10ベストカー発表 …安東弘樹連載コラム

私が日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTY)の選考委員になってから2回目のCOTY選考、発表時期が近付いてきました。前回は全ての事が初めてで緊張の連続でしたが今年は、何とか平常心で臨めそうです。

今年のノミネート数は全部で27車種、その内、日本車は10車種で、輸入車が17車種。ノミネート車数は、年々、右肩下がりだそうで、クルマにとって、やはり少し寂しい世相になっているのだな、と感じます。特に日本車の数が少ないのが気になりました。年間を通して、新しいクルマやモデルチェンジする日本のクルマが減っているのは何を物語っているのでしょうか。

TOYOTAが、奇しくも、クルマの定額方式(一定料金を払えば様々な車を自由に乗り換えられるクルマの利用形態)を発表しましたが、これはクルマの「所有」の時代を終わらせるかもしれません。そうなると、もはやCOTYを発表する意義も無くなるか少なくとも大きく変わってくるでしょう。何しろ、クルマを所有する事なく、自由に乗り換えられるので、クルマを選ぶ指針は限りなく必要無くなってきます。一度乗ってみたクルマが良く無かったら二度と、そのクルマに乗らなければ良い訳で、自分で品定めをいくらでも出来る訳ですから。

なったばかりですが、私が選考委員でいられるのも、そう長くはないかもしれませんね(笑)。将来を案じていても仕方がないので、まずは今回の10ベストカーについて、お話をさせて頂きます。

今回、27車種の中から選考委員の投票で選ばれたのは次の10車種です。ちなみに諸般の事情から、当初10ベストカーに選出されたSUBARUのフォレスターが賞典を辞退した事から、9車種の「10ベストカー」になってしまいました。この事については、また、折を見て、お話させて頂きたいと思います。

実は同様の事情で、SUZUKIのジムニーがノミネート自体を辞退していましたので、今回は2台も日本車がCOTYの権利を失った事になりました。残念です…。

さて、9車種の中身は

TOYOTA カローラスポーツ
TOYOTA クラウン
HONDA クラリティPHEV
MAZDA CX-8
MITSUBISHI エクリプスクロス
Alfa-Romeo ステルヴィオ
BMW X2
VOLVO XC40
VOLKSWAGEN ポロ

です。

日本車が、一車種の辞退で5、輸入車が4、というラインナップになりました。私も勿論、投票しましたが、改めてクルマに対しての評価は人、それぞれなのだな、と感じました。選考委員同士でも「自分の選んだ10台と、いくつが合致していましたか?」という会話が、そこかしこでされていたのが印象的です。

ちなみに私の選考基準は単純。「どれだけ自分の運転操作に対してクルマがダイレクトに応えてくれるか」、これに尽きます。

ですので、一般の多くのドライバーの皆さんとは、もしかしたら「良いクルマ」の概念が違うかもしれませんが、そちらは本職のジャーナリストの皆様にお任せして、私は自動車ジャーナリストではありませんので、少し偏った「3ペダルMTの運転が何より楽しい」、というコアな運転マニアの方を代表、代弁するつもりで少数意見を少しでも反映させるべく、選考をさせて頂いています。絶滅危惧種で有ることは百も承知ですが、本当に絶滅するまで足掻くつもりですので宜しくお願いします(笑)。

どの車を10ベストカーに選んだのか、具体的に言及するのは避けますが、このご時世に、そんな私を喜ばせてくれた車が有ったのは嬉しい限りです。実はSUZUKIジムニーが、その中の代表でしたので、かえすがえすも残念です…。

さて、このラインナップをご覧になって分かるように、今回も完全自動運転になっているクルマはありませんし、PHEVは有るものの、完全EVも有りません。過去には(2011~2012年)先代の日産リーフが受賞した事も有りますが、その後、EVが受賞する事もなく(前回は新しいリーフがCOTY辞退)現在に至っている事を考えると、クルマの自動化、EV化が現実には進んでいない事に驚かされます。

ここ数年、「数年後にはEV化は加速する」、との見方も有りましたが、やはりインフラ整備が中々進まない事や実質的な航続距離が伸び悩んでいる事等が、原因かもしれません。

充電設備も、増えているとは言っても現実的には少なくともガソリンスタンドの半分位の数にならなければ、利便性に問題があるでしょうし、充電時間も現実的には5分で完全充電が可能にならなければ内燃機関の感覚では乗れないでしょう。航続距離も、各メーカーは400キロ、500キロ等とアピールしていますが、現実的には200キロから300キロが限界です。

この表示に関しては、国交省もメーカーも、充電施設が少ない現在、現実的な数字を発表しないとユーザーを危険に晒すとさえ私は考えます。特に電費に関しては内燃機関よりシビアな数字を出すべきです。ユーザーが、実際に出先で電欠によってクルマが止まり「400キロ走るはずなのに、こんなはずではなかった」、と感じた場合、また内燃機関に戻ってしまう可能性すら考えられます。本当に厳密にお願いします。そもそも内燃機関に関しても最初から「カタログの7割として」と計算されてしまう数字等、全く意味が無いので、最低でもアメリカ並みに厳しく検査、表示して頂く様に強く希望します。

ちなみに私はEVに悲観的な訳ではなく、もう少しメーカーさんに頑張って頂きたいと思っているだけです。何しろ休憩無しで500キロは走りたい、という私ですので。

あ、話が逸れましたが、今回の10ベストカー(9車種)の中で私が考える良いクルマ、楽しいクルマは、もしかしたら、このコラムを読んで頂いている方には、もう見透かされている気もしますが、根本は譲らず、でも様々な見地から考えて今回のイヤーカーや各部門のクルマを選考したいと思います。

100年に一度のクルマの転換期、その途上期と言える今回の、2018~2019日本カー・オブ・ザ・イヤー、どのクルマが受賞するのか。実は私の中では9割程、イヤーカーをこれにしようと決めているのですが、今月下旬に10ベストカー全てを再度試乗する機会が有りますので最終的には、そこで確認して決めようと思います。

最後に。選考に関して、私は、あらゆる外的な影響を受けず、忖度もなく、自分の意志のみで投票する事を皆さんに、お誓いして今回の結びとさせて頂きます。

安東 弘樹

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