日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025決定…安東弘樹連載コラム

去る12月5日(木)日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025(以下COTY)が発表され、同日、表彰式が行われました。

今期のCOTYはHONDAのフリードに決まりました。

COTYの公式サイトでは「5ナンバーサイズで3列シート。日本市場で重用されるファミリーカーゆえ、これまでは突出したキャラクターを生み出しづらかったことも事実。ホンダはそこに切り込んだ。居住性、使い勝手の良さに磨きをかけるとともに、動的質感の向上、ひいては操縦の喜びをも加味することに成功した。ガソリンエンジンモデルに加え、ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」を加えたことも大きな魅力のひとつ。ホンダが大切にしているM・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想を見事現代に体現した1台である。」と受賞理由を発表しています。

そして
インポート・カー・オブ・ザ・イヤーはBMW MINIクーパー
デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーは三菱 トライトン
テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーはHONDA CR-V e:FCEVが、それぞれ受賞しました。

意外にもHONDAのCOTY受賞は14年ぶり、という事で、あらためて、おめでとうございます!

と言ったものの、実は私、、このフリードは10ベストカーにも選ばなかったので、正直、バツが悪かった事を正直に、お伝えします。(苦笑)

これで私がCOTYに選んだクルマが実際にCOTYを受賞しない、という記録が8回連続となりました、、、選考委員になってから、ずっと、です。(笑)

では、何故10ベストカーにも投票しなかったかといいますと、それには理由があります。
フリードのメーカー主催の試乗会の拠点は、みなとみらいのイベント施設で、そこから神奈川県内の首都高を通る試乗コースが推奨されていました。

当日は風も吹いていて。ミニバンには、良い状況とは思えませんでしたが、クルマの安定性に自信があって、「敢えて」ここを拠点に選んだ可能性も否定できない為、ある意味、期待して試乗に臨みました。

実際に試乗してみると、ボディの形状上、仕方がないものの、ベイブリッジや他の高架上の首都高速道路上で、横風に煽られたりしました。
首都高速への合流時、本線を走るハイペースのクルマに合わせて加速する時に電気式無段変速機(基本的にはCVT)の影響か、ハイブリッドのクルマでしたがエンジン回転が上がりエンジンは唸るものの、それに加速がついていかなかったのを覚えています。

風も強かったので、すばやく合流したかったのですが、アクセルを完全にベタ踏みの状態にして、やっと合流できたという状況でした。

エクステリアデザインや室内の使い勝手、コスパなどは素晴らしいと思うのですが、やはりミニバンの存在意義として最も大きいのは、家族を安全に運ぶ。という事だと思いますので、この時の横風に煽られた事と合流時に素早く加速出来なかった事が記憶に残っており、10ベストカーを決める時、票を入れられなかったのです。

もし、試乗会の会場や天候が違っていたら私の印象も変わっていたかもしれませんが、やはりCVTのクルマの運転感覚は好きになれない、というのは否定できません。

決してフリードが危険なクルマ、という意味ではありませんし、その後、あらためて通常の道路環境で乗ってみた時には、かなり快適に走った事もお伝えしておきます。

ちなみに今回、10ベストカーに選ばれたクルマの中で本体価格が200万円台なのは、SUZUKIのフロンクスと、このフリードだけで、その2車種もオプションと諸経費を入れると300万円に届きはしますが、他のクルマは実質500万円以上(MINIは本体価格は基本500万円以下ですがオプションを選んでいくと気付いたら500万円前後)というラインアップでした。

選考委員の中には、「毎回、一般の方が現実的に購入出来るクルマをCOTYに選ぶ様にしているので今回は迷いながらもフリードにした」という方もいらっしゃって、それは、ある意味理解出来ます。

ただ、個人的には新車で購入するという前提ではなく、将来、中古車になっても色褪せなければ、新車価格がある程度高価でも評価しても良いのではないか、というのが私の考えです。

私のCOTY

その上で、私が今回COTYに選んだのは
三菱トライトンです。

  • デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー 受賞 三菱・トライトン

選考理由は
「刷新されたフレーム・シャシーによってオフロードでのタフな走りとオンロードでの乗り心地の良さを、それぞれ高い次元で具現化した事を評価。乗員に優しい装備も満載です。大きな体軀はユーザーを選ぶものの、ピックアップトラックとして使える道具でありながら、その無骨なデザインは都会にも馴染む洗練さも持ち合わせています。逞しいパワーユニットにも好感を持ちましたが、この様なクルマを評価できる時代は終焉に近づいているかもしれません。それだけに今の時代に爪痕を残すクルマとして選びました」

としました。
試乗会の時、最もハードなモードを選ばなくてもオフロードコースを難なく走りきり、オンロードでも、信じられない安定感で乗り心地も良かったのです。

災害の多い日本で、快適な上に、これほど頼もしい相棒は他を探しても見当たりません。
確かに全長は5.3mを超え、価格も上位グレードは540万円を超えています。

所有するには現実的では無い、という方もいますが、都市部ではともかく、少し都心から離れれば、(実際に私が住む千葉市でさえ)駐車場所に困らないユーザーも少なくないと思います。

実際に試乗会では、多くのジャーナリストが「絶賛」していました。

それだけに「トライトンに最高点の10点を付けたのは安東さん1人です。」と発表された時は「マジで!」と思わず声に出た程、驚きました(笑)。

え?あの絶賛の嵐は、何処へ…。

コスパで考えてもトライトンは群を抜いていると私は思っているのですが、蓋を開けてみないと分からないものです。

10ベストカーで比率が高まるBEV

クルマは命を運ぶもの、だと常に考えている私としては、基本的に骨格が丈夫で、緊急時にも咄嗟の運転操作に瞬時に反応してくれるクルマを選ぶ傾向があります。

実は電気自動車(BEV)が、これに該当する場合も多いので、BEVも高く評価しているのです。

電気自動車は危険、という方がいますが、実際にアメリカの保険見積もり比較サイトの調査によると、アメリカにおいて10万台当たりの自動車火災発生件数は圧倒的にBEVが少ないのです。
(10万台当りの火災発生件数・ハイブリッド車、約3474件。ガソリン車、約1530件。EV約25件)

日本で、これほど「EVは燃える」、というイメージが定着した理由は、分からなくはありませんが、最近の正確なデータを知っているジャーナリストによって、今回も輸入車を中心に10ベストカーに4台(MINIはBEVとガソリン両方)のBEVが選ばれました。

評価にあたって

BEVも嫌いではない私ですが今回は、将来へ、今の時代の「爪痕」を残す意味でもマイルドハイブリッドでもない、ディーゼルエンジンのトライトンを選んだのです。

ディーゼルといっても、音や振動は、しっかり「存在」するものの、排ガスのクリーン化など、三菱も最大限、環境には配慮しています。

高速走行時は燃費もかなり良いですし、このクルマで何処か遠くへ旅に出る。想像しただけでワクワクしませんか?!

ちなみに私、デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーには内外装のデザインが文句なく洗練されているBMW MINIを選び、テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーにはBEVでありながら途方もない動力性能と、エンジンの痺れる音も楽しめるHYUNDAIのIONIQ5 N
を選びましたが、これも見事に受賞車と違いました(笑)。

どうも私は「独自」の視点を持っているようです…。

ですが、今回も自信を持って、全ての賞を選ばせて頂きました。

特に今回は完全に「悔い無し」です!

さて皆さんにとってのCOTYは、どの車でしたか?

安東弘樹

MORIZO on the Road