2016年 クルマは何処へ向かう?…TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム
皆様、遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
色々な事が有った2015年が、アッという間に終わり、2016年が始まりました。今年はクルマ社会のみならず、全世界にとって良い年になるよう、切に願います。そして今年も私の拙文にお付き合い頂ければ、これに勝る幸福は有りません。何卒、宜しくお願い申し上げます。
今回は、今年2016年、また今後、クルマはどのような方向に向かって行くのかを考えたいと思います。
昨今、クルマの電動化、(水素燃料の燃料電池車含む)や自動運転が、特に日本では最大の関心事になっている様に思えます。実は、私個人としては「今は」まだ、そこに「特化」するのは尚早かと思っています。
まず、電動化(EV等)の問題点として、航続距離や価格等が良く話題になりますが、私が個人的に気になるのは、
① この先EVが増えていった場合、モーターやバッテリーを生産する上で必要なレアメタル(レアアース)の需要が、益々増える。(現段階でも世界中でレアアースの争奪戦になっているそうです。また、そういったレアアースの調達も含めた製造時に出るCO2も、問題に含まれます)
② まだ検証されていない人体への影響(携帯電話の電磁波の影響も、後10年位経たないと完全な検証は出来ないとの説も有ります)
③ そもそも充電しないと走らないので、電気需要がクルマによってどの程度増え、その増えた需要に、どう応えて電気をつくるのか。
番外 MTでのシフトチェンジが運転の最大の楽しみだと感じている私にとっては、運転が全く楽しくない(笑)。といった所です。
① に関しては、近い将来、間違いなく切実な問題になってくるとの事です。日本の商社等が、今は相当、頑張っているそうですが、急激にEV等が増えた場合、どの程度その需要に対して供給出来るか、未知数です。
② に関しては、「まだ分からない」としか言いようがないそうです…。
③ に関しては電力供給の問題が解決しない限り、完全な解決にはならないと思います。しかし、個人的には、遠隔地で膨大な発電をして、それを長い送電線を使って各地の変電所に送り、更にそれを家庭や施設に送る…という方法は、もう限界だと思っています。
街単位で、それぞれに適した自然エネルギーを利用した小規模な発電所を設置して、街毎に電気自給出来たら、この問題は解決の可能性が高いと考えますが、如何でしょうか?(勿論、実現させるには住宅や公共、民間施設に太陽光発電や、燃料電池発電装置完備が前提になるが、最初から標準装備にする事によって、初期投資負担感は減る。住宅に発電装置が有れば、それによって充電されるクルマは公共の電力の負担にはならない)
この問題は、もはやクルマだけの問題ではないので、また別の機会で詳しく検証したいと思います。番外は完全に個人的な嗜好の問題ですが、私にとっては、非常に重要な問題です(笑)。
続いて自動運転ですが、これもとても難しい問題だと思います。もし、機械が「絶対に」壊れない上に人間と全く同じか、それ以上の判断力を身に付けられたら、それも可能かもしれませんが、判断力はともかく、「絶対に」壊れないというのは未来永劫、実現は不可能です。
パソコンや洗濯機が壊れても命には関わりませんが、クルマの場合、生死に直結です。また、クルマ同士がコンピューターネットワークで?がる事になりますので、ウィルスに感染する恐れもあります。
仮に、自動運転が主流になったとしても「緊急の場合に備えて」手動運転に切り替えられる様にする必要は有ると思いますので、手動運転にも対応出来る「免許」という制度は残る事になりそうです。唯、免許を取得しても、普段、殆ど自動運転に任せている人が、突然手動になった車をスムーズに運転出来るとは思えません。ですから、あくまでバックアップとしての自動運転が理想と考えます。
実は、この原稿を書いている、少し前に、こんなニュースを耳にしました。路線バスの運転手が、突然、意識を失い、バスは様々な物にぶつかりながら最後はアパートに突っ込んで止まった、という事故でした。奇跡的に人的被害は皆無だったという事ですが、こういう場合は自動運転で安全に「停まる」という機能が有れば、これは有効だと思います。
機械と人間の関係について常々、私が思うのは、あくまで人間が機械を操り、人間の力では、「どうする事も出来ない領域」や「人間が操る力を失った時」に機械に助けてもらう、というスタンスが理想ではないでしょうか?
機械に全てを任せる、というのはリスクも勿論有りますが、人間の「退化」にも繋がります(笑)。ちなみに私、以前は、カーナビを自分のクルマに敢えて付けていなかったのですが、関東地方であれば、近くの幹線道路の名前を聞けば、どこでも迷わず目的地に着けました。しかし、ナビが標準装備のクルマに乗って以来、何処へ行くのにもナビに頼る様になり、気が付けば幹線道路の名前と場所の記憶が半分以上無くなっていました…。
人間の退化能力?恐るべしです…。
さて、“2016年のクルマ”ですが、結論として申し上げたいのは、色々な意味で過渡期にある今、メーカーには、過渡期だからこそ一つの方向だけでなく、色々な選択肢を与えて頂きたいという事です。以前も少し触れましたが、日本のメーカーは車種は多いのに肝心の動力源(パワーユニット)の選択肢が少なすぎます。
ちなみに昨年、輸入車日本国内販売1位になったメルセデスベンツ。
日本導入車に限っても2016年1月現在、「ガソリン」約15種類(微妙に仕様が違うものを加えると数えるのが難しい)、「ディーゼル」3種類、「ガソリンハイブリッド」2種類、「ガソリンプラグインハイブリッド」、「ディーゼルハイブリッド」。本国では、ざっとこの2倍程の種類がラインナップされています。
しかも、それぞれが、毎年の様にアップデートされていくのにも驚かされます。日本メーカーの皆さん、パワーユニットの「電動化」「運転の自動化」もどんどん進めながらも、内燃機関も、まだまだ突き詰めて頂きたいです。
今できる最大限の環境対策は、メーカーは現段階で作り得る様々な選択肢を用意して、我々ユーザーは、自分の使い方に一番合っているクルマを選んでそれを効率的に使う、という事ではないでしょうか?勿論、良きパートナーとしてクルマを楽しみながら、が理想ですが!
パートナーという存在だからこそ、納車の時はワクワクし、愛着を持って大切にし、別れる時は悲しくなるんですよね。クルマが冷蔵庫や洗濯機になってしまうのは残念ですし、常に命を乗せているクルマが、そうなってはいけないと思います。
2016年、様々なメーカーが提案する、色々なワクワクする車に出会える事を願っています。
安東 弘樹
[ガズ―編集部]
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