思いやりを持って、気持ち良くクルマを利用しましょう・・・安東弘樹連載コラム
自宅の近所に中型のショッピングモールがあります。
駐車場は屋外の、いわゆる平面駐車場で、敷地は割と広く完全に満車になっているところは見たことがありません。
そのモールのメインとも言えるスーパーマーケットの入り口近くには障がい者のための国際シンボルマーク(以下、車椅子マーク)が描かれた優先駐車場が5台分、設置されています。
青色のマークの場合は車椅子利用者だけでなく、すべての障がい者の方が利用できるエリアなのですが、スーパーなどの私有地では、施設管理者が利用者を個別に定めているケースが多いそうです。
車椅子マークの駐車枠は、車椅子を使っている方が乗降しやすい様に、駐車枠の両側には十分なスペースが確保されており、その駐車枠に停めれば、クルマに乗っていたドライバーが車椅子の方、1人だけだったとしても、ゆっくりと乗り降りが出来るようになっています。
車椅子を使っている方の場合を考えてみましょう。
1人でクルマから降りる時は、まずドアを開け、車椅子をクルマから出し、その車椅子に上半身の力だけで乗り替え、ドアを閉めて、お店に向かいます。慣れている方でさえ、それなりの時間が掛かると思います。
乗る時は逆の手順でクルマに乗り込むので、やはり時間が掛かるのです。しかも開ける方のドア側は基本的に全開にしますので、十分なスペースが必要です。
ですので、優先枠でなければ、クルマを停めるのは実質不可能なのです。もしクルマを駐車場に停める時に、普通の駐車枠が2つ空いていて自分が座っている側のドアの隣にクルマが停まっておらず、その場所に停めたとしても、いざ帰る時に隣にクルマが停まっていたら、もう自分のクルマに乗り込むことは、隣のクルマが出庫するまでは不可能です。
ですから公共施設やショッピングモール、また空港や駅の駐車場には車椅子マークが付いた優先枠が、入り口や出口の近くに設置されているのです。
「そんな事は言われなくても分かっている」という方は多いでしょうが、何故、わざわざ、こんなことを今回、お伝えしているかといえば、自宅近くのショッピングモールの優先枠に、頻繁に優先枠が必要でなさそうな方の車が停まっているからなのです。もちろんクルマだけを見て判断することはできません。そういう光景をみた時には、本当に悲しい気持ちになります。
「短い時間だから、良いだろう」「5台分もあるのだから、自分1台位は良いだろう」「実際に車椅子の人は、そんなにいないだろう」等、どういう気持ちで、そこに堂々と停められるのか私には理解出来ませんが、恐らく軽い気持ちから、なのだと思いますが、もし、その様な気持ちで停めているのだとしたら、全てが間違いと言えます。
それこそ駐車場の通路上にクルマを停めるのは不可能ですので、その優先枠が空くまで、駐車場の中を回って待つしかありません。
実は、車椅子を使っている方は約200万人、見た目だけではわかりにくい内部障がい者の方は約107万人。優先枠を必要とする方は300万人以上います。
これは日本で最も多い名字の「佐藤さん」(およそ185万人)より多いのです。皆さんの職場や学校にも「佐藤さん」や2番目に多い「鈴木さん」は身近に、何人かいらっしゃると思います。
ですから、自分が停めようとしている駐車場に、優先枠を必要とする方が来る可能性は、思ったより高い、と考えた方が良いでしょう。
運転している方だけでなく、そのクルマに1人でも優先枠を必要とする方が乗っている場合、優先枠でなければ乗り降りが出来ない、ということがあると思います。
ましてや空港や駅の駐車場では、その後に飛行機や鉄道などに乗り替える可能性が高く、時間も決まっている為、まさに優先枠にクルマを停められるかどうかは死活問題なのです。
優先枠が施設の入り口に近いかどうかも大切ですが、それ以上に優先枠を必要とする方が物理的に乗り降りが出来るのは、そこだけという認識を持って、譲る必要があるのです。
しかも本当に残念なのは、優先枠以外の駐車場所も十分、空いているのに、わざわざ優先枠にクルマを停める人さえ存在する事です。
歩いて移動できるのに、そんなに施設入り口に近くないと嫌なのでしょうか?
また、これは知人に聞いた話ですが、子どもと一緒の家族連れでクルマを優先枠に停め、子どもが車椅子のマークを見て「これ何の絵?」と訊いているのに、親は「何でも無いよ」と言ってショッピングモールに消えて行った人がいたそうです。
その家族4人は全員、車椅子を使っていません。
見た目だけではわかりにくい内部障がい者の方がいて、優先枠に止めていたのかもしれませんが、「何でも無い」マークではないので、教えるべきだったと思います。
そのお子さんの将来が心配です…。
国家資格である自動車運転免許を取得して、公道で車を運転する、ということは大きな責任を背負っている、ということです。
運転、というのはクルマを操作するだけでは無く、所持や運用、勿論、駐車にも責任が伴うのは言うまでもありません。
そして、ルールやマナーを守るのは大前提として、他者、これは他のクルマ(他車)に対して、だけではなく自転車や歩行者など、全てに対しての思いやりがあってこそ、健全な道路状態になるのだと思います。
その「思いやり」という意味では、他にも悲しい光景を見る機会が最近、増えてきました。
それは高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、また一般道沿いにある「道の駅」などで車種別の駐車場所を守らない車両(ドライバー)を見た時です。
自宅から比較的近い、ある高速道路の、あるパーキングエリアは入り口に近い手前に大型トラックやバスの駐車枠。その横に「トレーラー枠」そして奥が乗用車枠になっています。
しかし手前の大型車枠に、いつも、かなりの数の乗用車が停まっているのです。
奥の乗用車枠が満車かどうかは、手前からでも見て分かりますし、路面や看板には、しつこい位に分かりやすく、「ここは大型車。普通車(乗用車)は奥」との表示がありますので、見落とすとは考えられません。当然ですが、手前の大型車枠やトレーラー枠が満車で、一度奥に入ったら、乗用車枠に大型車は停められませんので、パーキングエリアを出るしかありません。そういうトラックやトレーラーを何度か見た事もあるのです。
その度に申し訳ない気持ちになります…。
もしかしたらトイレに行きたかったかもしれませんし空腹に耐えながら運転してきて、やっとパーキングに停められる、と思って入ったのに出ざるを得なかったかもしれません。
心から問いたいです。「何故、わざわざ手前の大型車枠に停めるのか?」。
自分が、その枠に停める事によって、困るトラック、トレーラーのドライバーの方がいる、という事を考えないのか?
ちなみに多くの時間帯で、そのパーキングエリアは手前の大型車枠の方が混んでいて奥の乗用車枠の方が空いています。
是非、思いやりを持って駐車枠を守って頂きたいと切に願います。
思いやり運転を楽しむ
ちなみに、そのパーキングエリアには電気自動車用の充電器が一つ有りますので、自分のクルマの充電をする事も多いのですが、これも驚く事に、非電気自動車が停まっている事が時々、あるのです。
百歩、いや千歩譲って、その充電スポット以外が満車になっている、という状況なら、まだ理解出来ますが、他も十分に空いているのに、わざわざ、そこに停まっているクルマを見る時は膝から崩れそうになります。
ある時、その充電スポットにエンジンのクルマをアイドリングさせたまま停め、車内で電話をしているドライバーがいたので、流石に合図をして移動してもらいましたが、手で合図を返す訳でも頭を下げる訳でも無く「めんどくせえな~」という感じで、クルマを移動させていきました。
そういう時は本当に悲しい気持ちになります。
駐車時にもお互いに思いやりを持って譲り合い、気持ち良くクルマに乗りましょう!
思いやりを持ったドライバーの方に遭遇すると、本当に一日中、良い気分で過ごせる時さえあります。そして自分も、そうありたい。と強く思います。
すると交通環境も良くなって事故も減ってくるはずです。
私も肝に銘じて、免許返上するまでは、これからも思いやり運転を楽しんでいきたいと思います。
安東弘樹