念願の北の白い道…安東弘樹連載コラム

皆さんは北海道の稚内にある「白い道」と言うのを御存知でしょうか?

ここは北海道遺産にもなっている宗谷丘陵(波状丘陵)に配されている道で2011年に、当時の稚内市産業観光課職員のアイデアで、宗谷牧場のオフロードにホタテの貝殻を砕いて敷き詰めたのが最初で、訪れるライダーたちに日本離れした光景が話題になり、注目のスポットになっています。

そう、いつもの通り、モトブロガーと言われるバイク乗りのユーチューバーの動画に、頻繁に出てくるのが、この「白い道」なんです。

貝殻が敷き詰められている、といってもとがった貝殻でタイヤが傷けられることがないくらい、多くのドライバー、ライダーに走りならされてきたせいか、現在は、かなり滑らかな表面になっていて、ツルツルと言ってよい所もあるくらいです。

私は、いつしか、その「白い道」を自分のクルマで走るのが夢になっていました。

本当に多くのモトブロガーが、この道の走行動画を上げていて、誰もが感嘆の声をあげているのです。

コロナウィルスの影響もあり、私もいつか!と思うようになって1年以上が過ぎていました。

しかし、人間、いつ死ぬかさえ先が分かりません。国を挙げて「Go Toトラベルキャンペーン」も推し進めている中、思い切って夢を叶えようと、北海道行きを決めました。

自分のレギュラー番組の曜日が変わったり毎週の収録の番組が隔週になった事もあり、4日間程、休みを確保する事ができたため、何とかなりそうです。

しかし問題は「自分のクルマ」で走りたい、という所です。飛行機や鉄道では不可能ですので、手段は青森まで自走して、そこからフェリーで北海道に入るか、関東地方からだと茨城県の大洗港から直接、苫小牧港経由で北海道に入るかです。

実は22年前の1998年、当時独身で、付き合っている彼女もいなかった私は、青森経由で北海道に入ったことが有るので、今回は敢えて違う手段、そう大洗からフェリーに乗って北海道を目指すことにしました。

正直に言うと、この大洗~苫小牧ルートのフェリーに乗るモトブロガーの動画を沢山、見ることで旅情を掻き立てられていた、という動機もあります。

そして、まだコロナウィルスが完全に収束した訳でもなく、人との接触も避けられると思ったこともフェリーを選んだ理由です。

今回は二人部屋の個室を一人で利用しても追加料金が掛からないキャンペーンをフェリー会社が実施していましたので、それを利用すれば航海の最中はほとんど誰とも接触せずに済みます。食事も個室ですることが可能ですし、もし船のレストラン等が空いていたら、そこで食事をしてもリスクは低いでしょう。

できるだけ混雑を避ける意味でも平日から平日までのスケジュールを組めたのは幸運でした。

但し、往復とも船中泊になりますので、北海道では1泊だけになるという何とも勿体ないというか、ある意味贅沢な旅になってしまうのは仕方がありません。

あくまで今回は人と接触せずに「白い道」を走破するのが目的です。

さあ、当日は19時45分大洗港発のフェリーに乗って北の大地を目指しました。

乗船手続きも時間が早かったせいか、他には一組位しかフェリーターミナルの受け付けにはおらず、手続き後は自分のクルマで待機していましたので、ほとんど人との接触はありません。クルマの中での2時間以上の待機は確かに辛かったですが、これも仕方がありません。そして、ついに乗船の時が来ました。

それにしても大きな船にクルマで乗り込む瞬間は何度、経験してもテンションが上がります。

前回のフェリー旅の時は確か船の後部から乗り込みましたが、今回は船首近くの右側側面から、という「こんな所に穴が開いていて大丈夫?!」と思わず呟いてしまう様な所に大きなクルマの乗降口が有りました。勿論、大丈夫なのでしょうが、それだけにクルマを運転して船に乗り込んだ瞬間は思わず「こんな所から失礼します。お世話になります」と声に出して話しかけてしまいました(笑)。

私が案内されてクルマを停めたのは何と最下層の部分で、恐らく喫水線上、もしくは水面下かもしれません。何だか少し不思議な感覚でしたが、船の大きさ故か、不安はありませんでした。

そして自分の部屋がある階層にはエレベーターを使って上がるのですが平日のせいか、クルマの数も、そう多くはなく、エレベーターも一人で乗る事ができた為、部屋に入るまでも、ほとんど人と接触することはありません。フェリー旅というのは、本当に、こんなご時勢に向いているのだなと改めて感心してしまいました。

部屋はビジネスホテルのツインルームが、そのまま船に設置されている雰囲気で、ユニットバスも付いています。時間的には、ちょうど夕食の時間で、船のレストランは既に営業をしている様なので、様子を見に行ってみます。もちろん、密になる様でしたら、売店で食べ物を買って部屋で食べようと思っていたのですが、いざ行ってみると拍子抜けするほど空いていて、広い店内に5,6組程しかお客さんは、おらず、これは問題ないと思い、いつもはビュッフェスタイルという事ですが、コロナ後には4種類に絞られたという、セットメニューのうちの一つ、オムライスとビーフシチューを選び、美味しくいただきました。

それから、この船には大海原の景色が見える展望大浴場も完備されているので、ここも様子を見に行ったところ、先客は一人だけでしたので、ゆっくりと湯船に浸かる事ができました。もっとも、もう夜ですので、ほとんど、外は見えませんでしたが。

多少の揺れで、ぐっすりとは言えませんでしたが、それでもベッドで、ゆっくりできて、次の日の昼13時半には北海道です!またワクワクしながら大きな船から車を出して、北の大地に上陸しました!苫小牧から日没までに400キロ離れた稚内まで到着するのは不可能ですので、そこから遠くない支笏湖畔のホテルに泊まり、翌日、いよいよ「白い道」を目指します。

前日の船旅に疲れた?のか寝坊してしまい、午前11時頃の出発になってしまいました。ナビの到着予定時刻は無情にも18時位になっています。しかし私はクルマの運転をしている限り、道中、休憩しなくてよい、という特技があります。しかも渋滞の無い北海道の幹線道路です。絶対に、もっと早く着けると確信し、焦らず慎重に急いで「白い道」を目指しました。

案の定、北海道の道は走りやすく、高速道路を含めて350キロの道のりを5時間半で走破し16時半には白い道に到着したのです。

夢を叶えた瞬間。その白い道に差しかかったとき、正に息を呑みました。

私のイメージは真っ青な空の下の真っ白な道のコントラストが素晴らしい、というものでしたが、この時間は見事な夕焼けが、この白い道を照らしてくれています。もう、この世のものとは思えない光景でした。写真を上げておきますが、実際は、もっと感動的な色と情景です。これはスマホで撮った写真ですので、今回ほど、ちゃんとしたカメラを買っておくべきだったと思ったことはありません。

私は写真や動画を撮ると、その事に集中してしまい生の光景を自分の、この眼で、しっかりと焼き付ける、という事が二の次になってしまいそうで、撮影はあまり好きではありませんでした。

しかし、この光景を出来るだけ生に近い状態で残しておきたかったと、今は後悔しています。今度、カメラを買おうと決心しました。自分の信条を変えてしまうくらいの力がある光景だったと言えるでしょう。

その興奮の冷めやらぬうちにその日の深夜に苫小牧を出るフェリー乗り、北海道を後にしました。

北海道では殆どクルマの運転をしていた旅でしたが、その「白い道」を絶妙の時間帯に観られた事で満足です。

実質北海道では一泊だけで、感動的に美味しいお寿司を一食、食べたものの、それ以外は道の駅での短時間の食事だけでしたが、後悔はしていません。航海はしましたが…、スミマセン。

後で計算してみると、格安航空券などを使うと羽田~千歳の飛行機の運賃は驚く程リーズナブルでフェリーは時間もかかるし正直価格も、安いとは言えず、合理的ではありません。

しかし、自分のクルマやバイクを運んでくれる、という他の公共交通機関では絶対に真似ができない特徴を持っています。こんなご時勢だからこそ、私の様に、どうしても“自分の愛車で旅をしたいし、密を避けたい”という条件に、ピッタリの交通手段ということを実感しました。

実際に今回の旅で北海道の方に迷惑を掛けた可能性は(感染のリスクという意味で)かなり低いと自負しています。お寿司を食べた時も口にお寿司を入れる瞬間以外はマスクをしていましたし、他にはホテルのチェックイン・アウトの時にお互いに完全防備をしたスタッフと少し会話をした位でした。

しかし、今度はゆっくりとしたスケジュールで様々な人と触れ合う様な旅もしてみたいものです。

それまでは今回、私に感動をくれた「白い道」の想い出に浸って我慢しておきます。

 

安東 弘樹

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