マニア度が高いノスタルジック2デイズのレポート…安東弘樹連載コラム

去る2月中旬、パシフィコ横浜にて、所謂、旧車の祭典、ノスタルジック2デイズ(以下、N2d)が開催されました。私は2日間のこのイベントの総合司会を担当させて頂きました。

実はTBSの社員時代からの6回連続の司会担当で、毎年、楽しい時間を過ごしています。

主催はノスタルジック・ヒーロー(N・H)という旧車の情報誌を発行している芸文社で、主に1960年代~90年代までの国内外メーカーの車を元に、様々なショップやファクトリーが、レストアして当時のままの状態に戻したクルマや独自のカスタムを施した完成車を展示、又は販売しているイベントです。貴重なパーツ等を販売しているショップもあり、掘り出し物を求めて、毎年来場している方も少なくありません。

また特別展示として、歴史に残る名車やモータースポーツで輝かしい結果を残したレーシングカー、更にゲストの実際の愛車などがディスプレイされており、間近で写真撮影も可能です。
コロナ禍で中止になった年もありましたが、年々、来場者も増え、その存在感も増してきました。

私の中では、もはやジャパン・モビリティーショー(以下、JMS)、東京オートサロン(以下、TAS)と並ぶ「3大車イベント」になっています。

ここ数年、3つのイベントに仕事、プライベート、両方の立場で来場して感じるのは、この3つのイベントが、良い塩梅で役割分担されてきている、という事です。

  • ノスタルジック2デイズは、私の中で、JMS、TASと並ぶ3大イベント

JMSは市販車の展示が少なくて個人的には不満も残りましたが、将来を見据えた正にモビリティーの未来を提案するショー。
TASは最近、国内外のメーカーの出展も増え、正に今の「トレンド」を発表するイベントになっており、カスタムは勿論ですが、メーカーが新車の発表の場に選ぶ事も増えていると感じます。

そしてN2dは過去のクルマの文化や技術、そしてデザインなどを、再び学び、現在、そして将来に継承する、という役割を担っていると感じました。

そして、来場者の特徴として、JMSはクルマ好きだけでは無く、様々な層のお客様が来場し、TASは基本的には現代のクルマ好き、カスタム好き、N2dは勿論、旧車好きが多いのですが、生粋のクルママニアという方が多いという特徴があるように見受けられます。

来場者平均のクルママニア度、クルマ濃度はN2dが最も濃い、というのは間違いないでしょう(笑)。

実際に著名人が1人で、取材ではなくお忍びで?チケットを実際に買って、来場している事が多く、そんな著名人からそっと声を掛けられる…、なんていう事もN2dならではの風物詩?です。

今年は私が会場で各ブースを観て回る時間が短く、声を掛けられる事はありませんでしたが、昨年は4人から声を掛けて頂き、また何人かをお見受けしました。

  • 「クルマが好き」意識を持っている若年層は確実に存在する

このイベントに参加して感じるのは、若い人の車離れが進んでいるのは間違いではないのでしょうが、積極的に「クルマが好き」という意識を持っている若年層は確実に存在する、という事です。

ただ、今の日本の経済状態が悪い為に、若い方が現実に新車なり、旧車を購入する事が困難、という状況を変えなければ文化の醸成もままならないのもまた事実です。

そこは本来、政治に期待するところではありますが、現状、我々大人全員が真剣に考えなければならない事。様々な手段で頑張るしかありません。

このイベントの最初のコンテンツは、事前にN・H誌で選ばれた10台の旧車の走行入場と決まっているのですが、最近は、それらのクルマのオーナーが若い方という事も増え、その拡がりを感じます。このコンテンツの名前は「選ばれし10台」。

会場の外から1台、1台、中央のシャッターを開けて、選ばれたクルマが会場のステージまで走行し、そのクルマのオーナーや、当該車を作ったショップの方などがクルマを降りて、ステージに登壇し、我々司会者が、その車についてインタビューする、というコンテンツです。

今回の登壇者の最年少は、勿論、その車のオーナーではないのですが、その車のファンクラブの会員の9歳の少年でした。

彼は、その車のデザインが好きでファンクラブに入り、日々、写真を撮って飾り、将来は、そのクルマに乗るのが夢だという事。何と頼もしいクルマ好き少年でしょう!

将来は必ず、その車を手にし、またN2dに参加して登壇する事を約束してくれました。

後10年は後になりそうですが、私も、それまで司会を担当できるように頑張ると心に誓ったのは言うまでもありません。

またN2dの特徴はトークショーに出演する方、自体もマニアですし、トークの内容もマニアック、という事です。

今年のゲストを紹介しますと、まずは何と言っても、自ら旧車を駆ってレースに出場している、クレイジーケンバンドの横山険さん。剣さんはN2dの「顔」といっても過言ではありません。

そして、最近80年代のクルマにハマっているロンドンブーツ1号2号の田村亮さん。

SUPER GTドライバーでクルママニア(特にGT-R)の松田次生選手。

旧車好きとしても知られる、イワイガワのお二人。

  • 左からE20 カローラ イワイガワジョニ男号/KPGC10 スカイライン HT 2000 GT-R/R33 スカイラインオーテックバージョン 松田次生号

更には、50年代~活躍した、平均年齢80歳、というレジェンドドライバーの皆さんのトークショーもあり、これはN2dでしか観られないでしょう!

6名の出演者の内の最年少が、私からしたら日本モータースポーツ界の重鎮、ルマン24時間レースで日本人として初めて総合優勝を果たした関谷正徳さん(74歳)でしたが、関谷さん曰く、この中では私は「パシりです(笑)」との事…。このレジェンドドライバーの皆さんのトークショーの司会は本当に勉強になりましたし刺激も頂きました。皆さん、クルマに対する情熱は全く変わっていませんでしたし、我々に対するメッセージにも感銘を受けました。

  • 充実したイベントになっている、いつもながら感心

そんなマニアックなコンテンツの合間には私の世代や、もう少し上の世代の皆さんの青春時代を彩ったアイドルの方々や、大人気のコーラスグループのライブが行われるなど、色々な楽しみ方がある、充実したイベントになっていると、いつもながら感心します。

そして、会場内の全てのクルマの中から最も感銘を受けた1台を、このイベントのエグゼクティブ・アドバイザー5人(横山剣さん、カーデザイナー中村史郎さん等)が選ぶのですが、光栄かつ恐縮にも、私もその1人ですので、悩みに悩んで選ばせて頂きました。

その発表は、昨年はイベント最終日の最後のコンテンツとして行われましたが、最後に発表ですと、賞典を受けたクルマの撮影や鑑賞が出来ない、という声が上がったため、今年は初日に発表、という事になりました。

私が選んだのは、日産レパードJフェリーというクルマで、この1993年登録のJフェリーは状態も良く、何とホイールとタイヤ以外は完全、オリジナルのままだそうで、壊れた所だけ直した、との事。しかもオーナーは22歳!の青年でした。

購入した動機としては、とにかくそのデザインに一目惚れしたそうで、写真を見てすぐに購入を決めたそう。普段使いから長距離ドライブまで、この1台でクルマライフを楽しんでいるそうです。

実は、このクルマ、私も1992年の発売と同時に一目惚れし、欲しかったのですが、周りにその事を言うと、「え?単なるオッサン用のセダンじゃん」などと言われ、その美しさを理解出来ない人が多いことに愕然としていました。細部のデザインは奇をてらっていないのですが、全体のシルエットが美しく、特に後ろに行くに従って下がっていくラインの美しさに痺れていました。

しかも、当時のCMのキャッチフレーズが「美しい妻と一緒です」。
当時は独身だった私は、将来結婚してこのクルマを買い、この台詞を言ってみたい!と本気で思っていました(笑)。

そんなクルマのデザインを現在22歳の青年が綺麗だと感じる事に自分のセンスは間違っていなかったと嬉しい気持ちにもなったのです。

これは選ばないわけにはいきません。更に嬉しい事にN2dの顔、横山剣さんも最後まで、このクルマを選ぼうか悩んだとの事。

とても和やかな笑顔溢れる表彰式になりました。

そして2日目の最終コンテンツは、この方もN2dには無くてはならない方、松田次生選手のマニアックで熱いトークショー!完璧に、このイベントを締めて下さいました。

  • 来年も楽しみにしています

ゲストの皆様も出展していたショップやメーカーの方々も、運営スタッフの皆さんも全員が終始笑顔になる、このN2d。来年も楽しみにしています。

これまで来場した事がない、という方、宜しければ、騙されたと思って、一度、お越し下さい!後悔はしないと思いますよ!

安東弘樹

MORIZO on the Road