ヒストリックカーに魅せられた2日間 …安東弘樹連載コラム

去る2月23日、24日、パシフィコ横浜にて行われた、ある出版社が主催するヒストリックカーの祭典、ノスタルジック2デイズというイベントの仕事をさせて頂きました。

私が参加するのは、実は去年に引き続き2回目で、前回はTBSアナウンサーとして、今回はフリーランスのアナウンサーとして様々なコンテンツの司会をさせて頂きました。

確認してみた所、今年はトークショー等、2日間で7つのステージを進行させて頂いた事になります。正直、殆ど休憩が無い状況で、次から次へとステージを、こなしていくという状況でした。

主催出版社が基本的に自分達だけで運営しているので、色々な意味で手作り感に溢れていますが、心地よい緩さもあり、癖になるイベントです。

ちなみに、このイベントは1960年代~90年位までのクルマが主役で、当時のクルマをレストアしたり、カスタマイズするメーカーやショップがブースを並べ、中にはコンプリートカーを販売しているショップも有りました。

そして、トークショーに出演される皆さんも錚々たる面々で、正に“リビング・レジェンド”と言われるようなレーシングドライバーの皆さん(敬称を略させていただきます:柳田春人、桑島正美、高橋国光、長谷見昌弘等!)から、往年の名車と呼ばれるクルマのデザイナーの方々等、クルママニアが泣いて喜ぶ様な出演者の口から、今だから言える秘話等が次々に暴露?されました。

そして、何より会場を埋め尽くす名車の数々に圧倒されます。

TOYOTA 2000GT、日産(ハコスカ)GT-R、日産フェアレディZ(S30)いすゞベレット1600GT-R、いすゞ117クーペというような当時も憧れの存在であったクルマから、隠れた名車と言われた様なクルマ、そしてスバル360等の大衆車に至るまで、それぞれが存在感を発揮していました。

基本的には日本車が中心のイベントではありますが、ランボルギーニカウンタックLP500 SといったスーパーカーやVWカルマンギア等、好き者の心を掴む、ヨーロッパのクルマも誇らしげに佇んでおりました。

何より来場しているお客さんの表情が本当に素晴らしい!

それぞれのペースで自分の興味の有るクルマのブースの前で目をキラキラさせながら観ているお客さんはまるで子どもの様で、そんな情景を目の当たりにすると、こちらまで幸せになってきます。改めてクルマという物の力を見た気がします

同時に疑問も湧いてきました。最近、こんな風に人をワクワクさせる様なクルマは、どの位あるのだろうかと。当然、高額なスーパーカーや超高級車と言われる様なクルマは人の興味は引くかもしれませんが、ワクワクとは違う様な気がします。

特に日本メーカーからは、そこに存在するだけで人を笑顔にしてしまう様なクルマが最近は生み出されていない様な気がします。

60年代から70年代、クルマというものは、多くの日本人にとって初めて自分で所有する長距離移動手段であり、正に夢の乗り物でした。

作り手も苦労は並大抵ではなかったと思いますが、それでもワクワクしながら数々のクルマを世に出したのではないでしょうか。特にエクステリアデザインに、その歓びを見出せます。

最近、日本で生み出される軽自動車を含むクルマの半数以上は基本的に“箱”と同じ形をしています。フォルムは直線のみに囲まれているのです。でも、このイベントで見られる多くの日本車のフォルムは、見ているとウットリしてしまう様な美しい曲線が絡み合っている物も多く、見ていて飽きません。

シンプルなラインのクルマも有りますが、やはり直線より曲線が目立ちます。全体的に暖かいフォルムで、フロントフェイスも最近、流行りの、人を威圧するような目つきのクルマは皆無と言って良いでしょう。

気付けば、ほぼ全てのクルマに魅了されている自分が、そこにいました。こんなにも、この時代のクルマは美しいのかと実感させられたと言って良いでしょう。唯、そこには郷愁というものがフィルターの役目をしてしまい、必要以上に、美化してしまっている可能性も有る。そんな事を思っていたら、これが、そうでもないようです。

フリーランスになって事務所に入った為、私には現場にマネージャーが同行するようになったのですが、今回付いてくれたのは、女性でした。私から見ると“若い人”に分類される年齢の女性マネージャーなのですが、特にクルマに思い入れがある訳でもなく、所謂、今時の女性です。その彼女が会場に入って何台かのクルマを見た瞬間、何と「何ですか!このクルマ!全部可愛いじゃないですか!みんな外車ですか?!」こう興奮して言ったのです。

正直、ここまで反応が有ると思っていませんでしたので驚きました(笑)。普段は、かなり落ち着いているマネージャーなのですが、思わず小走りになって、クルマの傍に近付いていたのです。彼女が見ていたのは全て日本車で、そう説明すると「えー、こういうのが良い!」と叫びました(笑)。

更に言葉が続きます。「私、クルマがカワイイなんて思った事が無かったですけど、ここに有るのは全部欲しいです」今の日本メーカーの方々に聞かせたい言葉です。

クルマは今後、更にコモディティー化していきます。カーシェアも増えてくるでしょう。所有したい人が減ってくるのも避けられないと思います。でも、どうしても欲しいクルマが有ったら、人は、それにお金を払うでしょう。

一頃、確かに多くの日本のユーザーは便利なクルマ、ミニバンやハイト軽ワゴン等に飛びつきました。でも、それは、そういうクルマが、それまでは、あまり無かったからだと私は思っています。そんなクルマが飽和状態になって、更に生活様式や考え方が多様化してきた今、箱型のクルマが必要な人は減ってきているのは確実です。

これからクルマを買う人は、クルマが必要な人ではなく、“そのクルマ”に価値や感動を見出す人になるのではないでしょうか?道具として必要なだけ、という人はクルマを借りたりシェアすれば事足ります。

そうなると、特に個性も無いシェア用のクルマを供給するメーカーと付加価値の高い利益率も確保出来るクルマを造るメーカーに分かれてしまう様な予感がしています。このままだと多くの日本メーカーは前者になってしまうのではないでしょうか?

でも、本来はそうではないはずです!それぞれのメーカーの草創期、もがきあがいて作ったクルマは、魅力に溢れていました。それをマネージャーに再確認させてもらったような気がします。更に言えば、かつての日本には「少し無理をすれば買える位の価格でありながら憧れられる様なワクワクするクルマが多く存在していた」という事です。

とてつもない動力性能は無くても良いんです。世界一の燃費性能でなくても良いんです。至れり尽くせりの豪華装備が無くても良いんです。でも、「何も既成概念が無い女性が思わず駆け寄ってしまう様なクルマ」、もう一度作りませんか?!

そんな事を考えさせてもらった2日間でした。イヤー、やっぱりクルマは楽しいです!

安東 弘樹

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