気になっていた最新輸入車をJAIA試乗会で一気乗りしてきました…安東弘樹連載コラム

今月初め、毎年恒例の日本自動車輸入組合(以下JAIA)主催の輸入車試乗会に参加して来ました。神奈川県にある大磯プリンスホテル駐車場を拠点として、そこから様々な輸入車に乗ります。私が数えた限り、16社26ブランドで約70台もの輸入車が揃い、その中から最大で5台に乗る事が出来ます。

ただ、私は休憩時間を取る事を考慮して、4台にしました。この試乗会が終わった後、都内でテレビの生放送がありましたので、無理はできないと判断したからです。もし5台に乗ると、昼食も夕食も取らずに夜9時からの生放送に臨まなければならなくなりますので、流石に、それを避けるため、苦渋の選択をしました。実際、殆どの参加者が、4台という選択をしたようです。

それでも朝8時半~16時半まで、一回の休憩80分を挟んで、各車80分ずつの試乗になりますから、体力的にも精神的にも疲れる、というのが本音です。私は、ただ車を自分の思いのままに運転するのでしたら、極論を言えば、半永久的に運転していられますが、1台、1台、内容を吟味しながら80分、という限られた時間で、評価も考えて運転する、となると勝手が違い、とてつもない疲労を感じます。

そんな私が選んだ(全て希望通りにはなりませんでしたが)4台はこちらです。

  • レンジローバー・イヴォークオートバイオグラフィーPHEV P300e
  • VOLVO C40リチャージ Ultimate シングルモーター
  • メルセデスAMG CLA45 4MATIC シューティングブレーク
  • メルセデスベンツ GLC 350e 4MATIC

PHEVが2台。BEV(電気自動車)が1台。ICE(内燃機関)の車が1台という構成になりました。

実は今回、抽選で外れてしまったクルマも含めて、PHEVを中心に選んだのです。というのも昨年の6月にBEV(PEUGEOT e208)を購入し、更にメーカーの試乗会などを通じてBEVの性能、使い勝手はかなり理解出来てきたからでした。

PHEVはかなり以前から興味はあったのですが、BEVとICEの良いところ取り、というより、むしろ中途半端と揶揄する人も居て、私もこれまでの試乗の経験上、賛同せざるを得ない部分もあったのです。

私は2年半前にPHEVのある輸入車を3日間、インポーターから借りて、旅に出て、PHEVの実際の使い勝手を検証した事があります。

そのクルマの駆動用バッテリーの総電力量は13.2kwhで、カタログ上でもEV換算航続距離は50km程度で、実質走れたのは30km程でした。それでも初めて満充電にしたPHEVに乗って、走り始めてから30kmまでエンジンが掛からなかったのには感動しました。それまで、PHEVの試乗では乗り始めた時点で、バッテリー残量が30%以下になっている事が多く、エンジンがすぐに掛かってしまい、PHEVであることの意味が希薄な状況での試乗が殆どだったからです。試乗会場に充電器が無いか、あっても、自分が試乗する前に他のテスターが乗った直後では、充電する時間が十分に取れない為、PHEVの魅力を感じる事が出来ませんでした。

しかし、2年半前、100%充電されている状態の広報車を借りられた事で、30kmをモーターのみで走り、それが感動に繋がった、という訳です。

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当時も記事を書きましたが3日間、1000km以上の走行でトータル16km/Lの燃費を記録して、PHEVも侮れないと思いました。
泊まったホテル(2泊、別のホテル)には200Vの普通充電器が設置されていた為、宿泊する度に満充電に出来たからこそ、出た数字です。それだけに状況を選ぶパワーユニットだな、というのが正直な感想でした。

それぞれ試乗へ。

  • レンジローバー・イヴォーク・オートバイオグラフィーPHEV P300e

その印象を払拭できるのか興味を持って、今回、最初に乗ったのがレンジローバー・イヴォーク・オートバイオグラフィーPHEV P300e。 レンジローバーシリーズ末弟のイヴォークの最上級グレードのPHEVです。
駆動用バッテリーの総電力量は15kwh。2年半前に試乗した車より少し上回っています。

気になるバッテリーは、ほぼ満充電。しかしこのクルマ、SOC(バッテリー残量)は数字での表示は無く、半円のバーで残量が出て、EVとしての走行可能距離のみ55kmと数字で表示されていました。

EVモードにして走り始めます。当然、エンジンは掛からず、スルスルとBEVと同じようにスムーズなスタートです。

大磯プリンスホテルの駐車場を出て空いている西湘バイパスに乗り、箱根方面に向かいます。
するとEVモードで走り始めたはずが、バッテリー残量が90%以上、残っているにもかかわらずエンジンが始動しました。モニターで確認してみると、いつの間にかハイブリッドモードになっています。車の方での制御だと思いますが暫くするとEVモードに戻りエンジンは止りました。

箱根新道に乗り、上り坂になって暫く経ったところでエンジンが再び掛かり、その後はエンジンとモーター交互に仕事をするようになりました。箱根新道を上りきった所でUターンし、今度は下り坂です。回生により、バッテリー残量の回復を期待しますが、意外にも走行可能距離は3km程しか回復しませんでした。ただ、バッテリー残量を示す半円のグラフは、伸びています。確実に電気はバッテリーに蓄えられている様です。

その後西湘バイパス経由でスタート地点に戻った時点で、この日走った距離は55km。バッテリー残量表示のグラフは、ほぼ無くなっており、モーターでの走行可能距離は2kmになっていました。しかし燃費は78.4km/Lの表示。エンジンは時々しか掛からず、燃料計も殆ど減っていませんでしたので、かなりリアルな数字だと思います。

動力性能もエンジンとモーターが上手く協調しており、かなり力強く走ってくれました。仮に、この後も充電せずに走行を続ければ、みるみる燃費は悪くなるでしょう。正直、もう少し長い距離で試してみたかったのが本音です。

  • 基本的に全ての操作が中央のモニターに集約している

そして新しいモデルは、基本的に全ての操作が中央のモニターに集約されており、これが正直、私にとって使いにくかった事をお伝えしておきます。温度調節もモニターのアイコンを上下にスライドさせて行うのですが、これが上に下に行きすぎたりして走行中に操作するのは難しいです。以前のダイヤル式の時は初めての操作でも違和感は全くありませんでした。これは上位車種のヴェラールも同様ですので、個人的には物理ダイヤルに戻して欲しいと切に願います。

  • VOLVO C40 リチャージ Ultimate シングルモーター

2台目に乗ったのはVOLVO C40 リチャージ Ultimate シングルモーター。
2輪駆動のBEVです。実は初めてVOLVOのBEVに乗るのですが、動力性能(238PS)、バッテリー容量(73kwh)共に、十分の性能ですが、BEVの検証は実際に充電してみなければ、リアルな性能を知る事は難しく、今回もBEVとしての充電性能を知る機会も無かったので、あまり多くは語れません。ただ、室内もクリーンで落ち着きがあり、エクステリアも嫌いな方は少ないと思いますが、これまでのVOLVO車の様な個性は希薄だったという印象です。

  • 優秀なGoogle搭載のインターフェイス!

クルマとしてよく出来ていて特に不満はないのですが、代わりに突出したものも無い、といった所でしょうか。
しかし!とにかくGoogle搭載のインターフェイスは使いやすい、の一言でした。何と言っても音声コマンドが他車とは比較出来ないほど優秀で、目的地設定も、「OK Google!」の一言の後、指示すれば、スマートスピーカーと同様の精度で、一瞬で設定が終ります。クルマの操作は勿論ですが、試しに「江戸時代は、いつからいつまで?」と訊いたら、正確に1603年から1868年までです」と教えてくれました。他の全メーカーも、これに追従して欲しいと切に願います。

  • メルセデス・AMG CLA45 4MATIC シューティングブレーク

次はメルセデス・AMG CLA45 4MATIC シューティングブレーク。
言わずと知れたM139エンジン(421ps 500Nm)搭載の超高速ワゴンです。これまでも何度か味わった事がありますが、速くて安定していて音も良くて荷物も積める。相変わらず、良い意味で、えげつないマシンでした(笑)。

しかも50km程の距離を走って、有料道路が行程の8割とは言え、13km/L以上の燃費です。
エンジンでは日本メーカーに叶わないから欧州メーカーはBEVに注力した、等という論調も見受けられますが、このクルマに乗ってもそう言えるのでしょうか。というエンジンです。

そして最後は私にとっての今回の目玉、メルセデスベンツ GLC 350e 4MATIC 。最新のPHEVです。

  • メルセデスベンツ GLC 350e 4MATIC

駆動用バッテリーの総電力量は何と31.2kwh!
100kw/440Nmの電気モーターに204ps/320Nmを発生する2L直4ガソリンターボエンジンを組み合わせ、EV走行距離は118km!バッテリー総電力量はBEVである日産SAKURAの1.5倍以上です。

  • バッテリー残量が75%、EV走行可能距離は70kmでの試乗

実は今回、私が、これだけは乗りたい、と思っていたクルマです。乗り始めた時にバッテリー残量が少なかったら、試乗する意味も半減してしまうので、クルマに乗る前は、少し心配でした。(笑)。クルマを起動させメーターを見るとバッテリー残量が75%。EV走行可能距離は70kmの表示です。微妙な残量ですが、このクルマの強みは何と言っても急速充電に対応している事です。輸入車のPHEVの場合、メルセデス以外は基本的に普通充電にしか対応していません。総電力量が多いクルマが多いので、それを考えれば妥当なのですが、実は、このCLC 350eが、急速充電に対応しているからこそ、私が乗る前に75%になっていたのです。

どういう事かと申しますと、私の前に試乗した方が、かなり電気を使い、駐車場に帰ってきた時には、数%しか電気が残っていなかったそうですが、メルセデスのスタッフが急速充電したところ20分ほどで75%まで回復した、という事なのです。急速充電に対応している、という事は長距離走行時、経路充電が必要なときは、高速道路のS.A.で充電できますので、これは、かなりのアドバンテージでしょう。

GLCで、また西湘バイパスにのります。440Nmのモーターで遅い訳がありません。十分以上の加速で本線に合流。しかしエンジンは掛かりません。このクルマの優れているところは、加速時や登坂時などクルマのパワーユニットに負担が掛かる際、エンジンが掛かる手前でアクセルが重くなり、これ以上踏むとエンジンが掛かる事を教えてくれる事です。その手前でアクセルを戻すとEV走行が続く、という訳です。

箱根新道を上ってもエンジンは掛かりません。渋滞してきたので、途中のインターで降り、下道で箱根の山を下る際には少しバッテリー残量も回復し、ついに50km弱の行程、一回もエンジンが掛からず大磯プリンス駐車場に戻ってきました。正直、初めて完全に実用的なPHEVに出会えた。という感想です。

これなら、普段はBEVとして乗り、長距離走行の際も経路充電し、本当に必要な時のみエンジンで走る、という使い方が出来ます。これは買いだ!と思ったのですが、ここで衝撃の事実が判明。日本仕様はシートベンチレーターやステアリングホイールヒーターが付かないそうです(欧州モデルは装備)。

特にステアリングホイールヒーターに関しては、最近は軽自動車でも装備されています。インポーターの担当に訊くと、昨今の半導体不足や納期の遅れの影響で、オプションや装備を整理せざるを得なかった、との事。半導体不足は解消しつつありますが、一旦、整理した装備を、もう一度戻すと、また納期が遅れる可能性が生じる、との説明で、納得したようなしないような気持ちになりました(笑)やっと出会えた理想のクルマだと思ったのですが、最終的には、理想、ではなくなり、、、今後も私のクルマ選びは続きます。

とはいえ、最新の輸入車にあらためて触れてみて、昨年の、BEV一辺倒、という状況ではなくなり、暫く混沌とした状況が継続する事を再確認しました。

もし、これまでは輸入車に触れる機会が、あまりなかったという方が、いらっしゃったら、是非、お近くの販売店に行って、試乗だけでもしてみては如何でしょうか?
新しい出会いがあるかもしれませんよ!

安東弘樹

MORIZO on the Road