日本における「輸入車」と地域毎のクルマ事情…安東弘樹連載コラム

先日、「富山輸入車ショウ」という富山県で開催されたイベントにトークショーのゲストという形で参加させていただきました。この「ショウ」(正式名称がショー、ではなくショウです)は富山県や石川県の輸入車販売店が集まって、自社の車を展示するだけでなく、その場で販売もするというイベントで、毎年行われているそうです。

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「富山輸入車ショウ」でトークショー

主催は富山県輸入自動車販売店協会で、富山や近隣にお住まいの方々に輸入車の魅力を発信して販売の促進にも繋げる、という目的で行われているとのこと。

出展販売店は何と乗用車18社(18ブランド)!他にもトラックメーカー1社、オートバイメーカー4社(トライクブランド1社含む)に、特別展示3社(3ブランド)を含めると26ブランドの車両が富山のテクノホールという場所に集まる、非常に大きなイベントです。

今回は光栄なことに、土曜と日曜の二日間の会期の内、日曜日のお昼の時間帯にトークショーで「輸入車の魅力と楽しみ方」というテーマでお話しをさせていただくことになりました。

これまでの私の所有車歴の中で7割位が輸入車であることや、最近、特に輸入車で急激に増えてきたBEV(純電気自動車)を現在所有しているということで、私を選んでくださったそうです。

毎年行われている大きなイベントで、お客様も沢山来場されるのですが…。
富山県は人口における、自動車の保有台数は国内でもトップクラスの割には、輸入車の比率が低く、それを何とかしたいという、理由もあって始まったイベントだそうです。

実は最近は一部の高級ブランドを除けば、日本車との価格差も縮まっているのですが、やはり輸入車は「高い」「故障・メンテナンスが心配」というイメージがなかなか払拭されず、輸入車をユーザーに選んでもらいにくいのが現状だそうで、私の実際の体験を伝えることで、そのイメージを打破して欲しいとの依頼でしたので、私も張り切ってトークショーに臨みます。

イベントが始まる前の展示メーカー全社参加の「朝礼」に参加してほしい、ということでしたので、土曜日に富山入りして宿泊し、日曜の朝、朝礼に参加させていただいたのですが、まずは土曜日の契約台数の発表からでした。数字は申し上げられませんが、正直、予想を上回る台数で驚きます。

それだけで、このイベントの重要性を感じました。
普段の営業形態では、全てのブランドを合わせたとしても、1日で、この数字の車が売れるとは思えません。そして、日曜日当日は天気も良かったので、「この数字を倍増させたい」との代表者の御挨拶でしたので、「私も少しでも後押しができる様に頑張ります。」と、僭越ながら挨拶をさせていただきました。

朝礼が終わり、トークショーの中身の打ち合わせに入ります。
これまで所有してきた輸入車、それぞれのブランドの特徴や維持費、実際の故障の事例(殆ど無いのですが)など、私の経験を踏まえて、お話しさせていただきました。
今回のトークショーのMCを担当される、富山県ご出身のフリーアナウンサー長島弘樹(名前が全く同じ!)さんは、私と同じくかなりのクルマ好きで、私のクルマ遍歴も全て調べていただいた様で、私より私のことに詳しい(笑)、というレベルの準備をしてくださっていましたので、話が早く、サクサクと打ち合わせが進んでいきます。

しかし、輸入車、特にBEVのランニングコストの話になった際、私が「BEVに充電する電気を太陽光発電器でつくっているので、燃料代は勿論、電気代も掛からないどころか売電しながら充電できています。初期費用も5年程度で元がとれますので、一軒家にお住まいの方は、太陽光発電器を設置しては如何でしょうか。」という話をしても宜しいでしょうか?と提案をしたところ、富山生まれ、富山育ちの長島さんは「安東さん、富山は全体的に降雪地帯、しかも豪雪地帯も少なくないので、屋根に太陽光発電器を付けられない地域も多いんです、…」と教えてくださいました。

夏場はともかく、冬場はパネルに太陽が当たらない状況が続き、メンテナンスにも手間が掛かるため、太陽光発電器を設置する方は極めて少ないとのこと…。

恥ずかしながら、私はそこには気づけませんでした。やはり地域によってクルマの運用の仕方も変わるのだということを改めて実感させられます。

クルマを置くスペースも都市圏と比べ余裕はあるし、基本的に一軒家が多いので充電設備も簡単に設置できると思っていました。
それは決して間違ってはいないのですが、庭や車庫が雪に埋もれてしまう、という状況を踏まえて充電器の設置場所も考えなければならない、ということまで長島さんに教えていただいたのです。
そこで私は、そういったことを念頭にお話しをすることにしました(クルマへの充電は夜間にすれば、かなり電気代も安くなるなど)。
事前に様々な富山における現実を知っておいて本当に良かったと思っています(長島さんに感謝!)。

唯、輸入車の特徴や美点、地域によって左右されない部分に関しては思う存分、お伝えすることができました。
まず、輸入車は全体的に、高速走行時の安定に優れるなどの特徴や、頻度も距離も走れば走るほど壊れにくい、という私の経験をお話しました。私自身ほぼ毎日、平均100kmほどクルマを走らせる生活をずっと続けてきたことで、35台ほどのこれまでの輸入車の愛車の故障は皆無に近かったこと。

エンジン車でしたら、たまには回転を思いっきり上げて走って、エンジンやバッテリーを整えること、そして各種オイル交換などは決まった距離を走ったところで定期的に替えるだけで意外に輸入車は壊れないので、クルマ通勤の方には、むしろ輸入車が向いているかもしれない…。
唯、通勤距離が短すぎる場合は、時々ドライブがてら遠回りして帰宅するなど、走行距離が伸びるほど、俄然、壊れなくなると補足も忘れずにお伝えしました。

地元の方が多かったのですが、皆さん本当に真摯にお話しを聞いてくださいましたし、驚いたのは、会場に設置していただいた椅子にお座りの方は勿論、立って聞いてくださっていた方まで1人もその場を離れず、1時間強の長い時間、私の話にお付き合いいただいたことです。

しかも、トークショーの最後に質問を受け付けたところ、すぐに複数の方が手を挙げてくださり、「安東さんが、今一番欲しい輸入車は?」といった私の個人的な嗜好についての質問や、「輸入車のウィンカーレバーとワイパーレバーは日本車と反対なので、それに違和感はないのでしょうか?」といった一般的な質問など、皆さん、真剣にお話しをされるので、私も楽しくなるのと同時に熱くなってしまい、気付けば時間をオーバーしてしまいました。

地域ごとのクルマ事情

富山県の輸入車比率が低いというのが信じられないくらい、来場されているお客様も多く、また熱心に各社のブースでスタッフの話を聞いている方ばかりでしたが、日本の経済状況の影響か、2023年の日本国内の新車販売台数の輸入車比率は7.6%ですので、輸入車新規登録台数が最も多かった96年の8.4%と比べても微減しています。
東京は約25%ともいわれており、他の大都市圏も高い数字ではあるものの、平均を見ると都市部以外がいかに少ないかが分かります。

そもそも日本や韓国などの東アジア以外の国で、輸入車と国内メーカーを分けて考える概念はあまりありません。ドイツは国内に名だたるクルマメーカーが独立系だけで5社ありますが、一般のユーザーにドイツ以外の国のクルマを「輸入車」と分ける考え方はないのです。あるとしたら、「日本車」「フランス車」との認識のみで、「ドイツ車」以外を「輸入車」と一緒には考えません。(日本的な「外車」という概念が無い、ということです)。

勿論、日本は「島国」という地政学的な特徴も有りますし、恒常的に乗用車を製造しているメーカーだけでも8社あり、それぞれが魅力的なクルマを作っているので、日本メーカー以外のメーカーが選ばれにくいという側面もありますが、やはり、他の国と比べても特殊な市場であるのは間違いないでしょう。

ですので、「高い」「故障する」などのイメージを一旦、忘れて、「輸入車(外車)」ではなく、日本メーカーと同じ目線で、多くの方に純粋に好きな車種(メーカーやブランド)のクルマを選んでみていただきたい、そう思った一日でした。

実際に、例えば、今は電装部品からトランスミッションまで日本メーカー製を使っている輸入車も沢山ありますので、信頼性も少なくとも最新の輸入車は、日本車と比べて遜色はありません(使い方には多少の慣れは必要ですが)。

実は世界有数の降雪国である日本の「降雪地域」で輸入車ショウのトークショーを担当させていただいたことから、あらためて色々なことに気付けた一日となりました。

この場を借りて「富山輸入車ショウ」の運営スタッフの皆様、また長島弘樹アナウンサーに御礼を申し上げます。

文:安東弘樹

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