大盛況なラリーファンミーティングで感じたこと…安東弘樹連載コラム


先日、富士スピードウェイP2(駐車場)にて第二回ラリーファンミーティングが行われました。

私はMCを担当させて頂いたのですが、元々、ラリーが好きな私にとっては格別なイベントで勿論、仕事は全うしましたが、純粋に楽しんでしまいました。

そしてMCの相方は御自身がコ・ドライバーとしてWRCのラリージャパンを含めて多くのラリーに参戦している、元SKE48の梅本まどかさん。

梅本さんとは2018年~2020年頃にWRCラリージャパン招致応援団員として共に活動して以来、クルマ関係のイベントなどで、御一緒する事はありましたが今回は初めて、MCを共に担当することになりました。
流石、アイドル時代に多くの舞台に立っているだけの事はあります。とても頼もしい司会ぶりで、お陰様で私も安心して楽しくイベントを仕切る事ができました。

コンテンツとしては、現役でありながら日本のレジェンドラリードライバーである、新井敏弘さん、奴田原文雄さん、勝田範彦さん、柳澤宏至さんらによるトークショーや、それぞれの選手がドライブするラリーカーの同乗走行など、ラリ-ファンにとって、私と同じように夢のような時間だったのではないでしょうか?

トークショーでは、それぞれ息子さんが同じくラリ-で活躍している新井さん(ご長男、大輝さん・今年の全日本ラリ-選手権、最終戦を残し、チャンピオンに)や勝田さん(同、貴元さんWRCに参戦中のドライバー)の二人の親子秘話なども含めて、大いに盛り上がりました。

新井さん曰く「レースと違ってラリーはタイムトライアルだから、変な確執も生まれないし、ドライバー同士、お互いに仲が良いんだよ」との事。その言葉通り、ボケとツッコミの応酬で、終始笑いが絶えないトークショーとなりました(注・サーキットレースのドライバー同士の仲が悪い、という訳ではありません。笑)。

2回目のトークショーでは、11月に迫ったWRCのラリー・ジャパンについての想いなども伺い、お客様のラリー・ジャパンに対する期待を盛り上げて下さいました。

そしてトークショーの前後には同乗走行のドライバーとして、真剣に、しかし同乗者には優しく接しながら、その華麗なドライビング・テクニックを存分に披露し、同乗したお客さんに、少しの恐怖?と最大の歓びを提供するあたりは流石です。

同乗走行に参加した、お客様は本当に楽しんだ様で、皆さん、興奮して満面の笑みでクルマから出てこられていました。

皆さんが、それぞれレジェンド級の戦績を収め、長きに渡って、日本のラリーシーンを牽引してきたドライバーが操るマシンに乗れる訳ですから楽しくない訳がありません。

特に新井さんは今のWRCラリー2に相当する、かつてのPWRC(プロダクションカー世界ラリー選手権・市販車に近いクラス)クラスの世界チャンピオンに2度(2005年、2007年)輝いているドライバーです。その新井さんも含めて、ずっとライバルとして戦ってきた勝田さん、そして柳澤さん(奴田原さんは諸事情により、今回の同乗走行は不参加)、更に期待の若手ドライバーや女性ドライバーが駆るラリーカーの同乗走行に参加することで、あらためてラリーの迫力を感じたお客様は沢山、いらっしゃったと思います。

ちなみに新井さんは当初予定の人数を締めきった後にも追加で数人のお客様を乗せ同乗走行をして下さいました。頭が下がります。

そして多くの協賛企業や出展企業からたくさんの賞品を御提供頂き、その商品争奪の「じゃんけん大会」を私と梅本さんで担当し、沢山のお客様に賞品を持って帰って頂きました。
あらためて協賛、出展企業様にも感謝です。

朝は強く降っていた雨もお昼には上がり、午後には快晴となっていました。

その陽を浴びる、貴重な往年のラリ-カーも展示されており、基本的に写真撮影は自由にできましたので、凄いカメラを持って熱心に撮影しているファンもおり、実際に現在、参戦している各カテゴリーのラリーカーも含めて、どちらを見てもラリーファンにとっての「映える」写真を撮り放題、という状況でした。

イベントにお越し頂いた皆さんは終始、笑顔で、皆さんがラリーを愛している雰囲気が素晴らしく、私に声を掛けて下さる方も、暖かい方ばかりで、有難い言葉を沢山、頂きました。
改めて御礼を申し上げます。

モータースポーツを盛り上げたいと改めて思いました

気になった事も無くはありません。
有料イベントとは言え、来場して下さったお客様の人数は、正直、私のイメージより少ないと感じました。

  • ラリーは本当に素晴らしいモータースポーツです!

広い会場(駐車場)ではありましたが、常に余裕をもって移動出来ましたし、数台設置してあったキッチンカーは昼時でも、長い行列ができるほどではありませんでした。

まだ2回目の開催ですし、周知が十分であったとは思えないので、これからのイベントだとは思いますが、ゲストの顔ぶれやコンテンツを考えると、もう少し注目されても良いのではないか、というのが正直な感想です。

日本のモータースポーツ人気は欧米と比べて少々寂しいからこそ、もっと盛り上げたいと常々、発信してきましたが、今回も、その気持ちをあらたにしました。

日本では、まだまだとは思いますが、サーキットレースの方は、それなりに集客もありますし、有名なドライバーも、いらっしゃいます。

しかし、ラリ-の方は、熱狂的なファンは少なくないものの、モータースポーツファンの中でも、あまりラリーの事は知らない、という方も多いと思います。

勿論、私の様に両方とも好き、という方もいらっしゃると思いますが、少なくとも私の周囲で申し上げると圧倒的にサーキットレースのファンの方が多いイメージです。

実際に私の長男も、世界中の、あらゆるサーキットレースを網羅して情報を入手していますが、ラリーには、あまり興味が無いようで、理由を訊いてみると、やはり車同士が競い合わないので、見ていて良く分からない、という答えが返ってきました。

それに対して返す言葉がありませんでしたが、特に、自分で車を運転しない人にとっては、目の前で競い合いが無いと楽しみ方が分からない、というのは理解出来ます。

欧州でラリーが人気なのは「運転するのが好きな人」自体が多いというのが理由なのだと分かった様な気がします。

ラリーカーのオンボードカメラ映像を見ると、自分が運転好きの立場ですと、そのテクニックや勇気が、いかに特別なものかが理解出来ますし、その一部でも、自分の運転に生かしたいと思えたりしますが、まだ運転免許を持っていない長男からしたら、競いながらオーバーテイクし合い、時にはピット作業で順位が変わってしまうサーキットレースの方が、手に汗握り楽しめるのは当然です…。

自分が運転するようになったら、楽しめるとは思うのですが、自分の周囲に、余程のラリー好きがいない限り、大人になってからラリーファンの世界に入る人数が限られるのは容易に想像出来ます。

私が個人的に思うのはラリ-ファンが増えるかどうかは普段から運転が好き、という人が、どれだけ増えるか、だと思っています。

残念ながら、今の日本では多くのクルマが移動の手段として、楽に運転出来るか、人や物を、どれだけ効率的に運べるか、更に、どれだけ快適に車中泊が出来るか、など、運転そのものを楽しむ、というより道具として如何に優れているか、という観点のクルマが重宝されています。

それが悪いという訳ではありませんが、運転する楽しさがプライオリティの上位になっていない日本は、軽自動車のトールワゴンが最も販売台数が多いという特殊な市場であるのは確かです。

それは今後も劇的に変わらないとなると、純粋にラリーを「観ているだけで楽しめる」というコンテンツにする必要があります。

私としては、某人気自動車漫画から着想を得たのですが、全ての出走マシンに追尾ドローンを付けて、リアルタイムでの走行映像を配信し、バーチャルでマシン同士が競い合っている様な映像を常に再現する、など、見てすぐ、誰と誰がトップレベルで競い合っているかを可視化する様な工夫が必要だと思っています。実際に、その様な映像は今でも、あるにはありますが、常、ではありませんので、コストや安全面など解決しなければならない課題が多いのでしょう。

しかし、ラリーが、もっと身近に楽しめる様になるためには、さまざまな工夫が必要だと今回のイベントにかかわって、あらためて感じました。

ラリーは本当に素晴らしいモータースポーツです。

まだラリーを観た事がない、という方は、ぜひ一度、まずは映像でも構いませんので、観てみて下さい!

最後に、WRC最高峰のラリー1のカテゴリーのマシンは2022年~ハイブリッドのパワーユニットになりバイオ燃料を使う事で環境にも配慮して行われている事を補足して今回は終らせて頂きます。

安東弘樹