安東弘樹 7年ぶりのサーキット走行会で夢のような体験を通して改めて感じたこと…安東弘樹連載コラム

  • 愛車ロータス「エリーゼ」@富士スピードウェイ

新型コロナウィルスの感染が拡がって以来、ロングツーリングや、サーキットを走るイベント等の機会が長らくありませんでしたが、先日、久しぶりに、サーキット走行の機会に恵まれました。

私が担当しているラジオ番組のスポンサーさんの社内イベントにお邪魔させて頂いたのです。

その会社の新入社員、お披露目も兼ねた、そのイベントは、希望者は全員、自分のクルマで富士スピードウェイを先導なしの走行会に参加できるというもので、その走行会に私とクルマ好きのラジオスタッフも参加させて頂きました。

サーキット走行は難しいけれども、「やっぱり、クルマ運転するのは楽しい!」

  • 富士スピードウェイのピットロードを快走するロータス「エリーゼ」

    いよいよコースイン

コロナ禍での開催ということで、ドライバーズミーティングも広い会議室を目いっぱい使い、人と人との距離を十分に保ち、部屋のキャパシティーに対しての人数が少ないにも関わらず何人かは立って参加する程で、この会社の対策に安心しました。後は一人一人、クルマに乗って待機し、時間になったら一台一台、富士スピードウェイのレーシングコースに入っていくだけです。

このイベントのために貸し切っているのは、2時間で、最初の40分が4輪枠、その後、30分が2輪、そして最後の40分が、また4輪というスケジュールになっていました。

サーキットを全開で走るのは、2年前に初めての耐久レースに出場して以来で、走行会となると、もはや、7、8年前が最後かな、というくらいに久しぶりです。

所属している事務所には「くれぐれも怪我だけはないようにお願いします」と念を押されていたのは言うまでもありません。

事務所の立場としては当然ですが、そんなこともあり、当日の朝は、意外なほど緊張して迎えました(笑)。

  • 富士スピードウェイのホームストレートを快走するロータス「エリーゼ」

    国内最長のホームストレート(1475m)を駆け抜ける

そして今回は、「ロードゴーイングレーシングカー」の異名を持つ?去年購入した二人乗りのスポーツカー、ロータス「エリーゼ」で参加できるのが本当に嬉しかったのです。

観客もいない広大な冨士のレーシングコースに入っていく瞬間、何とも言えない快感を得ました。ピットロードを出てすぐに第一コーナーに入っていくのですが、その瞬間に、「やっぱりクルマを運転するのは楽しい!」と叫んでしまったくらいですから(笑)。

しかし、台数が少ないとはいえ、他にもクルマは走っていて、しかも今回はその会社の一般社員の方が参加しているので運転スキルも、まちまちですから、気は抜けません。

気を引き締めて走行を続けます。

冨士スピードウェイは20年以上前に1度、走行会で走ったことはありますが、それ以来ですから、中々、リズムもつかめず、「息子のゲームで予習しておけばよかった」と後悔しながら、「3周前後毎に、休憩を必ず取る」という、この走行会のルールにのっとり、3周して一旦、コースを出ました。自分の中で一人大反省会をして、2輪枠の後に、きっちり反省を生かそう!と考えていたら、スタッフの方が大声で、「まだコースに余裕が有りますから走りたい方はどうぞ!と案内して下さっていたので、これは、と思い、時間的にも、もう3周できそうでしたので、すかさずコースに入ります!またピットロードを出る瞬間に身震いするほどの心地よさを感じながら、考え過ぎずに反省を頭に入れ、走り始めました。コース前半は、スムーズにいきましたが、どうしても、後半のトリッキーなレイアウトの部分が上手くいきません…。またしても反省しながら3周を終え、休憩に入りました。

ホンダ「NSX」でサーキットタクシー体験、少し運転スキルが向上

休憩中に、このイベントにアドバイザーとして参加されていたレーシングドライバーの方に相談した所、「では後半の4輪枠の時、自分が運転しますので同乗して、コース取りを見てみますか?」と提案して下さったので、「是非!」と厚意に甘えることにさせて頂きました。

  • サーキットタクシーに使用した最新のホンダ「NSX」

    サーキットタクシーに使用した最新のホンダ「NSX」

そして、時間になり、いよいよ同乗です。しかもドライブして下さるのは最新のホンダ「NSX」。
助手席に乗り、いよいよコースイン!

  • ホンダ「NSX」のサーキットタクシーでドラテクを学ぶ

    サーキットタクシーでドラテクを学ぶ

本コースに入った瞬間にフルスロットル!第一コーナーで素早くブレーキング!
自分でも同じことをしているつもりなのですが、コーナーに突っ込んでいくスピード。ブレーキのタイミング、絶妙のコーナリング。どれをとっても、同じコースを走っているとは思えない次元のテクニックでした。当然と言えば当然ですが、改めてレーシングドライバーの「凄み」を感じたのは言うまでもありません。

しかし、感動しているだけでは厚意を無駄にしてしまいます。そこは、ちゃんとコース取りやコースに入る時のスピード、ステアリングさばき、ブレーキのタイミング等を、注視しながら、同乗体験を終えました。いやー、目から鱗が落ちる、とはこのことです。

一番感じたのは、見事な「メリハリ」でした。

アクセルを踏む時は躊躇せず踏む。そしてスピードを落とす時は、きっちり落とす。勇気と慎重さのメリハリに圧倒されましたが、しっかりと頭に入れ、いよいよ自分の走行です。
覚えたことを忘れないうちに、小走りに自分のロータス「エリーゼ」に戻り、コースイン!

先程のプロの走りの残像を思い出しながら、第一コーナーに入ります。「うまくいった!」。その後もコーナーをクリアしながら、いよいよ苦手な後半部分。スピード域はもちろん、プロとは、まるで違いますが、最初の枠に走行した自分とは完全に異なるスムーズさで走り抜けることができました!

スムーズに最終コーナーを抜け、アクセルを床まで踏みつけながら走るホームストレートは最高の気分です。

ロータス「エリーゼ」はホームストレートでは最高速度が210Km/h程までしか伸びませんが、その代わり、コーナーでは、その900Kgちょっとしかない軽量さをいかんなく発揮してくれるマシンで,予想通り、サーキットを走るには最高のクルマでした。

私のスキルが、もっと上がれば、更に輝きを増してくれるでしょう。

まだまだ反省点はありますが、まずまずの満足感に浸りながら、コースを出て、クルマから降りたら、いつも番組の収録にも立ち会って下さる、この会社の会長さんが私の所に来て、「まだ時間がありますから、良かったらNSXでコースを走りませんか?」とありがたい提案をして下さいました。もちろん、断る理由はありません!すぐに「NSX」に乗り込み、ワクワクしながらコースに入りました。

ロータス「エリーゼ」とは比べ物にならない加速力に少し戸惑いながらも、基本に忠実に「NSX」を走らせると驚く程の懐の深さをみせてくれて、私に合わせてクルマが走ってくれます。

ホームストレートでは速度計で258Km/hまで確認できました。後ろ髪を引かれる思いで3周を終え、ピットに戻って来た時には、何とも心地よい興奮に包まれておりました。

ちなみに「NSX」で走行中、先程のレーシングドライバーの方が運転する、フルチューンされているとはいえ、昔の軽のスポーツカーに、コーナーでぶち抜かれたことを報告させて頂きます。やはりプロ、次元が違います…。

安全のために一般ドライバーもサーキットを走ってほしい

かくして夢のような1日は終わりましたが、改めて感じました。
以前、このコラムで書かせて頂いたのですが、全てのドライバーは「安全のために」一度サーキットを走るべきだということです。

私は常々、サーキット走行を自動車教習の必須科目にすべき、と主張してきました。ほとんどの一般ドライバーは自動車の限界をしらないまま、公道を走り始めます。ルールや運転モラルを守るのが安全に最も寄与するのはもちろんですが、多くの事故がスピードの出し過ぎや、それに伴いカーブを曲がり切れなかった。止まれなかった。等、運動エネルギーや自分のクルマの限界を見極められないことで引き起こされています。

例えば、仮に制限速度を守っていても、中には制限速度内でも減速した方が良いカーブも皆無ではありません。

一度でもアクセルを全開にして走り、思いっきりブレーキを踏み、ある程度のスピードでカーブを曲がってみると、「ここから先は行ってはいけない」という領域が理解できると思うのです。

パソコンや、テレビ、冷蔵庫のポテンシャルの限界を知らなくても命にはかかわりませんが、クルマという物は、まだまだ暫くは自分で運転し、しかも自分や同乗者の命を乗せる道具です。

考えてみるとクルマの限界を知らずに公道を走る、というのは危険な行為ではないでしょうか。

しかも一度、サーキットを走ったことで、モータースポーツに興味を持ったり、中には自分で今後も走ってみたいと思う方も増えるかもしれません。しいては自動車産業の発展に寄与すると私は信じています。

久しぶりにサーキットを走り、改めて、その想いを確認することができました。

最後に、この走行会を主催して下さった会社の皆様に感謝を申し上げます!

安東 弘樹

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