続、クルマは何処に向かう?(去年の年始に続いて) …TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム
皆様、新しい年、どのように迎えられたでしょうか?
私は本当に久し振りに大晦日と元日が休みでしたので、「ゆく年、くる年」を観て(私にとっては他局の番組ですが)年を越す、いわゆる、お正月らしいお正月でした。
さて、2017年が始まりました。
子供の頃の私にとって、2017年と言えば、完全な“未来”で、クルマはチューブの中を飛んでいるか映画「ブレード・ランナー」の様に空を飛んでいると思っていましたが、残念ながら現実は、ほとんどのクルマが、いまだにアスファルトの上を、タイヤを付けて内燃機関の「エンジン」で走っています。
ちなみに映画「ブレード・ランナー」の舞台は2019年の設定ですので、公開された1982年当時の人々が考える程、人類は進歩していない様です(笑)。
ただ、空を飛ぶ程では有りませんが去年辺りから、クルマも劇的に変わってくる気配はプンプンしています。
それは必ずしも私にとっては歓迎すべきではない方向ではあるのですが、ここ数年で確実に大きな変革を迎えるでしょう。
その証拠に?1月5日から始まったCES2017(簡単に言うと世界家電エレクトロニクスショー)に今年は数々のクルマメーカーやクルマ関連メーカーが出展している、という事実があります。
特に今年は多くのメーカーが本格的なブースを構える等、CESに対する本気度を感じます。
いよいよクルマが“家電化”してくるのか、と私などは恐怖すら感じるのですが、その展示の技術を見てみると、「まだ」一概にそうでもなさそうです。
自動運転の類は私には必要無いと基本的には思っていますが、その前段階、また派生技術として、狭い場所に人間が降りてから自動で駐車してくれる機能や、目の前に大きなクルマが走っている時に、そのクルマの前の映像をバーチャルで投影してくれる技術等は、運転好きにとっても有り難いものです。
完全自動運転には、そう簡単には到達出来るとは思いませんが、IT化も含めて、それが実現した時、クルマは家電になるのでしょうか?
人が運転しなくなると、クルマは、どこでも制限速度キッチリで走行する事になりますし、恐らく全てのクルマが前車追随する為、交差点でもコーナーでも全てのクルマが同じ速度で走行する為、加速やコーナリングの感覚は均一化されるでしょう。
クルマの差が出るのは、乗り心地、位でしょうか?
よりスムーズに運転しよう、とか、速く走ろう、等という思想自体が生まれない為、モータースポーツが存続するのかも疑問です。
それから、クルマの性能差を人間が感じる事も少なくなる事から、クルマの価格は車体の大きさや内装の豪華さ、そして前述した乗り心地のみ?に左右される様になり、ある意味では、そのブランド力がこれまで以上に大切になってくるかもしれません。
人間が、どの位、運転する楽しさを捨てないか、という事にも掛かってくると思いますが、日本に居る限り、8~9割の人は、完全自動運転を待ち望んでいる様に思えます。
少し先の話をしてしまいましたが、昨年が「自動運転元年」と称される事が多いので、今年は、更に、その方向に拍車が掛かるのは間違いない様です。
そうなると良くも悪くも、クルマは憧れや羨望の眼差しの対象ではなくなっていくでしょう。
スーパーカーの様な形をした高価格の電気自動車が道を走っていても、ヒューというモーター音で、前のクルマに大人しく?付いて行く姿を見て、ましてやドライバーが中で読書や映画を観ていたら、そのクルマを見て、心を動かされる人は少ないと思われます。
この流れは当然なのかもしれません。
運転が唯一の趣味と言って良い私には辛い現実ですが、日本メーカーにとってはチャンスかもしれません。
日本メーカーがヨーロッパのメーカーに、どうしても敵わないのが、伝統やブランド力です。
先程、「ブランド力が大切になってくるかもしれません」と述べましたので矛盾している様ですが、こういう考え方です。
伝統で言えば、例えばBMWの「駆け抜ける歓び」とかプジョー等フランスクルマの「猫足」と言われるサスペンションの味付け、メルセデスベンツの「直進性や重厚感」等、ヨーロッパメーカーの伝統に培われた美点は、勿論同乗者にとっても利点ではありますが、基本的に運転して感じる部分が多いので、それを、今後は感じさせる必要が無くなってくるからです。
今の日本車の「壊れない」「静か」「燃費が良い」等のイメージは自動運転になっても、その美点は全く変わりません。
以前、「見捨てないで下さい」というテーマで“速いクルマをMTで操りたい”という私にとって、日本メーカーには選択肢が無いので輸入車を選ぶしかない、という内容のコラムを書きましたが、自動運転になったら、私の志向は全く意味の無いものになりますので、私も日本車を選ぶ事になるでしょう。
自動運転になったら、命を機械に委ねる事になるので「壊れない」というのがクルマ選びの最優先になるからです。
そんな風に感じているからか分かりませんが、日本のクルマメーカーが特に最近、家電やIT関連のショーに積極的に参加、出展しているのは、自然の流れなのかもしれません。
ただ、こんなデータもあります。
これは、成人の日に、ある損害保険会社が発表した、新成人に対するアンケート結果です。
ズバリ、“自分が購入する際に欲しいと思うクルマ”というテーマで、順位は
1位プリウス(TOYOTA)、2位、アクア(TOYOTA)、3位BMW、4位VW、5位AUDI、6位フィット(HONDA)7位LEXUS、8位メルセデスベンツ、9位キューブ(NISSAN)10位86(TOYOTA)※日本車は車種別、輸入車、レクサスはブランド別
となっていて、日本のクルマを選ぶ時は現実的に、輸入車とレクサスは「憧れ」として解答している、との分析が記されていました。
レクサスはTOYOTAですから、メーカーとして憧れるのは、未だに輸入車、という現実は変わっていません。だからこそ、これから、大きな変革が迫っている、今、改めて将来に向けて、憧れられるブランド力を構築する日本メーカーが現れるべきだと強く思います。
ここで書くのは少し気が引けますが、個人的にはMAZDAに、その気配を感じています。
昨年は「ミニバンを廃止してSUVに注力する」と明言して、世界的に高級車メーカーがSUVに力を入れているのと同じ方向性を打ち出し、元々、レザーシートの設定が有る等、少し高級志向のあるラインナップ末弟のデミオに、その時点で、上級車種よりも遥かに性能の良い、アクティブLEDヘッドライトを設定する等、日本だけではなく、ヨーロッパに於ける存在感をも更に高めていこうという意志を感じます。
ただ、私は、MAZDAだけが素晴らしい、と言いたい訳ではありません。
これまでも何度か書いてきましたが、9つもメーカーが有る日本で、同じ様なクルマを造って、パイを競い合うよりも、メーカーによって、もっと造るクルマに特徴や方向性を持たせた方が良い、と言いたいのです。
これは、実は私達、日本のテレビ局に当てはまる事でもあります。
皆さんも、朝、昼、夕方、夜とそれぞれの局が同じ様な時間に同じ様な情報番組やニュース番組を放送していて、伝える内容もほとんど同じ、なんて感じる事は無いでしょうか(私が多くの番組を観ているテレビ東京さんは別です)。
常々、私は、この事に疑問を感じ、事ある毎に社内で声を上げてきたつもりですが、まだ力及ばず、変革をもたらすには至っていません…。
どうも日本の企業は、どの分野でも、この様な傾向が有る様です。
これからはクルマメーカーもテレビ局も、大きな変革を前に、確固たる自分のブランド、という物を構築しなければ、将来は生き残っていけなくなると私は思っています。
少し、話が逸れてしまいましたが、今年も私なりに、自動車業界を注視していきたいと思っています。
皆様、本年も何卒、宜しくお願い申し上げます!
安東 弘樹
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