祝!!佐藤琢磨選手、インディ500優勝!…TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム
やりました!
インディカーシリーズに2010年から参戦している佐藤琢磨選手が8度目の挑戦で、ついにインディ500を制しました!実は、一日遅れで録画していたインディ500を観終わった直後、興奮さめやらぬ中、原稿を書いています。
まず、インディ500というレースが、どれだけ凄いのか、少しご紹介します。
現在は、インディカーシリーズの中の1戦になっていますが、初開催は何と1911年(明治44年!)。106年の歴史が有り、世界大戦等で開催されなかった年もありますが、今年は101回目と、世界で最も伝統のあるレースと言って良いでしょう。
舞台はアメリカ、インディアナ州にあるインディアナポリスモータースピードウェイ。 1周4キロ程の楕円形のシンプルなコースを“平均で”350Km/h以上!380Km/h近くの最高速度で走る、間違いなく世界最速のレースです。
ル・マン24時間レース(現在は、WEC世界耐久選手権の1戦)、F1モナコGPと並んで世界三大モータースポーツの一つになっていますが、毎年40万人の観客を集める事や、賞金額を含む経済規模等で、その中でも“最大”と評価される事が多いイベントです。
“イベント”と表現したのは、練習走行や複雑な方法で行われる予選、直接レースに関係のないセレモニーも催され、決勝レースまでの開催期間は3週間程となり、一つのレースというよりアメリカ国民の殆どが誇りに思う、国家的行事だと言えるからです。
エンジンはシボレー製とHONDA製の2種類のみ。基本的に、マシンはイコールコンディションと言われ、且つてインディカーシリーズに参戦していて今回、インディ500を生放送していたCSチャンネルでも解説を務めていた松田秀士さんは、以前、「F1はメーカー(マシン)の競い合い、インディカーシリーズはドライバーの“運動会”」と仰っていました。
つまりドライバー自体のスキルや“根性”で勝敗が決まるのだそうです。確かにF1は、予選も決勝も綺麗にメーカー毎に順位が決まる事が多いですが、インディカーシリーズは、一つのチームや決まったドライバーばかりが勝つ、という状況にはなりません。そして今年も様々なジャンルの“セレブ”が集まり、ペンス副大統領の姿も見られました。
前回のコラムにも書きましたが、やはりモータースポーツを国自体が大切にしている事が良く分かります。羨ましい限りです。そんな伝統と格式と人気が有るレースで、今年2017年は佐藤琢磨選手が優勝したのです!
他のスポーツで例えるのは難しいのですが、個人競技で言えば、例えばテニスで錦織圭選手がグランドスラムの一つで優勝する、とか、世界陸上の100メートル走で桐生祥秀選手が9秒台で優勝する。それ位の偉業と言って良いのではないでしょうか。
実際にレースを実況していたアナウンサーの方は「信じられない!なんというものを目撃してしまったのでしょうか!」と、叫び、とにかく嬉しいを超えて驚愕している、といった様子でした。観ていた私も同じ感想で、もし、このレースを私が実況していたら、同じ様な表現になっていたでしょう。
それ位の快挙なのです。
このコラムを読んで下さっている方が、どれ位、モータースポーツに興味が有るか、個人差はあると思いますが、あまり興味の無い方も解って頂けたでしょうか?
かねて私は、日本ではナショナリズムだけでスポーツを観戦する方が多いのが少し残念で、もっと純粋に色々なスポーツを楽しんで頂きたいと何度か書いてきましたが、佐藤琢磨選手の優勝を目の当たりにした時の自分の興奮を考えると、私も今回ばかりは、思いっきりナショナリズム観戦をしていた様です(笑)。
勿論、私は日本人が参戦していないレースも片っ端から録画して充分楽しんでいますが、やはり日本人ドライバーが日本メーカーHONDAのエンジンのマシンで優勝すると、こんなにも嬉しいものかと改めて驚きました。やはり、モータースポーツの日本での普及には日本人ドライバーの活躍が不可欠な様です。
今回の琢磨選手の優勝はYAHOOニュースの見出しに、すぐなりましたし、各局のニュースでも報道されました。
私からすると小さい扱いで残念でしたが、それでも普段は殆どモータースポーツが話題になる事が無い事を考えると影響は大きいと思います。
WRC第二戦、TOYOTAの優勝、そして今回の佐藤琢磨選手の優勝。日本で大きく取り上げられるには、とにかく勝つしかない様です。「世界で勝つ」、日本で最も称賛される称号を何度、手に入れるか、これで日本全体の、そのスポーツに対する注目が決まるという現実を、また実感しました。
考えてみると、フィギュアスケートもテニスも卓球も日本人選手が大きな大会で勝てる、もしくは勝てる可能性が高い、という状況になるまでは、今ほど、国民の興味は高くなかったと言えるかもしれません。
浅田真央さん、羽生結弦選手、錦織圭選手、石川佳純選手他、世界でもトップと言える皆さんが活躍して初めて、その競技が日本国内でメジャーになっていく事を考えると、今後益々、TOYOTA(WRC、WECでの活動や中嶋一貴選手や小林可夢偉選手)、佐藤琢磨選手には頑張って頂かなければならない様です。その為にも、もっと日本のモータースポーツの間口を広げていく必要を感じます。
今回のインディ500の勝者は日本人の佐藤琢磨選手。ここ10年でアメリカ人の優勝は2回、2人だけで、残りはアメリカ人から見て外国人が優勝してきました。前述した通り、アメリカ人にとって誇りある国家的イベントであるにもかかわらず、優勝者が何人であれ観客は勝者に対しての称賛を惜しまず、自国のドライバーが優勝出来ないという事に不満は感じていない様です。
今回もレースの最後まで琢磨選手とデッドヒートを繰り広げ、レース終了後、先にピットに帰っていた2位の“ブラジル人”カストロネベス選手が、後からピットレーンに帰って来た“日本人”佐藤琢磨選手をサムアッップで祝福した時、地鳴りの様な拍手と声援が贈られたそうです。
ちなみに、インディカーシリーズは三大モータースポーツの中で唯一“世界選手権”ではありません。基本的にアメリカ国内レースなのです。
しかし、参加しているのは正に世界中から集まったドライバーで、ここ10年の優勝者の国籍は、先程も申し上げましたがアメリカ人が2人、あとは、イギリス、ブラジル、コロンビア、ニュージーランド、そして日本と多岐に渡っています。そして、それをアメリカの人達は、何とも思っていない、というより、どの国の出身か、ではなく、その個人のドライビングや人柄で、それぞれのドライバーを応援しているという事です
ところが、日本の国内レース「スーパーフォーミュラ」の前身である「フォーミュラニッポン」時代、96年からシリーズがスタートすると2012年まで、17年間で9回外国人がチャンピオンになった事で、心無い人からは「フォーミュラ外人選手権」等と揶揄されていたそうで、日本人が勝てないから人気が無いという分析をする人もいました。
しかし、モータースポーツというのは速いドライバーが勝つのが当たり前で、どの国の出身かは関係無いはずです。スーパーフォーミュラの最終的な目標はF1やインディカーシリーズに並ぶ世界的なフォーミュラカテゴリーに育てる、というもので、格式は「国際」になっています。であれば、もっと外国人のドライバーも招聘して、より激しい競争の中で日本人ドライバーが世界へと羽ばたいていける選手権になっていくのが、結果、日本のモータースポーツ界の為になるのではないでしょうか?
ちなみに現在活躍している日本人ドライバーが世界へ出て行こうとする時に、最も高い壁になるのが「英語」だそうです。実は他のスポーツより、モータースポーツは色々な人とのコミュニケーションが大切で、例えばマシンのセッティング等、詳しい話をエンジニアと自分で直接出来なければ、文字通り「話になりません」。
実際、今、世界選手権や海外で活躍しているドライバーは、もれなく英語が堪能です。琢磨選手は勿論、中嶋一貴選手、小林可夢偉選手もそうです。唯、名前を挙げた皆さんは若い頃からヨーロッパのレースに参戦していたり、中嶋兄弟の様に、お父様の悟さんがF1にフル参戦していた事でイギリスに住んでいた事があったり、特別な環境にいたのが理由で英語を身に付けているので、出来れば国内のレースで成長していくドライバーに対しても、しっかりした英語教育をするべきだと私は考えます。
極論を言えば、日本国内のレースに、もっと沢山の外国人ドライバーが入って来れば、日本のレースに於いても使う言語は全て英語にならざるを得なくなる可能性が有り、それは、日本人ドライバーにとっても将来、世界で戦うには良い環境になるかもしれません。
これまで、世界三大レースの一つ“ル・マン24時間”で、日本人ドライバーは“チーム”で勝った事は有ります。しかし“個人”で勝ったドライバーは佐藤琢磨選手が初めてです。
佐藤琢磨さん!これからも勝ち続けて、出来ればシリーズチャンピオンになって下さい!暫くは琢磨さんに日本のモータースポーツ人気を引っ張って頂かなければならない様です。宜しくお願いします!でも、何はともあれ、インディ500の優勝、おめでとうございます!
正直言います、佐藤琢磨さんが、チェッカーフラッグを受けた瞬間、泣いてしまいました…。
改めて…、感動を有難うございました!
安東 弘樹
[ガズ―編集部]
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