私の選考基準は運転が楽しく安全で、所有してワクワクするクルマ…安東弘樹連載コラム

去る11月3日、開催中だったジャパン・モビリティー・ショー(JMS)会場内の特別ステージで今回のCOTY、10ベストカーが発表されました。

今年2023年に発売になった、またはモデルチェンジされたクルマの中から、今年を代表する一台を決めるCOTYの前哨戦です。この10ベストカーの中から12月7日にCOTYが決まる訳です。

私は、選考委員にして、その発表会(選考会)の司会を任されたのですが、自分以外の選考委員の投票内容を知らないので、セレモニーの際にもドキドキして発表会(選考会)に臨みました。

この日はノミネートされた34台のうちの10台(10ベストカー)が発表されたのですが、今回から、60人の選考委員がどの10台を選んだか、公表する方式に変わりました。

発表のセレモニーの中で、1人1人の選考委員が選んだ10台が表になってモニターに映し出されます。選考委員によってその個性が出ますので、見ていて様々な発見があります。今回は選んだクルマの他に、選考委員1人1人の選考基準も併記されていましたので、その透明性はこれまで以上に担保されたのではないでしょうか。
ちなみに私は、運転が楽しく安全で、所有してワクワクするクルマ。という選考基準を書きました。

その中でも多くの選考委員が投票したクルマ。逆に少数の選考委員しか投票しないクルマ。
色々とあります。
実際に、その会場にいたお客様も、1人の選考委員の表が出る度に、声を出したり、時には拍手をされたり、リアクションをされている方もいらっしゃいました。

ここで今回選ばれた10ベストカーを紹介しましょう。

の10台です。(※記載はノミネート順です。)

ちなみに私が選んだ10台の中で、投票の結果、選ばれたクルマは5台…。

選考委員は、自分が選んだ10台と実際に選ばれた10台を比較して「何勝何敗」という表現をする場合もあるのですが、私は5勝5敗。

平均が7勝3敗位だそうで私は毎回、勝率が低いのが特徴です(笑)。

私にとってクルマの魅力とは運転の楽しさが全てですので、クルマの種類を問わず、例えばミニバンでも運転が楽しいかどうか、自分の運転にリアルに反応してくれるか、がとても大切です。運転が楽しいと、安全にも繋がる、というのが私の持論。

その証拠に運転が楽しい自分の所有車を運転しているときは、眠気にも襲われにくく極論を言えば、休憩さえとれば永遠に運転していられます。

私が選んだ10ベストカーの中で、今回、落選?したクルマは、BMWM2、同XM、プジョー408、BYDドルフィン、EQS SUVでした。M2は恐らくBMW最後のエンジン+MTのクルマで、実際に走ってみてパフォーマンスも素晴らしかったので、迷い無く投票。XMはシステム最大出力650PSで巨大かつ重いのに、実質20km/Lの燃費も可能、という良い意味での非現実感を評価。重量2.7トンのクルマが軽自動車より燃費が良い場合があるのです。正に驚愕でした。

プジョー408はデザインと実用性、ガソリンモデルもPHVモデルも燃費も良いというマルチな魅力を評価。BYDドルフィンは価格に対して航続距離、パフォーマンス、装備、デザインが優れていた為。EQS SUVは、ブレーキのタッチに難はあるものの、このサイズ、このクラスで現在、唯一のBEVで、下品な位(笑)の完成度に対して票を投じました。

選考委員の中には「600万円以下で選んだ」という方もいます。ある意味、現実的で正しいとも思いますが、私は全ての車の中から「運転が楽しくて安全でワクワクさせてくれる(環境負荷が少なければ尚、良い)クルマ」を選んだつもりです。
実は選考委員の中でも意見は様々ありまして、多くの人が一生、触れる事のないクルマを「日本カーオブザイヤー」に選ぶべきか否か、エントリーの段階で価格帯別にするべきではないか等、今後、クルマ自体が多様化する中で、議論を続けていく事になるでしょう。

今回の10ベストカー

  • トヨタ プリウス

そして今回の5勝分。私の選択と同じだった10ベストカーを見てみると、
プリウスは、走りや燃費、インテリア、価格など、個人的に中身に関しては手放しで賛辞を送れませんが、エクステリアデザインに関しては、感服でした。多く売れるクルマは、都市景観の一部になる、と私は思います。すなわちデザインに対して、社会的責任がある、とすら考えていますので、新しいプリウスは、その責任を果たせると思い投票しました。

  • 日産 セレナ

セレナはミニバンでありながら、まずエクステリアデザインでワクワクしました。そしてインパネも先進的で、ミニバンでも見ているだけで所有感を満足させられる場合もあるのだな、と思ったのです。走りには特筆すべき感覚は無かったものの静粛性や使い勝手には満足。唯、プロパイロット2.0が一部のグレードにしか付かないのは残念です。

  • ホンダ ZR-V

ZR-Vはプリウスと逆で、走り、燃費、インテリアの質感に関しては非の打ち所がありませんが、個人的にはエクステリアデザインだけ、もう少しシャープにならなかったのか、色がどれも良かっただけに、総合評価に悩みます。

  • アバルト 500e

アバルト500eは首都高速道路のコーナを走っている時にBEVならではの低重心と、このサイズのBEVにして十分以上の動力性能に痺れました。価格にも痺れますが(笑)。BEVの一つの方向の可能性を感じました。

  • BMW X1

BMW X1は日本でもちょうど良いサイズにして、室内は広くなり、特にディーゼルモデルの力強さと燃費の両立。更にADAS等の運転支援、安全性能も抜かりなく、正に、これ1台で幸せになれるクルマとして私も選んだ次第です。今回はノミネートされていませんでしたが、X1のBEV版、iX1も動力性能、静粛性、先進性が素晴らしかった事を付け加えて起きます。

  • マセラティ グレカーレ

ちなみに意外だったのはマセラティ・グレカーレが10ベストカーに選ばれた事です。マイルド・ハイブリッド機構は付いていますが、パフォーマンス用のモーターアシストで燃費には寄与しない、との事。その証拠に?試乗時のリアル燃費は6km/L。試乗した時に燃料を満タンにして返さなければならなかったのですが、30km走ってガソリンスタンドで1L、200円のハイオクガソリンを入れたら5L入りました。30kmで1000円、、、エントリーグレードの2Lターボモデルで、このランニングコストと環境負荷です。確かに良いクルマではありましたが…。

それなら私は、よりパフォーマンスが高く燃費も意外に優れており、何よりMTを選べるBMW M2の方が良いと思いましたが、選考委員にもSUVファンが多いのでしょうか。もちろん直接比較するクルマではありませんが、ちょっと、恨み節です(笑)

魂を込めて選ばせていただきます。

さて12月7日には、いよいよ今年の1台、日本カー・オブ・ザ・イヤーが発表されます。

何となく、「あのクルマ」になる予感はしていますが、実際はどうなりますか。

皆さんも自分の中の、カー・オブ・ザ・イヤーを、それぞれ考えてみてはいかがでしょうか。

簡単に試乗できない車もありますが、お近くの販売店にもし当該車があるのであれば、あらためて赴いて、この10台に試乗してみてはいかがでしょうか?

ちなみに私は郊外(千葉県)の主要国道沿いに住んでいて自動車販売店が軒を連ねていますので、今回選ばれた10ベストカーのうち、近所の販売店だけでも7台には試乗できる環境です。

11月22日には、改めて、この10台を集めた試乗会が開かれ、選考委員は確認しながら乗る機会がありますが、その前に私もそれぞれを「地元の販売店で」乗ってみようかと考えています。

その上で、魂を込めて今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーを選ばせて頂きます。

安東弘樹

(写真:日本カー・オブ・ザ・イヤー)

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