輸入車試乗会 …安東弘樹連載コラム

つい先日、私はJAIA(日本自動車輸入組合)主催の合同試乗会というものに参加してきました。

これは組合加入の主要インポーター(輸入会社)が自分たちのブランドのクルマを可能な限り用意して、神奈川県大磯町に有る大磯プリンスホテルを拠点に近くの公道を使って媒体や、ジャーナリストを招待して試乗させる、という毎年、行われているイベントです。

2月5日、6日の二日間に渡って行われ、初日は媒体対象日で2日目はジャーナリスト個人が対象の日と決められていました。

私は日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員ではありますが、媒体の記者でもジャーナリストでもないので、基本的には招待される立場ではないのですが、今回は、あるWEBマガジンと雑誌の取材という事で媒体対象日に参加させて頂きました。

ちなみにジャーナリストとして認められるのはAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)の会員である事が目安の様です。協会の、ある理事の方が仰るには、私は、最低限の必要条件や基準を満たしているそうですが、自分では、ジャーナリストと名乗れる程の経験や知識が有るとは思えず、おこがましくて会員にはなっていません。

さて試乗会です。用意されたクルマの数々は正に“百花繚乱”! ランボルギーニやアストン・マーティン等のスーパースポーツカーからFIAT ABARTH等のコンパクトスポーツ、ラングラー・ジープの様な本格的オフロードカーを含めたSUVも数多く我々を迎えてくれました。

ちなみに100%電気自動車のテスラもセダンのモデルSとSUVのモデルXを用意して参加されていました。その中でも念願のモデルXに乗る事が出来たのですが、他の車種も含めて具体的な話は、取材を受けた、WEBマガジンと雑誌に記事を書かせて頂きますので、ここでは記述を控えさせて頂きます。

試乗は一枠80分を朝から5枠、一枠最大2台を借りて乗る事になります。私は二つの媒体を掛け持って試乗したので、一枠、最大3台に乗る事になり、正直慌ただしい試乗にはなってしまいました。最小試乗時間は15分程になってしまい、乗ったクルマの美点や問題点を感じるのに必死でした(笑)。

しかも基本的に公道を使った試乗ですので、スーパーカーと言えるクルマでも、撮影も含めて80分で帰って来られる範囲の道の制限速度は70キロでしたから、ある意味、フラストレーションが溜まる場面も有りました。

私が試乗できたクルマを列記してみると…

ジャガー・XFスポーツブレイク(ステーションワゴン)
ポルシェ・カイエンS
ポルシェ・718ケイマンGTS
ポルシェ・パナメーラ 4 Eハイブリッド
BMW・X3 M40d
フィアット・アバルト695C
ジープ・ラングラー アンリミテッドSAHARA
アストン・マーティン DB11
アストン・マーティン ヴァンテージ
テスラ・モデルX
ルノー・メガーヌ RS

以上の11台です。

朝から夕方まで、途中、昼食休憩は挟みましたが、上記のクルマを、とっかえひっかえ、休む間もなく乗りまくったという印象です。運転するだけでしたら、私にとっては快楽のみなのですが、途中で私自身の写真撮影や、公道でカメラカーと並走しての運転シーンの撮影(勿論、安全には十分留意しての撮影です)等も、こなさなければなりませんので、目まぐるしい試乗会になりました。

実は、当日の夜にはレギュラー番組の生放送が控えており、正直、試乗会が終わった時には体力的にも精神的にも不安な位、疲れていたのですが、そこは私、自分の慣れたクルマを大磯から東京のテレビ局まで運転したら、着く頃には、すっかり疲労感が無くなっていました。やはりクルマで疲れた身体は運転で癒すのが一番だと痛感しました。

テレビ局で合流したマネージャーさんに、そう言ったら、「世界中で、そんな人は安東さんだけですよ(笑)」と言われてしまいましたが(苦笑)。

それにしても、輸入車の試乗会に参加して思ったのは、ある意味残念な事なのですが、やはり日本のクルマより、華が有って、個性が際立っているという事です。上記の車種を見て、皆さんも思うかもしれませんが、殆どが、街で見かけても埋没しない様なクルマばかりです。

勿論、高価なクルマも多いので“当たり前”と、仰る方もいるとは思いますが、どれに乗っても、気分が高揚するか、しっとりと落ち着けるか、どちらかで、運転して失望するものは一台も有りませんでした。

私は、自分の操作に対してリニアに反応してくれないクルマが本当に嫌いです。残念ながら日本のクルマの半分は、その様なクルマと言って間違い有りません。また殆どのクルマが実用重視で、「へー!」とか「わー!」等と言わせるような仕掛けや、作り手が「ニヤッと」してしまう様な遊びも、あまり有りません。

とにかくワクワクする様なクルマが少ないのです。(勿論、私の中でも現在、新車で販売されている日本のクルマの中で5車種位は、その様なクルマは有りますが、全メーカーで、その位です)

恐らく、今回の試乗会にクルマに興味が無い方が来ても、様々なクルマのデザインや遊び心、はたまた内装の雰囲気を見て触れて、何かしらの興味や興奮を覚えるのではないでしょうか。

例えば電気自動車モデルXには驚く仕掛けが満載です。キーを持っている人が近付けば自動で運転席のドアが開き、ブレーキを踏めば自動でドアが閉まる。御存知の方も多いと思いますが、鳥の羽の様に開くファルコンドアは珍しいだけではなく、狭い所でもドアが開きやすいし雨にも濡れにくく実際に乗り降り自体が非常に楽でした。

単に、航続距離が長い、とか、加速が凄まじいという性能だけではなく所有者を驚かせたり感動させたりしたい、という作り手のメッセージに満ちているのです。その代わり、このクルマは1,200万円~2,000万円ではありますが…。

そこまでの高価格車ではなくても、例えば、アバルト695Cは、日本の道では十分速い動力性能を持ち、しかも運転がとにかく楽しいのです。そして何より、そのデザインは多くの人を魅了するでしょう。

日本メーカーの場合、例えば電気自動車を作るとすると先進性や利便性を追及して、またCM等でも、そこを訴求します。でも大前提として、現在、また特に今後、多くの人は楽しくて感動を与えてくれる物にしか、高額のお金は払いません。

クルマ離れと言われる昨今だからこそ、その様なアプローチを日本メーカーはもっと進めていくべきなのではないでしょうか?

実際、日本メーカーのラインナップの中でも、例えばSUZUKIジムニーの様に動画投稿サイトで無数の関連動画が上がっている様なワクワクするクルマが存在する訳ですから、他のメーカーでも作れるはずです。実用車も当然、必要ですが、私には無駄に思える程の日本メーカーの多車種の中で、半分はアバルトや、ジムニーの様に遊び心が溢れるクルマで占められても良いと思います。

そうでなければ、クルマがコモディティー化していく中で、自動車メーカーは生き残れなくなってくると私は思っています。今回、私を楽しませてくれた輸入車の数々を試乗して、そう実感しました。

最も、最近、お会いした各日本メーカーの開発関係者の皆さんも、それに気付いている方は多いので、期待はしているのですが、日本の会社は組織として大きく舵を切るのが苦手ですので、どうか、早急にお願いします!

安東 弘樹

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