街の自動車工場 …安東弘樹連載コラム
皆さんは御自分のクルマに傷が付いてしまったり、何か不具合が生じた時、どうなさいますか?多くの方、特に新車で購入した方でしたら、自分がクルマを買ったディーラーに持っていく、と答えるでしょう。
私も、自分のクルマに調子が悪い所があった場合、購入先の販売店に、まずは連絡をします。最近のクルマはコンピューターで制御されている部分が多く、実際に専用の機器が無いと不具合の原因を見つけにくいのも事実です。
唯、私の場合、外装に傷が付いたり、凹んだりした時は、ディーラーではなく「掛かりつけ」の近所の自動車工場に持っていく事があります。
きっかけは、とある工場との出会いでした。
自分のクルマをコインパークに停めて帰って来たら、見事にサイドミラーに傷が付けられていました。近くで見たら、はっきりと認識出来る程の傷です。
傷心の私は藁をも掴む気持ちで、すぐに修理してくれそうな所を探しました。
そうしてヒットしたのが自宅の割と近くにある自動車修理工場でした。
工場に行くと、大手ブランドのフランチャイズ店の様ですが、明らかに、かなり以前からある大きな工場を構えていて、何台かのクルマが修理を受けている様子でした。そして、そこで働いていらっしゃるエンジニアの皆さんの様子が、見るからに職人然としていて頼もしい雰囲気に満ちています。
直観的に、ここなら大丈夫、と感じ、実際に見積もりを取ってもらいました。そして金額を見て驚いたのです。予想をはるかに下回る金額でした。しかも、「スミマセン…、これだけ掛かっちゃいます」と申し訳なさそうに、仰っています。勿論、即答で、お願いしたのは言うまでもありません。
しかもクルマを預けてしまったので自宅にバスで帰ろうとした所、何と工場の社長の娘さんが御自分のクルマで私を自宅まで送ってくださいました。
但し、安くてサービスが行き届いていても仕事が悪かったら、お話になりません。少し緊張して完成を待ちました。
完成の日、「工場の者がクルマを自宅まで届けるのと、私を自宅まで迎えに行き、工場まで連れて行って、完成したクルマを私が運転して自宅まで帰るのと、どちらが良いか」訊かれ、私は保険も本人か家族運転者限定保障にしているので、自分が工場に行ってクルマを運転して帰る方を選びました。するとすぐに迎えに来てくださり、いよいよ工場で修理が終わったクルマと御対面です。
すると、二回目の驚きを禁じ得ませんでした。何処を直したのか全く分かりません。板金、塗装、何十年という職人さんの修理は流石だと唸らざるを得ませんでした。
勿論、メーカーやインポーター直轄の工場で素晴らしい所もあると思います。今回、私が皆さんに提案したいのは、得意分野がしっかりしている“街の工場”を、修理を頼む時の選択肢の一つとして探してみるのも良いのではないかという事です。
私が時々お世話になっている工場は、とにかく板金、塗装の技術が素晴らしいのです。それまで知らなかった事が残念でなりません。
しかも、実際に工場で働いている職人さんと話をさせて頂いた所、最近は修理の依頼の数が激減しているそうです。私は当然、近所の様々なメーカー直轄ディーラーからの依頼による修理も請け負っているのだと思っていたら、最近は正規ディーラーからの仕事は殆ど無いそうです。理由はやはりコンピューターが制御している範囲が拡大している事で、専用機器があるディーラー併設の工場か限られた指定工場しか、特に制御系は触れなくなっている事と、クルマ自体に対する知識を持っているドライバーが減り、何も分からない人がディーラーに何もかも丸投げにしてしまう事が多く、所謂“街の工場”には仕事が入って来ないそうです。
折角、優れた技術を持った職人がいても、その技術を発揮出来ないというのは勿体ないというものです。私も、自分で工場を調べて修理をお願いしなければ、その存在に気付かずに目の前を通過して人生を終えていたかもしれません。
実は、ここだけの話?つい先日、こんな事がありました。次男の友達が数人、自宅に遊びに来てくれたのですが、ある友達が遅れて来ました。早く皆と合流したかった様で、飛び込むように玄関から入って来たのですが、それ自体は微笑ましい光景でした(笑)。
しかし、数分後、私が仕事に出ようと車庫に行ってみると、見事にその友達の自転車が私のクルマの右前のドアに倒れこんでおり、恐る恐る見てみると、ドアは、かなり深い傷を負い、驚く程凹んでいました…。
思わず座り込みそうになりましたが、彼は故意にやった訳でも無く、まだ小学3年生の子どもです。彼を責める気持ちにはなれません。仕方がなく、「自転車が、ちょっとクルマに当たっちゃったみたいだから次から気を付けてね」と笑顔で言うのが精いっぱい。他の友達が「優しい!神じゃん!」と言ってくれたのが救いになりました(笑)。
そこで、いつものクルマの主治医に、依頼です!当初「1週間下さい」と言われたのですが、実際は3日後に完成の連絡が来ました。修理した右前のドアを見たら相変わらず完璧に直っています。修理費もこれまた相変わらず納得の金額でした。本当に近くに、この工場を見つけて幸運だったと思っています。
皆さんも、もう一度、街の自動車工場を見直してみては如何でしょうか?勿論、クルマの種類や、もしかしたら人間同士も相性の合う合わないがあるかもしれません。それは病院等も同じだと思いますので、まずは訪れてみて様々なクルマに関する相談をしてみては如何でしょうか?皆さんも想像以上のクルマの名医に遭えるかもしれませんよ!
是非、お試しください。
安東 弘樹
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