2019年、対照的な初体験…安東弘樹連載コラム

今年、2019年も間もなく終わります。今年は私にとって、忘れられない年になりました。

クルマと関係のないことでは、個人的に大好きな、マニアと言っても過言ではない「孤独のグルメ」という番組に出演させていただいたり、初めて自分がメインで担当する生放送、且つ、長時間のラジオワイド番組を二つも担当することになるなど、ありがたい1年間だったと言えるでしょう。本当にこの1年間は、様々な方に感謝、感謝の日々でした。

そしてクルマに関することで言えば、ある意味対照的な、しかも、とても貴重な経験をすることができました。

一つめの初体験

まず一つめは、“初めてのレース”です。コラムでも、書かせていただきましたが、ある雑誌のご厚意により、『メディア対抗4時間耐久レース』に出場させていただきました。

A級ライセンスを取得する所からレースに出場するまで、その雑誌に取材をしていただき、兼ねての私の夢を実現することができました。完全に初心者の私を、チームに迎え入れて下さったことで、結果、ほとんど私のせいで、不本意な結果になってしまったことを、この場を借りてお詫びするとともに、感謝を申し上げたいと思います。

しかし、そのお陰でモータースポーツの楽しさや難しさ、また意義などを、これまでより、ほんの少しだけかもしれませんが身近に感じることができました。

クルマに興味の無い方には、「この時代に燃料をたくさん使って、道楽でCO2を大量に排出するモータースポーツは止めるべきだ。」と言われることも多いのですが、楽しい、という以外に、この競技がクルマの性能、例えば、安全関連装備の進歩や燃費の向上、はては、安全に運転する技術の向上などに寄与していることも、これから、もっとアピールしていきたいと思っています。

将来の夢は、サラリーマンが、「週末はゴルフですか?レースですか?」といった会話を普通にするようになることです(笑)。少し時間はかかりそうですが、電気自動車が多数を占める時代になっても、レースは続くと思うので、自分がこの世からいなくなる前に、実現できれば嬉しいですね!

二つめの初体験

さあ、そして二つめが、今も話に出てきた“電気自動車”についてです。これまでも試乗などで、電気自動車を運転することはあったのですが、今年、あるメーカーの取材で、初めて長期間、自分が所有する感覚で、日常で使ってみる機会をいただきました。

皆さんご存知の通り、私はエンジン車のMTを運転するのが大好きで、渋滞ですら、2ペダルのクルマより、MTの方が疲れないのは今でも変わりません。そんな私が、電気自動車を1週間運転してみて、「楽しい!」と思ったのです。楽しかった一番の理由は、加減速を自分のアクセル操作で、自在にコントロールできることでした。

これは、もちろん、試乗でも感じることはできていたのですが、試乗の際には、「お!結構楽しいかも…」という感想で終わっていた感覚が、長期間運転してみると、運転のストレスの軽減につながっていることや、減速時も、アクセル操作にビビットに反応してくれることの快感を、よりリアルに感じられたのです。

そもそも私が、MTや高トルクのディーゼルエンジンのことが好きなのは、自分の運転操作に対して即時に反応してくれるからで、電気自動車は、その願望により忠実に応えてくれますので、私が好感をもつのは自然なことなのかもしれません。

しかも、私が借りたドイツの電気自動車は、減速(回生量の調整)をステアリングのパドルで自在に操れたり、様々なパワーモードを自分で変えられたりと、あくまで自分でコントロールして運転できるようになっていたので、より楽しさを享受できたのでしょう。

これから出てくる電気自動車が、同様のものであることを願ってやみません。ただ、これからは、電化だけではなく、自動化の流れも大きくなっていくでしょう。

そうなった時に、私のような運転マニアにとって、どのような世界になっていくのか?同じく今年、初体験をさせていただいた、モータースポーツはどうなっていくのか?など、将来に対しては、様々な専門家も、なかなか答えが出せずにいるようです。私自身も願望も含めて、どうなっていくのか想像できません。

特に日本では、ヨーロッパなどの自動車先進国と比べても、充電スタンドの拡充はスピーディーとは言えませんし、日本元来の保守的な性格もあってか、ユーザーも、まだ電気自動車に変えるというマインドが、加速しているとは思えません。

私も長距離運転が多いせいか、電気自動車を1週間借りてみて、すぐに、これに替えようとは思えませんでした。それに何と言っても、まだ気楽に買える価格の電気自動車が少ないこともあるのでしょう。意外とクルマの電化が進んでいないとの印象を、この1年を通しても、感じています。

100年に1度の変革期と言われる“自動車”。

TOYOTA自動車の社長である豊田さんがCMでおっしゃっていた、「昔は道を走っていた馬が、一挙に自動車に代わっていったけれど、競走馬は今も残っているから、スポーツカーを造らなければ。」という言葉を、今年は私自身が、身をもって経験したような気がしました。

“競車”とも言えるレースを走り、かつて馬の代わりになった“自動車”の現代版である“電気自動車”を日常で使い、それぞれ100年前の人達の感覚を、現代に味わったのかもしれません。そういう意味でも、とても貴重な2019年でした。

皆さまにとっては、どんな1年であったでしょうか?2020年が皆さまにとって素晴らしい年になるよう、心からお祈りしております。それでは、良いお年を!

安東 弘樹

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