オートモビルカウンシルはマニアックで大人な雰囲気、でもファミリーも楽しめる…安東弘樹連載コラム

去る4月12日(金)~14日(日)幕張メッセにてオートモビルカウンシル2024が開催されました。

オートモビルカウンシルとは、2016年から開催されている、言うなれば、ヘリテージ・カーの自動車ショーで、今回の開催のテーマは「クルマを超えて、クルマを愉しむ(クラシック・ミーツ・モダン・アンド・フューチャー)」。

内容としては、国内外メーカーの新型車やヘリテージカーが実際に展示、「販売」され、音楽ライブやトークセッション、自動車関連の部品、グッズや雑誌などの商品も売られているのが特徴です。

規模はJMS(ジャパン・モビリティーショー)やTAS(東京オートサロン)など他の自動車ショーと比べると小さいのですが、とても落ち着ける、大人のイベントと言っても差し支えないでしょう。しかも音楽ライブの時以外は会場に音楽も流れていませんし、イベント・コンパニオンの方も居ません。

私は2日目の土曜日に赴いたのですが、会場を歩くのに人垣をかき分けて、という状況でもなく、小さなお子さんが、じっくりと自分の好きなクルマの写真を撮っている姿を度々、見かけました。

ちなみに今年の来場者は3日間で約4万人と過去最多となり、出展社数も昨年の109を上回る113社と、こちらも過去最多。着実に育っているこのイベントですが、本音を言えば、この規模感と、この落ち着きは変わらないでいて欲しい、と思う私もいます。

そして、展示内容が実はとても充実しているのが、このイベントの特徴で、今回の会場中心には、「アイルトン・セナ没後30年特別企画」の展示が鎮座していました。

  • アイルトン・セナのレーシングスーツとヘルメット

  • アイルトン・セナのドライブした1985 JPS ロータス 97T ルノー

1994年に亡くなった伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナのレーシングスーツとヘルメットは勿論、彼がドライブした「1991マールボロ・マクラーレンMP4/6 ホンダ」「1990マールボロ・マクラーレンMP4/5B ホンダ」「1985 JPS ロータス 97T ルノー」の3台が展示されており、多くのファンが撮影をしていました。ただ、皆が譲り合っての撮影、という光景が見受けられ、本当に気持ちの良いイベント、という印象が各所で見られます。

  • マルチェッロ・ガンディーニがデザインした、マシン達

更には今年3月に亡くなった、こちらも伝説的カーデザイナー、マルチェッロ・ガンディーニがデザインした、傑作車5台(ランボルギーニ・ミウラP400、ランボルギーニ・カウンタックLP400、ランチア・ストラトスHFストラダーレ、ディーノ308gt4、ランボルギーニ・エスパーダ・シリーズ2)が主催者展示、という形で陳列。
急遽、決まった展示とは思えない名車5台が、会場に華を添えていました。

  • ALVIS 3.0L グラバー スーパーカブリオレ(コンティニュエーション・モデル)

更には国内外メーカーの、ヒストリックカーと最新車両の並列展示も見応えがあり、決して広大ではない会場の、何処を観ても溜息が出るようなクルマばかりで、眼と心が忙しい、という贅沢な状況です。

しかも前述しましたが、特別展示のクルマはともかく、日本初上陸ALVIS(アルビス)グラバースーパーカブリオレが7200万円!で売られていますし、基本的に展示車の多くが販売されているのです。

  • フェラーリ360モデナ

私が個人的に気になったのは1999年式フェラーリ360モデナの6速MT!価格は1068万円。一瞬、「こんな価格で買えるのか?!」と驚きましたが、勿論「これ下さい!」などと気軽に言えるモノではないので、ショップの方に詳しく伺いました。
ミッションなどはオーバーホールしてありますが、現オーナーから預かって、この会場で売っている、との事で正直、全体的に状態を完全把握している訳ではない、とのこと…。

参考までに、このフェラーリを売っているショップの目の前で三菱のランエボ最終モデルが、ホイールにはかなりの傷が付いている状態で、1100万円で売られており、様々な意味でヘリテージカーには、まだ私は手が出せないと、実感したのでした。

私は所有車を毎日のように仕事でも使いますので、ガレージに眠らせておく、という概念はありません。そう、毎日、運転してこそのクルマ、という気持ちが変わらない限り、ヘリテージカーを所有する資格は無いのかもしれません。

勿論、この会場で販売されているクルマの中には「毎日、乗れます」というモノもありますが、自分で新車から育て、良い状態のまま次のオーナーにお渡しする、というこれまでのクルマとの付き合い方を暫くは続けようと思いました。

しかし、このイベントを観ると、今のクルマには無い魅力に満ちたクルマの、なんと多い事!という気持ちにもなるので、クルマ、というのは中々やっかいなモノではあります(笑)。

  • BMW M6/ALPINA B9 3.5

他に気になったのは1985年式ALPINA B9 3.5。勿論MTモデル!私はかつて、B3というモデルのカブリオレMTモデルを3台、乗り継いだ事がありますが、MTモデルがALPINAから消えて以降は離れてしまいました。それだけに強く惹かれましたが、このクルマは「参考出品」という事でしたので一安心(笑)、悩まなくて済みました。

それにしても今のクルマにはないスクエアなボディーに、これも今のクルマにはない装備のヘッドライト・ワイパー!泣かせるポイントが満載でしたが、購入できないので、これは仕方がありません(笑)。

グッズ販売に飲食も充実

そして、様々なグッズの販売も充実しています。TAMIYAのブースには様々なプラモデル。他にもミニカー、パンフレット、ポスター、ファッショングッズ、キーホルダーの様な小物まで自動車関連のモノが何でも揃い、クルマそのものだけではなく、会場に展示しているモノの多くを購入できますので、お財布の管理には気を付けた方が良いでしょう。

買い過ぎには注意です。

  • 私はロータスのキーホルダーを購入

ちなみに私は愛車のロータス・エリーゼのキーに付けている純正のキーホルダーの革の一部が少し切れていたので、完全に壊れた時の替わりになる、同じく本国の販売店純正のキーホルダーを購入しました。

ショップの方に「良い買い物ですよ!もう、純正では、こういうキーホルダーは作りませんから」と言われ、ちょっと嬉しかった事をお伝えしておきます。

更に今回は飲食のショップも充実していた事も嬉しいポイントでした。基本的にはフードトラックによる飲食の提供で、会場内ですので火は使えない中でのメニューでしたが、種類も多く、帰宅して夕食を食べると、妻に言っていたので、断腸の思い?で紅茶とお洒落なアイスクリームのみにしておきました(笑)。

会場内のショップ前に、しっかりと座れる席も確保されており、ゆっくりと座って、展示されているクルマを観ながら食べるアイスは格別です。こんなところも他の自動車イベントとは一線を画す雰囲気でした。

オートモビルカウンシルを主催している、株式会社カーグラフィック代表取締役の加藤哲也さんは「日本に自動車文化を根付かせたい。との想いで、このイベントを立ち上げた」と、仰っています。そういう意味では、加藤さんの想いの通りに成長を遂げているイベントだと今回、深く感じました。

何か偉そうに申し上げましたが、これには理由があります。ジャパンモビリティーショーも東京オートサロンも勿論、楽しみなイベントではありますが、実は私、個人としてはヒストリック2デイズや、このオートモビルカウンシルの様なマニアックで小規模のイベントの方が好みではあるのです。特に、このオートモビルカウンシルは、「地に足が付いている」という表現が、ピッタリくる雰囲気で、大人のイベントではあるものの、ファミリーでも楽しめる懐の深さが、一ファンとして嬉しい限りなのです。

これまで行ったことがない方にも間違い無くお勧め出来るイベントですので、来年以降、是非足をお運び下さい!

安東弘樹