三菱「アウトランダーPHEV」、2024年大幅改良で私の気になっていたことが改善…安東弘樹連載コラム
先日、新型三菱アウトランダーPHEV(以下アウトランダー)の試乗会に参加して来ました。
このコラムでは一車種の試乗インプレッションを紹介する事は希有なのですが、この車は私が日本カー・オブ・ザ・イヤー2021-2022(この年、アウトランダーはテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーに選出)のイヤーカーに選んだクルマでしたので、思い入れも強く、10月の大幅改良が素晴らしかったので、取り上げさせて頂きます。
大幅改良された新しいアウトランダー
アウトランダーは2021年のフルモデルチェンジを機にPHEV(プラグイン・ハイブリッド)のみのラインアップになり、これは日本で唯一のPHEV専用車という事になります。
私がCOTYを選ぶ際には経済的な事は別にして、自分が購入して幸せになれるか、運転していて楽しいか、という基準で車を選びます。私はステイタスシンボルとしての車には興味が無いため、高額なだけの車には魅力を感じません。
また人が沢山乗れるか、荷物を沢山詰めるか「だけ」でも評価できません。どんなに同乗者が快適に感じてもドライバーが快適に楽しく運転出来なければ、それは安全にも関わってくると思っています。
その基準で考えて2021-2022のCOTYにはアウトランダーを選んだのです。
当然、私の基準で選んだ場合、予算内であれば実際に購入したいと思っていて、実際に別の年にCOTYに選んだプジョー208(私は、その中でもBEVのe-208)を購入しています。
毎年、車を買い換えるわけにはいきませんので、COTYに選んだクルマ全てを購入する事は不可能ですが、アウトランダーは実際に購入する手前までいったのです。
唯、その時のアウトランダーはバッテリー容量が20 kWhで、モーターのみで走れる距離はカタログ値で80 kmほど。実際には60 km程でした。更に私には必須のシートベンチレーションが非装備でしたので、薦められる車ではありましたが、自分の愛車としては、どうしても譲れない所があり、購入には至りませんでした。
当時の試乗会の時にもメーカーの方に、その旨を伝えた事を覚えています。
そして今回の大幅改良で変更点を注目していたら、何と私が譲れなかった部分が全て改良されていたのです!
バッテリー容量は13%アップの22.7 kWhに。シートベンチレーションは運転席、助手席に装備、更にこれも私にとっては地味に?必須の開閉可能なガラスパノラマルーフもオプションで選べる様になりました。
しかも、これは大幅改良前からでしたが、アウトランダーは後席のシートバックが6:4で分かれて倒せますが、真ん中の部分の上半分だけを倒せる様になっており、4人乗った状態で長い物をシートバックの上部を通して入れる事が可能なのです。
普通の6:4の分割シートだと4人乗車でも6:4の4の部分を倒して長物を入れる事は法規上は可能だとしても、実質、後部座席に2人乗るのは難しく、更に真ん中に長物を入れる場合と違い、助手席か運転席のシートバックと干渉するため、長さに制約も出てきます。
その為、多くのドイツ車、スウェーデン車、イギリス車などは4:2:4と3分割で後部座席のシートバックが倒せるのです。
以前、某日本メーカーの方に、「何故日本メーカーの車は6:4分割が殆どなのでしょうか?」と伺ったところ、そのメーカーの方曰く、「3分割と2分割ではコストが大幅に変わってくる」という事でした。
勿論、コストが違うのは分かります。唯、500万円を超える様な価格帯のクルマの場合、コストが多少上がっても、さほど影響はないのではないかと更に訊いたところ、その方曰く、「500万円のクルマでもクルマ全体の剛性にも関わってくる為、後席シートバックを3分割にするだけで売値を50万円ほど上げなければならないかもしれません。」とのお答えでした。
それには私も驚いて、「勝手な事を申し上げてしまい、失礼しました。」と思わず謝ってしまった程です…。
コストの制約の中でクルマを造る、というのは本当に大変なのだなと、その時は痛感しました。
しかしアウトランダーは、それを2分割のまま、真ん中の上部だけを倒せる様にする事で最小限のコストアップで利便性の確保に成功したという事です。
何という企業努力でしょうか。
結果、アウトランダーは私の細かい指摘?を全てクリアした状態での大幅改良となったのです。
では実際の走りはどうだったかと申しますと、これも私の好みと完全にマッチしたものでした。
いざ、試乗
今回の試乗は大磯プリンスホテルの駐車場を拠点に西湘バイパスや箱根新道を走る、というコースで行われました。試乗を始めた時のバッテリー残量は70%ほど。
有料道路が殆ど、という比較的ペースが速いコースかと思いきや、西湘バイパスが片側交互通行になっており、急勾配のだらだらとした登り坂の状態で渋滞が続いていました。
電動車にとってもかなり不利な状況です。唯、アウトランダーのバッテリーは今回、改良されており充電スピードも速くなった上、充放電効率も上がった為か、想像よりも電気の減りは穏やかです。
車線規制区間を抜け、上り坂をペースを上げて走り始めると、バッテリー残量は流石に減り始めました。しかしモーターだけで走り続け、エンジンが掛かる事はありません。一般的なハイブリッド車でしたら、確実にエンジンが唸っているでしょう。
アウトランダーはモーターの僅かな音だけで、とにかく力強く上っていきます。
箱根新道を上りきった時にはバッテリー残量は22%に。そこからUターンして引き返したのですが、ここからがPHEVの真骨頂。下り坂を、回生量を調節出来るシフトパドルを駆使して減速スピードを調整し、殆どブレーキペダルを踏まずに降りてきました。
箱根新道を降りきった時のバッテリー残量は32%まで増えていたのです。
その後、西湘バイパスを快走して大磯プリンスホテルに戻った時には、バッテリー残量は20%になっていました。
結果、40 km弱の行程でエンジンは一回も掛かる事なく、試乗を終えました。
正確に申し上げると、エンジンの素性も知りたかったので、一度、パワーモードに切り替えアクセルを目一杯踏んでみたところ、エンジンが掛かり、力強い加速を確認したので、エンジンは一回作動したのですが、それは故意に、ですので、実質モーターだけで走りきったと申し上げて良いでしょう。
70%から走り始めて、着いた時には20%に。40 kmを50%を使って走った事になりますが、今回は下り坂の回生が、かなり効いていますので参考までに、という事にはなりますが、80 km前後はモーターだけで走りそうです。
強いて気になる事をお伝えすると、このアウトランダー、西湘バイパスの継ぎ目を超える時に多少のバタつきを感じましたが、これは普段、自分が乗っているPHEVがエアサス付きの為、比較すると、という事で十分快適な足回りだと思います。
またエンジンとモーターを合わせた「システム出力」というものを、このアウトランダーは「敢えて」公表していないそうですが、大体300 PSちょっと、という説明を受けました。
公表しない理由を訊いてみたのですが、「まあまあ」と、はぐらかされてしまいました(笑)
ですが動力性能にも十分、満足。2.2トン弱の重さを感じる事が無かったのが何よりの証拠です。
YAMAHAと共同で開発したオーディオの音も素晴らしく、装備も充実。そして高速道路のSA、PAに設置してある急速充電器にも対応しており、長距離走行でもモーターの恩恵を最大限、受けることができるでしょう。正に万能車、と言えるクルマでした。
唯、問題は価格です。
アウトランダーは500万円台前半~600万円台後半の価格。補助金は出るものの、今の日本の経済状況ですと、高価なクルマと言えるでしょう。
内容を考えるとコスパは非常に高いクルマですが、多くの人に勧められる金額ではありません。
しかし、受注はかなり好調という事で、しかも予想に反して最も売れているのが、680万円を超える最上位グレードだそうです。
私もこの内容でしたら、このアウトランダーを購入したいと思うのですが、大幅改良の発表の直前に、他メーカーのPHEVを購入してしまい、愕然した事を最後にお伝えしておきます。
クルマを造るのも難しいですが、購入するのもタイミングなど難しいものですね…。
安東弘樹
安東弘樹連載コラム
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