「ワインディングロードでドライバーが気持ちよく走れることが、結果として後席の乗り心地にもメリットとなる」という開発ポリシーは、興味深いものがある。実際に2列目と3列目にも試乗して、路面からの突き上げが従来に比べマイルドになっていることを確認したが、単純にバネを柔らかくしたということではないのだ。
あるいは、後席の乗員以上にミニバンの進化のメリットを享受しているのは、ドライバーなのかもしれない。キャブオーバーの商用車ベースだった時代は、意のままにならないクルマの動きに閉口しながら苦難の運転に耐えるというのが通り相場だった。
乗用車的な運転感覚が今は当たり前になり、ノア・ヴォクシーは明らかに先代よりも身のこなしがシャープになった。ステップワゴンはパワーステアリングやアクセルペダルのフィールを改善したということで、運転感覚はとてもナチュラルになった。ノア・ヴォクシーもステップワゴンも、最新モデルの走りはドライバーが運転を楽しめるレベルにまで来ている。
2列目のおもてなしと3列目の収納は見どころ
ノア・ヴォクシーの2列目
ミニバンでは、運転席だけでなく後席の重要度も高い。2列目シートは最上級のおもてなし席となる。8人乗りでは3人乗車のベンチシート、7人乗りでは2人乗車のキャプテンシート、というのはどちらも同じだ。
ノア・ヴォクシーのキャプテンシートは前後に745mmスライド可能。185mmのシート間でウォークスルーができる。グレードにより備わる折りたたみ式大型サイドテーブルにはカップホルダー4個とタイプCのUSBソケットが2つ装備されている。オットマンに加え、シートヒーターの設定もある。
ステップワゴンの2列目
ステップワゴンのキャプテンシートの前後スライド量は、グレードにより780mmまたは865mm。加えて横方向へのスライドもでき、すべてを1本のレバーで操作する。運転席と助手席のシートバックには折りたたみ式のテーブルが装備され、カップホルダーと小物トレイがある。
スパーダにはタイプAのUSBソケットとオットマンが用意されている。シートアレンジはステップワゴンもノア・ヴォクシーも多彩で、背もたれを倒してフラットにつなげるソファモードのほか、左右席を前後にずらし子どものケアを容易にするアレンジも可能だ。
ノア・ヴォクシーとステップワゴンの3列目シート&荷室
3列目シートの格納方式はアプローチの違いが際立つ。
ノア・ヴォクシーは従来どおりサイド上方へと跳ね上げる仕組み。シートバック下部にあるレバーでロックを解除し、軽い力で押すだけで固定する。
ステップワゴンはシートを床下に格納する。こちらも強い力は要らず、簡単な操作で動作する。いずれのモデルも、3列目シートを使わない時は、広大な荷室空間が出現する。
狭い場所で荷物を出し入れする際には、バックドアの開閉に手間取ることがある。ノア・ヴォクシーではフリーストップバックドアを採用し、途中停止できるようにした。これによりクルマの後ろが狭くても荷物をサッと積み込むことが可能。電動開閉式の場合はボディーの左右に設けられたスイッチで操作し、やはり任意の位置で停止できる。
ステップワゴンのパワーテールゲートはスマートキーによる開閉が可能で、メモリー機能も付いている。
進化を続ける日本型ミニバン
それぞれ得意分野は異なるが、日本型ミニバンのとてつもない進化が見て取れる。便利機能が満載で、ドライバーにとってもほかの乗員にとっても快適な移動空間なのだ。
これは、ライバルを少しでも上回ろうとひたむきに開発を進めた結果であり、ミニバンというクルマは日本が誇るべき自動車文化であることも、あらためて確認できるのではないだろうか。
[GAZOO編集部]
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