ついに?やっと?開幕したF1!…安東弘樹連載コラム

7月5日(日)、日本では、東京都知事選の投開票日でしたが、遠くオーストリアで、ついに2020年のF1が、開幕しました。

今年は4か月近く遅れて、オーストリアGPの決勝レースが行われた7月5日、ようやく世界最高峰のモータースポーツが始まったのです。

どれほど、この日を待ちわびたか…。日本では6月にプロ野球が、7月にサッカーJリーグJ1が開幕して、それぞれ無観客試合で熱戦を繰り広げており、開幕日には大きくメディアでも伝えられました。

もちろん、それぞれのスポーツの開幕はうれしいのですが、残念ながらF1開幕は日本のテレビではほとんど伝えられませんでした…。

予想していたとは言え、レッドブルホンダの前評判も高かったこともあり、少しは報道されるかと期待していましたが、皆無とは言わないものの、やはり、ほぼ伝えられることはなかったようです。

ちなみに次の日の月曜日、ラジオの生放送レギュラー番組で私がF1開幕について語っていたときの全スタッフ(男性5名、女性3名)のポカンとした表情がおかしく、思わず笑ってしまい、その様子をそのままラジオで実況してしまいました(笑)。

救いは数が少ないとは言え、何人かのリスナーが「F1開幕はもっと日本でも盛り上がって良いと思います」「日本ではなぜ、モータースポーツが文化として根付かないのか」と熱いメッセージをくださったことです。ただ、正直に申し上げると、F1に触れてくださったメールは3通にとどまりました。

自分で言うのもおこがましいですが、ありがたいことに番組に送られてくるメールの総数は、毎週、かなりの数ですので、ここでも日本に於けるモータースポーツファンの少なさを実感させられました。

しかし私にとっては、いや私と長男にとっては、念願の2020年のF1開幕です!

実は私のF1観戦歴は、ここ15年ほどとWRC観戦歴30年と比べると短いのですが、逆にそれ以降は毎年、毎戦、録画し1戦も見逃していない程、集中して観ています。

なぜ、観戦歴が短いのかと申しますと、これは何度か色々なメディアでも伝えてきましたが、F1全盛時代は、ちまたの「ファッション的なF1ブーム」に嫌気が差しており、敢えて目を背けていたからです。

ですから、その時代はマイナーとも言えるWRCばかりをDVD等で観ていました。何しろ今の様にCS放送等、有りませんでしたので(笑)。

しかし、やはりクルマ好き。最高峰のモータースポーツに興味が湧かない訳がありません。ブームが去った2000年代、シューマッハ選手が盤石の強さを見せつけていた時代くらいから本格的に観戦するようになり、アロンソ選手がチャンピオンになった辺りから、毎年、毎戦、録画するほど、集中してチェックするようになってきました。

さらに日曜日の生放送番組「アッコにおまかせ」を2014年に卒業してからは大体2年毎に日本GPを観戦するために鈴鹿におもむき、その頃からは生でもテレビでも長男と共に観戦する様になったのです。

そう、我が家では(といっても私と長男の2人だけですが)3月になると毎年、F1の開幕でソワソワする様になっていました。

そんなソワソワして4か月も待たされたF1ですが、他のスポーツと同様、無観客での開催となり、選手もスタッフもマスク着用でソーシャル・ディスタンスを取り、スタート前のセレモニーも最小限にとどめてのシーズンスタートとなりました。

それでも我々、親子は幸せな気分でテレビの前に正に襟を正して座り、その瞬間を待ったのです。その興奮はフォーメーションラップでも抑えきれないほど、高まり、シグナルのブラックアウト、すなわちスタートの瞬間、最高潮に達しました!
長男は興奮し過ぎて“グー”にしたまま何度も手を叩いて、その瞬間を迎えたのです。

その後のレースの結果は皆さん、ご存知だと思いますが、ポールポジションを獲得したメルセデスのボッタス選手がそのまま先頭でフィニッシュ。さまざまな意味で歴史に残る2020年のF1開幕戦を勝利で飾りました。

しかし、それ以降の順位は正に番狂わせと言って良い結果になり、最終的には完走13台(完走扱い2台)と近年稀にみる荒れたレースになりました。

しかし、歴代3番目の若さで表彰台にのったノリス選手の活躍や、そのノリス選手の乗ったマクラーレンの速さが際立ち、レーシングポイントはマシンの戦闘力の高さを見せつけ、逆にフェラーリの不調が露呈したりと、これまでと違う予測ができないシーズンを予感させる、見応えのあるレースだったと思います。

残念ながら「レッドブルホンダ」はシーズン前に自信をのぞかせていたフェルスタッペン選手がマシントラブルでリタイア。アルボン選手はレース終盤、2位を走っていたメルセデスのハミルトン選手を抜きにかかったところを接触されて、スピンし大きく後退。13位、完走扱いにはなったものの実質、リタイアと燦々たる結果になってしまいました…。

救いはアルボン選手がファンのネット投票による最も印象的だったドライバーに与えられる「ドライバー・オブ・ザ・デイ」を獲得したことでしょうか。

接触の瞬間は長男と二人、思わず「わー!」と叫び、その後、放心状態になってしまいましたが、世界のファンは、しっかりと、そのアグレッシブなドライビングを評価してくれたようです。

普段、特別にナショナリズムでホンダエンジンを積むレッドブルを応援している訳ではないのですが、思わず声が出てしまった、ということは、やはり、どこかで「日本製」エンジンのマシンに勝って欲しい、という気持ちがあるのかもしれません(笑)。

しかし、結果はともあれ、レース観戦後は長男と二人で「F1は、やっぱり良いねー!」とつぶやいてしまいました。

そして今回、面白いことに気付きました。モータースポーツのテレビ観戦に於いて「無観客」を意識することがほとんど無かったということです。

相撲や野球、海外サッカー等、さまざまなスポーツを無観客の状況でテレビ観戦しましたが、明らかに普段と違う、すなわち「寂しい」という感覚を持ちながら観ることが多かったのですが、今回F1を観て無観客を意識したのはレース前のセレモニーと表彰式位でレース中は無観客レースであることを忘れているくらいでした。

マシンの音が大きいため、テレビ観戦では、これまでも歓声が放送で聞こえるのは稀有なことでしたし、レース中はほとんど走っているマシンだけが画面に映っているため、映像の面でも普段と変わらないのが理由だと思われます。

ただ、表彰式は明らかに寂しく、表彰台はコース上に置かれた簡易的なもので、ポディウムインタビューもジェンソンバトン氏が少し離れた所から行ったため、各ドライバーは声が聞き取りにくいのか質問を何度も訊き返していました。

今年はしばらく、この形での表彰式になるでしょう。でも良いんです!何はともあれ、F1は始まりました。

今年のF1スケジュールは9月6日決勝の第8戦までが発表されていますが、その後に関しては、「数週後に」発表されるとのことで、一部報道によると全部で15戦くらいになるのではないかと推測されていますが、まだ結論は出ていないようです。

この原稿を書いている数日後には第二戦の決勝が第一戦と同じくオーストリアのレッドブル・リンクで行われます。そう二週連続でF1が観られるのは我々、ファンにとってはうれしいことではありませんか!

モータースポーツファンの皆さん!遅くなった分、思いっきりF1を、モータースポーツを盛り上げていきましょうよ!

私は手始めに、これまで参加していなかった、レース中のさまざまなネット投票(VOTE)に参加することから始めようと思っています。さあ今週が楽しみだ!

安東 弘樹

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