自分の評価は間違っていませんでした!――が …安東弘樹連載コラム

  • 日産・リーフ

過日、私が日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTY)2025-2026に選んだ日産リーフに、公道で長い時間乗ることができました。

実は今回のCOTYエントリー時点では多くのジャーナリストやCOTY選考委員はテストコースでの試乗のみしかできておらず、日産主催の公道での試乗会は開かれる前だったのです。

それを理由に「COTYには選ばなかった」という選考委員の方も多数いらっしゃったのですが、私はテストコースで走っただけで十分魅力を感じたので、COTYに選ばせていただきました。

もちろん、迷いはありませんでしたが「あらためての確認」と言いますか、答え合わせができましたので詳細をお伝えするとともに、前々回のコラムでも少し言及した、「日本での価格付けの難しさ」を具体的に知ることができましたので、そちらも併せてお伝えしましょう。

公道で試乗してあらためて分かった日産・リーフの魅力

まずはリーフ自体の性能や使い勝手ですが、結論から申し上げると、「素晴らしかった」の一言です。

「あえて唐突な加速感を演出しなかった」と日産のエンジニアの方は仰っていましたが、それでも十分な加速性能と伸びも感じるモーターの味付けは申し分なく、キッチリと218PS、355Nmというスペックを感じることができます。

高速道路の合流時などは、まさにストレスフリー!ごく僅かに「ヒュイーン」というモーター音(正確な表現ではありませんが、分かりやすくそうお伝えします。)はするものの、静かに、しかも軽やかに加速しますので、あっさりと本線のスピードに合わせられます。
一度この加速を味わうと、なかなかエンジン車には戻れません。

もちろん私は、自分で自在にクルマを操れるMT車の運転が好きで、その鼓動を感じるためにも免許返納するまでエンジン車に乗り続けますが、実用車としては自宅で充電が可能ということもあり、これからもBEVやPHEVに乗ると思います。

エンジン車と電気自動車の両方の良さを知ってしまった今、どちらも手放せません。

そして多くの方が気になるであろう“電費と満充電からの航続距離”ですが、これもリーフの場合、不満を持つ方は少ないのではないでしょうか。

カタログ上の航続距離は、702km。

まあ正直これを達成するのは不可能です。エンジン車の燃費もカタログ値の70%位が常識ですが、BEVの場合は実電費(航続距離)とカタログ値の乖離は更に拡がります。

特に冬場はその差が顕著になりますので、そこは今後BEVを購入する方は気を付けていただきたいと思います。

私の愛車「プジョーe-208」の場合、カタログ上の航続距離は400kmですが、実際は夏場で280km、冬場は220km程度というところ。しかも残量が20%を切ると不安になりますので、本当に余裕をもって走れるのは更に短いのですが、普段不満に思うことは滅多にありません。

このクルマを使うのは基本的に仕事の移動ですので、長くて1日150km程度と、多くの日本のユーザーと比較すると長距離を走りますが、それでも帰宅して安い夜間電気料金で充電すれば、翌日には満充電になります。

さてリーフの話に戻りますが、今回の試乗時間は2時間半という長い設定で、充電も出力の違う充電器を使い2回検証することができましたので、実際の運用に関わるデータを十分に取ることができました。

試乗を始めた時のバッテリー残量は63%で、残りの走行可能距離は366kmと表示されています。単純計算では、航続距離は580kmほどというところでしょうか。

カタログ上はともかく、これまで実用的に500km以上走れそうなBEVに会ったことはありません。

  • 充電中の日産・リーフ1

ただ今回は途中で充電を2回することになりましたので、実際の満充電からの航続距離を測ることはできませんが、これまでのBEV経験から推測することは可能です。

ジャーナリストの中でも、実際にBEVを所有して普段から乗っている方はまだ少数派ですので、そこは自分の強み?を生かせたのはありがたかったと申し上げておきます。

今回は成田を拠点に東関東自動車道などの高速道路を中心に走りましたが、BEVには不利な高速道路を走ることによって、よりリアルな航続距離や乗り味を試せました。

高速道路でのリーフは快適そのものです。動力性能は十分以上、足はフラットライド。少し急な車線変更での破綻も皆無。

東関道の速度制限120km/h区間を走っても盤石の走りです。しかも、その区間で試したプロパイロット2.0も相変わらずの安定で、基本的に手放しで安心して走行ができました。

特にBEVであるリーフに合わせて足回りやボディのセッティングもされており、重いバッテリーが床下にあることでの低重心による滑らかな高速走行も、ぜひ皆様に試していただきたいのです。

一般道でも、リーフは自分のアクセル操作に瞬時に反応して加速してくれるのが本当にありがたく、車線変更の際も後続の車に迷惑を掛けることなく、私のプジョーよりも素早く移動できました。

しかも、唐突感がある加速ではないので、その塩梅が絶妙なのです。

走りに満足した後、今回は千葉市にある私の自宅近くを通る試乗コースということもあり、普段私が多用しているパーキングエリアに停めて、「いつもの」充電器で充電してみました。
自分のプジョーと充電スピードを比較してみたかったからです。

その充電器は50kWという、日本では一般的な出力の充電器ですが、普段、私のクルマで充電すると40kW程度の出力しか受け付けません。
例えば私のプジョーのバッテリーは50kWhというサイズなのですが、これは50kW
の充電器で1時間充電すると空から満充電になるということになります。

日本の場合、基本的に1回は30分間の充電で区切られますので(1台に充電器を占有させないため?)他にクルマが並んでいなくても、世界的にも珍しく、必ず30分間で1回、充電が終わってしまいます。ですので、50kWの充電器が性能をフルに発揮できても30分間、つまり25kWhしか入れられません。

今回は、リーフの方で何kW受電しているか表示されましたので分かったのですが、最大47kWと最大に近い電気を受けていることが分かりました。

  • 充電中の日産・リーフ2

今回は時間の関係で20分間の充電で終えましたので、15kWh弱が充電できて78kWhのバッテリー容量を持つリーフに対して18%ほど、残量を増やす事ができました。

リーフは最大150kWの充電器にも対応していますので、仮に最大の出力を受けることができたら「理論上」は30分で、空からほぼ満充電にすることができます。
実際はバッテリーが満充電に近づくと受電力は落ちますので、そんなことは不可能ですが、短時間でかなりの電気を溜めることは可能です。

  • 充電中の充電器の表示

実際に試乗時間後半になって、他のパーキングエリアにある150kWの充電器で充電したところ60%の残量でも90kWの出力を受け付け、相当速いスピードで充電を受け付けました。30分間で45kWhの電気を受けることになりますので、例えば残量が30%まで減っていても30分間で90%ほどに回復することになります。

すなわち、そのあと400km以上は走れるのです。

航続距離の長さもさることながら、充電性能を今回しっかりと見極めることができました。

更に今回、感服したのがその装備です。Google搭載のナビは充電器検索が充実しており、リルートや目的地の変更もスムーズ。しかもモニターやメーターがとにかく見やすく、視覚的ストレスも少なかったことも付け加えておきます。

そして、先代比でウレタン密度を高め、その形状も含めて疲れにくいシート。運転席、助手席は電動調整です。さらに前席、後席ともに3段階調節が可能なシートヒーター。
先端にLEAFの文字が入った開閉(変色)調節可能な「疑似」サンシェード付きパノラマルーフ、電動開閉リアハッチなど、およそ不満に思う方は少ないのではないでしょうか。

唯一、ここまで充実しているのなら、シートベンチレーターが装備されていれば完璧だったかもしれません。

価格は私が試乗したB7 Gグレード(最上位)が599万9400円。高価だと思う方は多いと思いますが、このリーフはCEV補助金が129万円適用されますので、実質400万円台です。それでも今の日本では高価と言えるでしょう。

前々回のコラムでも、このリーフの価格はメーカーも悩みどころとお伝えしましたが、今回は更に詳しく調べてみました。

アメリカでの販売価格を日産の方に伺ったところ、3万ドル~ということで今回試乗した上位グレードは約4万ドルだそうです。今のレートで計算すると4万ドルは600万円ほどですので、見事に日本と同じ価格です。

問題は両国の平均年収の差でしょう。日本は、およそ450万円。これは約35年間、殆ど変わっていません。つまり今回試乗したリーフの価格は平均年収の1.3倍強、ということになります。

翻ってアメリカの平均年収は7万~8万ドル。今のレートで1000万円~1200万円です。
これはアメリカの富豪が平均を押し上げていますので、中央値で見ると6万~7万ドル。
それでも900万円~1000万円です。

つまり、アメリカでは平均年収以下の価格でリーフの上位グレードが買えるのです。これを今回、改めて知ったことで、日本メーカーの苦悩が見えてきました。

やっぱり良かった!

公道で試乗して、改めて日産・リーフの魅力を確信してCOTYに選んで良かったと思いましたし、この公道試乗会を受けて、何人かのジャーナリストの方が、「公道で乗っていたら今回のCOTYはリーフにしたのに…」とSNSなどで記事にしているのを見て、「ニヤッと」している自分はいるのですが、あらためて日本の経済状況や、自動車というものが「普通のユーザー」にとって遠いものになってしまうのではないかという危惧を覚えたのも確かです。

COTYに選んだものの、手放しで友人知人に「これ買いだよ!」と言える車は本当に少なくなってしまったと、最近つくづく感じているのです。

しかし、補助金も最大限に利用できますし、さらに一軒家で充電設備が整えられるのであれば、私は最大限にお勧めします。

ちなみに補足ですが、今季、大雪に見舞われた地域でもBEVに乗っていて立ち往生によってドライバーが凍死、といったニュースは少なくとも私は見つけられませんでした。逆にエンジン車の排気ガスが車内に還流し一酸化炭素中毒で亡くなる方は、残念ながら毎年いらっしゃいます。

ネットなどでは「冬の立ち往生、EVで凍死者が続出?!」などという記事や動画が散見されますが、あくまで「そうなる可能性?」という内容が多く、実際に事件、事故になったという報道は「私は」まだ見ていません。

実際に私は気温0度の中、2時間程BEVの中で弱い暖房とシートヒーターを付けて待機したことがありますが、バッテリーはほとんど減りませんでした。

重い車を動かすことに比べたら、暖房やシートヒーターに使う電気は微々たるものです。残量が5%という状況でしたら、確かに危険はありますが、それはエンジン車でも同じでしょう。

むしろマフラーに雪が積もらないように、常に気を配らなければならない方が大変かもしれません。

ということで、結論としてあらためて申し上げますが、私がCOTYに選んだ日産・リーフは素晴らしいクルマでした!

安東弘樹