フォーミュラE東京E-PrixがF1日本GPぐらい人気レースになる可能性

3月の下旬から4月上旬にかけて約2週間の間に、ここ日本でモータースポーツの世界選手権が2つ、行われました。

まず3月30日(土)。日本で初めてのストリートサーキット(公道を含む)による世界選手権 FIAフォーミュラE 東京E-Prix(東京ラウンド)が開催されました。フォーミュラEとは電気自動車のフォーミュラーカーによるレースで、10カ国、10の「都市」で16戦の選手権を11チーム22人のドライバーが年間チャンピオンを目指して競い合います。

東京ラウンドはフォーミュラEの歴史の中で初開催。電気自動車で競うため、大きなエンジン音と排気ガスが排出されない事から世界の「都市」で開催されている、という訳です。

私は今回、東京E-Prixのプロモーション用動画のナレーションとリポーターを務め、この歴史的な瞬間に立ち会えました。仕事自体は2日前に終わっていましたので、レース当日はグランドスタンドの客席からの観戦。私は同日に行われる予選から観たかった為、朝10時にはコースの中心に位置する東京ビッグサイト近くまで、自分のクルマで赴きました。

  • 都市部で開催、「新時代のモータースポーツ」という事を実感

そこで、あらためて、この世界選手権のレースが「新時代のモータースポーツ」という事を実感します。フォーミュラEは電気自動車のレースですので、それだけでも「新時代」と言えるのですが、理由はそれだけではありません。
これまでのモータースポーツの多くは都市部から離れた場所に位置するサーキットで行われ、公道を走るラリーでも都市部で開催されることは殆どありませんでした。

私は周囲の駐車場は早朝から満車になっているだろうと覚悟していましたが、周囲の商業ビルに、元々多くの駐車場がある上に、会場のビッグサイトには数々の公共交通機関でアクセスが可能で、恐らく多くの方が、それらを使って会場に足を運ぶのか、予選開始の1時間半前の午前9時の段階で会場近くの商業ビルの駐車場に停められたのです。

クルマをあっさりと停められた時には正直、来場者が少ないのではないかと心配になりましたが、現場に着くと「駅」の方から沢山の来場者が集まっており、安心しました(笑)。

まず、ここで「新時代」を感じる事になります。周りに高層ビルが建ち並ぶ「有明」という都市部の駅近くにレース場がある、という事を実感したのです。勿論、事前の取材で頭では理解していたつもりですが、実際に駅から来場者が直接、会場にアクセスできる、という事を目の当たりにしました。

今回、チケット自体は何と販売開始から2、3分で完売、という状況でしたが、実際イベントの種類によっては、チケットが売れても来場しない人が多い場合もあるので、当日になってみないと来場者数は未知数です。
しかし、当日の様子を見て安心しました。天気に恵まれた事もあり、決勝には完全に席は埋まっていました。

  • モータースポーツの裾野を広げる、意義深いレース

しかも、これも都市部開催ならではの利点だと思いますが、ビッグサイトの大きな室内会場をファンヴィレッジとして、チケットを持っていない来場者に無料で開放し、そこに設置されている大きなモニターを観ながらパブリックビューイングをする事も可能です。さらにリアルなシミュレーターやタイヤ交換経験が出来るブースなどが置かれ、それも無料で楽しめました。多くのキッチンカーも並び、様々なグルメも楽しめます。

そう、これまでのモータースポーツではチケットを持っていない来場者が楽しむ事は不可能ですし、モータースポーツの裾野を広げる、という意味でも意義深いレースであったと実感しました。

実は長男はモータースポーツが大好きなのですが、次男は少し敬遠気味になっています。というのも長男は幼児期から映像コンテンツなどを楽しんだ後に、小学校低学年の時にサーキットレースを初めて観戦したので最初から興奮気味にリアル観戦を楽しんだのですが、次男は事前知識も無く、4歳で、いきなりサーキットで生のマシンの音を聞き、完全に怯えてしまいました。

それ以来、「絶対にサーキットには行かない」という事になってしまったのです…。これは私の失敗なのですが、フォーミュラEが最初の生観戦でしたら、音に驚く事は無いですし、レース会場以外でも十分、楽しめますので、レース初観戦の方にも勧められます。

レースは2018年から参戦している、唯一の日本チーム、ニッサン・フォーミュラEチームのオリバー・ローランド選手がポールポジションから、正に激闘の末、2位表彰台を獲得し、大いに盛り上がりました。
最後の最後まで、優勝したマセラティMSGレーシングのマキシミリアン・ギュンター選手と接戦が続き、私と一緒に観戦したマネージャーも最後は立ち上がって声援を送っていました。

ちなみにマネージャーは、レース観戦は初めてで、ルールも全く知りません。予選から隣で私が説明をしながらの観戦でしたが、決勝は「十分、楽しめました!」と話してくれました。
フォーミュラEはエンジンのレースと違って音も静かで排気ガスの影響も無い為、客席とコースの距離が近いのも迫力を感じられる要因かもしれません。

  • どんな発展を遂げていくのか楽しみです。

今回、レース後に発表された来場者数は2万人、という事で、まだまだ他のレースなどと比べると多くはありませんが、始まったばかりの日本のストリートサーキットレース。これから、どんな発展を遂げていくのか。メディアの側としてもファンとしても楽しみです。

今回の日本GPには大満足!

そして4月7日(日)には今年から春開催となったF1日本GP決勝が、こちらは例年通り鈴鹿サーキットで行われました。

東京E-Prixと同様に天気に恵まれ、ちょうど見頃になっていた桜が咲き誇る中、決勝レースが行われ、今回は見所も多く、観戦したファンは満足したのではないでしょうか。

私は今回、仕事の関係で観戦には行けないどころか生ではテレビ観戦も出来なかった為、情報をシャットダウンして帰宅後に録画した放送を観る事になりましたが、多くのファンと同様に今回の日本GPには大満足でした(笑)。

レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手は盤石のポール・トゥ・ウィン。相棒のセルジオ・ペレス選手が2位。そして何と言っても予選でもQ3進出で10位スタートだった角田裕毅選手が見事なピットワークもあり、10位入賞で日本GP初のポイントを獲得しました。

特に、これまでピットにおける作業が遅かったり、そもそものストラテジーが悪い事も多く、角田選手が足を引っ張られている、というイメージのチームでしたが、 今回はピットワークも素晴らしく4台同時ピット・インという状況で最も早く角田選手を送り出したのです。

角田選手も無線で「Top Job!Thank You!」(最高の仕事を有難う!)と伝えるほど見事な作業でした。これまでの「アルファタウリ」から「ビザ・キャッシュアップRB」とチーム名も変わって、チームが生まれ変わったと思わせる様なピットワークです。

ストラテジーにも問題は無く、今回は角田選手のドライビングも含めチーム一丸となって勝ち取った貴重な1ポイントとなりました。このピットの模様はYouTubeなどでも多くの動画が上がっており、私もいまだに何回も観ています(笑)。

今年の日本GPは3日間で22万9000人が来場し、これは秋開催だった昨年より7000人ほど多かったとの事。決勝レースが行われた7日(日)だけでも10万人以上が来場し、あらためて日本におけるF1人気を確認出来ました。

東京E-Prixは予選、決勝が同日に行われますので、1日で2万人の来場者数。比べるとF1がかなりの差をつけている様に見えますが、東京E-Prixも2、3分でチケットが完売した、という事を考えると、今後の成長が楽しみです。

今後も東京の都心部で行われる東京E-Prix(来年は5月?)と三重県の鈴鹿サーキットで行われる予定の日本GP(来年も4月)。
そして富士スピードウェイで開催されるWEC富士(今年9月)、更には愛知県、岐阜県周辺で開催されるWRCラリー・ジャパン(今年11月)。4つに増えた世界選手権を同時に日本で楽しめる今年から来年に掛けては正に贅沢な状況です。

見事に種類の違うモータースポーツを、それぞれ日本で楽しめる事に感謝して、全てを現地で観戦するのは価格的にも厳しいですが…、テレビなどでも共に楽しみましょう!

安東弘樹