いよいよ来る?EV時代…安東弘樹連載コラム

私、僭越ながらカー・オブ・ザ・イヤーの選考委員をさせて頂いていることから、各メーカーさんや輸入車のインポーターさんが開催する「試乗会」というものに参加する機会が多々、あります。

これは、各社が、新型車がリリースされた時、フル、マイナー、モデルチェンジが有った時など、該当車を何台か開催会場に用意して、ジャーナリストや様々な媒体関係者が、それに試乗する、というものです。

私も仕事の合間にできるだけ多くの試乗会に参加するようにしています。今年はコロナウィルスの感染拡大防止の観点から7月くらいまでは、開催されなかったのですが、8月を境に感染対策をしながら、正に堰を切ったように始まりました。各社共に人数制限をしながらの開催となり、その分、回数が劇的に増えたのです。

ある週には5、6社の試乗会が重なり、私は、その週、3社の試乗会に参加することができました。

内訳としては、HONDA、メルセデス・ベンツ、アウディの3社です。

スケジュールとして、「いやー、大変だな!」などと言っていたのですが、ふと気づきました。

何と、その内HONDAとアウディはEVだけの新型車試乗会で、メルセデスも多車種の試乗ができる会でしたが、その内の一つは「燃料電池プラグインハイブリッド車」で水素を燃料として発電したエネルギーでモーターを動かし、さらにEVのように直接、充電もできる、という、ある意味、さらに進んだEVと言えるかもしれないクルマでした。

そう、3社ともEVが用意されている試乗会だったのです。

偶然、その週が、そうなったとも言えますが、昨年までとは様相が変わって来たと実感せざるを得ない出来事になりました。

私は内燃機関のしかもMT好きという気持ちは揺るがないのですが、最近EVに乗る機会も徐々に増えてきた中で思うのはEVには全く違う楽しさ、快感がある、という事です。

エンジンMT車は私が生きている限り乗り続けるのは前提で、もし、これからも複数台所有が許される環境でしたら、他の1台はEVになっても良い、いや、そうなる時代が遠くない将来、確実にくるでしょう。

もちろん、電気の供給や、レア、アース等の希少金属の大量使用による弊害、EVが全ての問題を解決してくれるモビリティーになるとは現状、まだ断言できる段階ではないことも確かです。

しかし、走行時に排出するCO2や有害物質が限りなく0に近いのは確かで、電気の供給を自然、再生可能エネルギーに特化する、等、解決策は考えられなくはありません。

実際に今回試乗したメルセデスの燃料電池プラグインハイブリッド車は一つの挑戦の形と言っても良いと思います。

要は、ガソリンとディーゼルエンジンの比較の時にもお話させていただきましたが、大切なのは「バランス」なのではないでしょうか。

以前私は、日本ではガソリン車の比率が極端に多いことで、特徴として精製する時に半分がガソリン、半分が軽油になる原油の性質上、軽油の消費が少ないため、輸入した原油の内、軽油を輸出せざるを得ないという極めて非合理な事象が起こってしまう、という内容のコラムを書きました。

最近は日本でも乗用車のクリーンディーゼル車が増えてきましたが、まだ効率的な「半々」には遠い状態です。

そしていよいよ社会はディーゼル、ガソリンの比較の時代ではなく、内燃機関とEVの比較の時代になってきました。

日本にいるとEVは、まだまだ市場の1%未満(0.8%)と先進国の中でも極めて低い比率のため、ほとんど存在感はありません。

しかし欧州やアメリカのEV比率を調べると、如何に日本が少ないかが分かります。

例えば今年8月の最新データで、純粋なEVだけ(ハイブリッドやプラグインハイブリッドではない)の比率を見てみると

イギリス     6.4%
フランス     5.4%
ドイツ       6.4%
スウェーデン 8.3%
ノルウェー   52.8%
オランダ     16.4%

そして大排気量の大型ピックアップトラックのイメージが色濃いアメリカでさえ去年、2019年のデータで5.6%に上っています。

特にノルウェーでは半分以上が純粋なEVになっているという驚愕のデータですが、読者の方でも、こんなに他の国がEVにあふれているという認識を持っている方は少ないのではないでしょうか。

これは国の政策にも左右されるのですが、やはり変革が進みにくい我が国の特徴がでているかもしれません。

また国民性の他にも国の政策の違いも顕著です。良いか悪いかはまだ結論はでませんが特にヨーロッパや、アメリカの中でもカリフォルニア州等では、強引ともいえる排ガス規制が罰金を伴う形でメーカーに課せられます。

ノルウェーではEVに与えられるインセンティブが大きいため、EVを購入するユーザーが予想外に増え、財源不足におちいり、国の財政を逼迫させているそうです。

都市部の大気汚染は改善しているそうですが、国の経済に影響を与えてしまったら元も子もありません。

ノルウェーとしては、この流れを止めるつもりはないようですが、困っているのは確かな様です。

話は戻りますが、やはりバランスが大切だということでしょう。

日本では、国が未だに迷っているのか、明確なビジョンが見えてきません。

様子を見ている、と言っても良いかもしれません。EVが増えることでの電力供給への影響や生産における環境への負荷など、まだまだ未知数な部分が多いのは確かです。ただ、国の政策や地球環境への負荷は、まだ結論が出ていないとは言え、純粋なクルマ好きとして乗ってもEVは楽しく、新しい快感を与えてくれますので、新たな選択肢として考えてみるのは悪くないと思います。

確かにクルマ単体で見ると価格は高い様に見えますが、減税や補助金(欧米に比べると少ないのは確かですが)、そして燃料代や整備費、オイル交換等の消費材を含めたランニングコストの価格差を考えれば、想像以上に、その差は縮まります。

来年になれば、NISSANから新しいEVが、そして、いよいよTOYOTAやMAZDAからもEVが発売される様で、日本メーカーの選択肢も増えることになりました。

今年までは輸入車のEVの方が種類は多かったのですが、来年以降の日本メーカーのEVとのガチンコ対決が楽しみです。

内燃機関のクルマにおいては輸入車の方が割高と感じていた方も多いと思いますが、EVに関しては一部の高級メーカーは別にして、同クラスのクルマに関しては同じ価格帯というイメージです。皆さん、新しい時代に入ってくるクルマを、もう一度ワクワクしながら、見てみませんか?

実際に買う買わないは別にしても、是非、EVに色々と乗ってみて新時代を感じてみて下さい。来年は日本メーカーにとっての本格的EV元年になるのか?!私個人としても楽しみにしています。

安東 弘樹

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