クルマ業界の新年会を通して感じたこと 〜東京オートサロン2025〜…安東弘樹連載コラム
東京オートサロン2025(以下TAS)に行ってきました。
このタイトルの様に言われて久しいTAS。
会場は相変わらずの大盛況で、クルマ好きがこんなに沢山居るのか!と嬉しい気持ちになります。
クルマ好きが集結
周囲の駐車場もほぼ全てが満車状態で、並んでいるクルマが多く見られました。
唯、会場のレイアウトの工夫や人の導線の効率化などが奏功しているのか、数年前の、常に会場通路がラッシュ時の通勤電車と同じ状態、とまでにはなっていなかったのが印象的でした。
しかし、インバウンド需要が増しているのも確かで、行き交う人の言語も多種多様。これも年を追う毎に、その傾向が強く表われています。
そして、これも近年の特徴で、自動車メーカー、インポーターが大きなブースを構えていて、その面積も拡がり、「カスタムカーの祭典」が最近はもう、一つのモーターショー、という雰囲気になってきました。
これは「東京モーターショー」が「ジャパン・モビリティー・ショー」に変わり、純粋にメーカーが新型車などを発表・展示する場ではなくなった為、その役割をTASが担うようになってきたという側面もあるかもしれません。
かつては、大音量のテクノサウンドが会場を包んでいましたが、今年は特に「静かな」会場だったのが印象的でした。
私個人的には、この方が落ち着いて様々なブースを観られますので、ありがたい変化です(笑)。
更に露出度の高いコスチュームを着た女性達が大勢いる、といったブースも減ってきているイメージで、そのあたりも安心して家族で観られるイベントに変革してきています。
各ブースも大盛況
今回、私も新年の挨拶回り、とばかり、各ブースにいる担当者の方々を見つけては声を掛け、今回の展示のテーマや今年販売されるモデルのことを「さりげなく」訊いて回りました。
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スーパーGT GT500 23号車MOTUL AUTECH Zをバックに千代勝正さんと
その中でNISSANのブースに行った際、昨年末に私が担当するTBSのラジオ番組の収録でお世話になったレーシングドライバー千代勝正さんが、ブースで解説をしていて、それを観た後に御本人に連絡をした所、千代さんが連絡を下さいました。
ちなみに千代さんが解説している時間が正に番組の放送時間だったことに後で気付きました(笑)。
バックステージで千代さんと、お会いしたのですが、その際、千代さんからの提案で、ブースに展示されている2024年スーパーGT、GT500クラスに参戦したNissan Z NISMO GT500 23号車の前で写真を撮って頂きました。
何という嬉しいサプライズでしょう!あらためて千代さんやNISMOの皆様に感謝を申し上げます。
そんな再会を機に、本格的に会場を回り始めます。
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アップちゃんとスーパーGT GT300 18号車 UPGARAGE NSX GT3がお出迎え
続いてラジオ番組のスポンサーでもあるUP GARAGEさんのブースに寄ると、スーパーGTに参戦中のチームUP GARAGEのマスコット、アップちゃんが、GT300クラスのマシン、今年引退するNSX GT3とお出迎えしてくれました。
TOYOTAは今回、GAZOO Racingのブースを出展、ニュルブルクリンク24時間耐久レースに6年ぶりに参戦する「TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing」の進化型GRヤリス(新開発の8速AT・GR-DAT搭載)の展示など。多くの人を集めていました。
他、全てのメーカーに触れると字数が足りなくなりますので、私の愛車繋がりでお伝えすると、BMWはスポーツブランド「M performance」パーツを装着したM2やM5など、スペックも圧倒的なマシンを展示。
あらためてBMWの底力を見せつける内容でした。
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ロータス・エメヤ
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ロータス・エレトレ
またロータスのブースは、いつもと同じ場所、同じ広さのブースとは言え、前回はガソリン2シーターのスポーツカー、「エミーラ」が展示されていましたが、今年、ついに純電気自動車(以下BEV)のSUV「エレトレ」とメーカーが「エレクトリック・ハイパーGT」と呼ぶ「エメヤ」のBEV2台のみの展示となりました。
ブースを観ているお客さんの声を聞いていると「ロータスも完全に変わっちゃったな」と嘆く男性の隣で若い女性が「これ、メチャクチャ良いじゃん!これ買おうよ!」と言っているのを聞くと、これからのロータスの変革はもしかしたら成功なのかもしれないと思えました。
確かに、これまでの路線のままだと将来ロータスが生き残っていくのは難しい。元々台数で勝負をするメーカーではないだけに、中途半端に変わるのではなく、思い切った方向に舵を切ったメーカーの判断が起死回生に繋がるのかもしれません。
ちなみに、前述の男性が「でも、これ2~3千万円だよ。」と言うと「え?そんなにするの!?じゃあ、仕事頑張ってよ!」と女性。私が心の中で「お互いに頑張りましょう!」とエールを送ったのは言うまでもありません…。
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フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
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フォルクスワーゲン・ゴルフR
それにしても本来は「カスタムカー」の祭典ですが、幾つかのメーカー、特に海外メーカー(韓国のヒョンデや中国のBYDを含む)は実質的なワールドプレミアの様な新型車のお披露目の場に、このTASを選んでいる、という事がよく分かります(VWも新しいゴルフGTIやゴルフRを展示)。
日本市場の中でも、このTASが果たす役割を海外メーカーが評価している証と言えるでしょう。
一方で、世界に認識されてきた「日本のカスタムカー文化」が浸透しているという事も海外からの観客の多さを見ても理解出来ます。
特に今年は東南アジアからのお客さんが、かなり増えてきたのを実感しました。
正直な印象としては中国語や韓国語より、圧倒的に東南アジア系の言語が耳に入ってくるのです。これは、近年の特徴が今年、特に顕著になってきたように思えます。
これは、とても嬉しいことなのですが一方で、今回寂しい、というか心配になることも浮き彫りになりました。
TASを取り巻く環境
私は今回、前後の仕事の関係もあり会場の幕張メッセ近くのホテルに泊まったのですが、イベント前日に、急遽宿泊が決まったので、ホテルは空いていないだろうと諦め半分でホテル予約サイトを開きました。
ところが、名が浮かぶ近くのホテルの多くが「予約可能」「空室」という状態。
お、奇跡的に泊まれるぞ!と思い、あるホテルのページを開いて絶句しました。
代表的なビジネスホテルの一室(食事無し)の価格が3万5000円~。他のホテルも、最も安い部屋が2万8000円。5万円以上の値札が付いている部屋もザラにあります。以前、東京のホテル価格が今年になって(昨年の段階で)高騰している、とのコラムを書いたことがありますが、イベントがあるとは言え、千葉市のホテルでも人が集まる時は、この様になることを実感したのです。これでは満室にならない訳です。
しかし、円安や平均収入が上がっている他の国の方には割安に感じるのか、私が宿泊したホテルでも多くの海外からのお客さんで賑わっていました。
勿論、海外からの方々は価格に関わらず宿泊するのは当然ですが、日本でも地方からいらっしゃる方は宿泊したいと思っているはずです。
その代わり目立ったのが、人が乗ったまま路上駐車する車でした。
今回、私が深夜にホテルに着いてコンビニに行った時に、やたらと路上に停まっているクルマが多く、中に人がいらっしゃるのです。
以前もTASの前日に同じ時間にコンビニに赴いた時はありますが、今年初めて目にする光景でした。
私が今回、TASに行ったのは最終日の日曜日ですので、その光景は前日の土曜日の夜のことです。
何か、寂しい気持ちで部屋に戻ると暫くして警察車両からの「付近の住民の方が大変、迷惑をしておられます!路上は駐車場ではありません!直ちにクルマを移動して下さい!」というスピーカー越しの声が聞こえてきました。
そうすると、一斉に爆音と共にクルマが移動しているのが聞こえてきます。
確かに、イベントの性格上もあって、合法ギリギリ?の音をさせながら走るクルマが多く、路上駐車も含めてマンションなどが多く建つ住宅街では迷惑になる場合も多いでしょう。
イベントを恒久的に続ける為にも、マナーを守ってTASを楽しんで頂きたい、というのは大前提としても、前日から駐車場も満車、近所のホテルには宿泊しにくい、となると、早急に「イベントとして」考えなければならないことがある、と思いました。
実は今回、会場内でお会いした、あるメーカーの広報の方が「安東さんはご自宅が近くて良いですね(私は千葉市在住)。我々は今年から宿泊禁止になりました。これまではイベントの仕込みや準備で朝早くから夜遅くまでの拘束になるので、基本的にイベント期間中はホテル宿泊でしたが、今年はホテル代が高くて払えないから、必ず一度電車で帰宅して、朝、電車で会場に入るように言われています。」とおっしゃっていたのです…。
2025年、最初のコラム、TASが盛り上がっている、という内容で始めようと思ったのですが、正直に申し上げます。TASの盛り上がりに感銘を受けたのと同じくらい、今の日本の経済状況を実感してしまったのです。
唯!日本にも世界にも、日本の自動車メーカーやカスタム文化を愛する人々が沢山いることは間違いありません!そのことはTASを通して肌で感じました。
課題と向き合いつつ、益々TASが発展していくことを願って、今年最初のコラムを締めたいと思います。
皆様、あらためて本年も宜しくお願い申し上げます!
安東弘樹
安東弘樹連載コラム
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