自動車は何処へ向かえば良い?…安東弘樹連載コラム

  • E TOYOTAイメージ

    ※登場車両は、2024年11月時点のものとなります。

先日、日本の自動車メーカーHONDAが2040年までの「脱エンジン(EV/FCV化100%)計画」を大幅に軌道修正しました。

それに伴い、北米で生産予定だった次世代BEV「0シリーズ」の「Honda 0 SUV」、「Honda 0 Saloon」、そして「Acura RSX」の3モデルの開発、発売を中止し、ハイブリッド(HEV)モデルに注力し2030年までにHEVの販売を220万台規模に引き上げる計画にする、ということです。
勿論BEVを完全に止める訳ではなく、「0シリーズ」の一部車種などの開発は続けるとも発表しています。

かつての急激なBEV化の波

北米でのBEVの販売伸び悩みや現政権による補助金制度の見直しなどが主な理由というのは理解できますが、それだけではないでしょう。

詳しい分析は専門家にお任せしますが、やはりBEVに対して前のめりだった割には、現在のBEVのラインナップは他社と比べて、中国での合弁会社によるクルマを含めても、先を行っている雰囲気は私個人的には感じていませんでした。

これを受けて、日本国内では「BEVはオワコン」という機運が高まって?いますが、それもまた先走りというものでしょう。

経済の専門家、自動車の専門家、エネルギーの専門家など、どの専門家も「将来的には電気で動くモビリティーが主流になる」という論調は変えていません。

ただ、そこに至るプロセスやロードマップが少し変わってきた、ということに異論を挟む方も多くないようです。

世界の国々や一部メーカーが、あまりに急いで「何年までに内燃機関の自動車は無くします」と発露することで、逆に反発を招いたことも間違いありません。

私は3年ほど前からBEVに乗り始めましたが、内燃機関のクルマも所有していて、その魅力も発信していても、BEVの魅力や利点を伝えるだけで「猛反発」を受けることになりました。別にBEVに乗ってください。ともBEVだけが素晴らしいとも言っていないのですが、「BEVを薦めるなんて間違っている」「電気自動車なんて金持ちの道楽だ」などというコメントが多く寄せられました。

私としては苦笑いするしかないのですが、あくまで「ライフスタイルや乗り味がフィットする方にはBEV「も」お勧めします。という発信しかしていなくても、一種の「アレルギー」のような反応がくるのも、HONDAも含めた、多くのメーカーのあまりに急激な方向転換のアピールの賜物?ではないかと思っています。

現に私は今もBEVも、エンジンMT車も楽しく乗っていますし、適材適所で効率的に運用できていると思います。
運転フィールも、それぞれの良さがあって、シンプルに言うと「どちらも無くなっては困る」という気持ちです。

クルマとエネルギーの問題

最近は皆さんも実感していると思いますが、燃料代は高くなり、おいそれと給油できないレベルになってきました。そういう意味では私にはBEVという選択肢があって良かったとは思います。燃費が抜群に良いPHEVでさえ、燃料タンクが大きめのクルマを所有しているので、給油の頻度は少ないとはいえ一回の給油時に料金は1万円を軽く超えてきます。

先日、旅先で飛び込みで入ったガソリンスタンドで満タンにした際には60リットル弱入って1万3000円を超えました…。思わず、声を上げてしまったのは言うまでもありません。

もちろん、アメリカとイランの戦争が主な要因で、まずは一過性の傾向だとは思いますが、長く続いてきた石油に頼る生活は恒久ではないと漠然と感じるのには十分な状況でしょう。

そんな時に農学博士、篠原信さんのフェイスブックへの投稿を拝読しました。
一部を抜粋しますが

“石油が採れなくなり始めている。もちろん、埋蔵量はまだ50年分もある。この数字だけ見たら石油文明はまだまだ続けられそうに思える。しかし「埋蔵量」という数字は、エネルギーとして考えた場合には参考にならない。
石油を掘るのに必要なエネルギーの何倍石油が採れたか、を示す数字、EROIが大切。
石油を利用し始めた時代、石油は噴水のように噴き上げていたので、掘るのに必要なエネルギーの200倍石油が採れていた。つまりEROIは200。ところが。
近年は10倍を切る油田が多くなっていて、シェールオイルと言われるタイプは、地中に水やガスを高圧で注入することにより石油を搾り出す方法をとるので、石油を掘るのに膨大なエネルギーが必要。このためにEROIは7倍程度にまで低下している。
EROIが3倍を切ると、もはや石油はエネルギーとして使えなくなる。石油をガソリンや軽油に加工する必要があるし、ガソリンスタンドに運ぶにもエネルギーが必要だからだ。3倍を切れば、石油は「掘れば掘るほどエネルギーを失うエネルギー」になってしまう。エネルギー的に赤字。”』
篠原信氏フェイスブックより引用)

篠原先生は、農業を中心にエネルギーに関しての著書もある方で説得力があります。

私は恥ずかしながら「EROI」という単位を漠然としか認識しておらず、今回、篠原先生の投稿文を拝読することで再認識し、あらためて今回の戦争の背景なども知る機会となりました。

石油燃料に比べて現在のリチウムイオンを中心としたバッテリーの効率の悪さも指摘されていますが、それでもいつかは電気で動くモビリティーにならざるを得ないとの認識は他の方と同じお考えです。

具体的にEROIが3倍を切る時期についての言及はありませんでしたが、大気汚染による気候変動を抑制する以外に、現実的にそう遠くない未来に石油に頼らない構造にしなければならないことは理解できます。

ここで社会全体の話ではなく、私個人的な話をさせていただくと、BEVに乗り始めて圧倒的にクルマのランニングコストが下がったのは確かです。BEVは主に普段の足に使っているのですが、仕事の時は毎回100kmほどの距離を走ります。

以前もお話しましたがソーラー発電器による電気を充電していますので、普段は電気料金は計算上掛かっていません。滅多にありませんが出先で急速充電をする時はサブスクの充電カードを使っていますので毎月6600円(税込み)しか掛かっていません。

先ほどお伝えした、PHEVのクルマの一回の給油額の半分の料金で一ヶ月、感覚的には充電し放題です。正確に申し上げると上限はありますが(私が契約しているプランは急速充電 200分/月、普通充電 600分/月)、自宅充電が基本ですので、これまで一度も上限を超えたことはありません。さらに申し上げると、上限の半分に達したことすらほとんどありません。

ソーラー発電器を付けられる屋根の構造の一軒家にお住まいで、充電器を設置できるという、私と同様の条件の方なら勿論ですが、一軒家にお住まいの方でなくても、一ヶ月の走行距離が短い方であれば、ご自分に合った充電カードやアプリを使う手もあります。

ここまで読んで、「やっぱり安東は電気自動車信奉者だ」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、何度も申し上げます。

それぞれのドライバーの方によって、ライフスタイルや好みが違いますので、全てのパワーユニットを否定することは断じてありません。

みんな違う それが良い

私が好きなTOYOTAのCMがあります。

「E TOYOTA」ブランドのCMで、様々な種類、ハイブリッド車も含めた電気関係のクルマのCMなのですが、「でもあのエンジン音がクルマらしいっていうか…」という意見に対して、擬人化したTOYOTAのBEV、bZ4Xは「それも良い。私たちは誰も否定しない」と応えるのです。

そう、まさにそうなんです。

今は、全てのパワーユニットをお互いに補完し合い、将来の本当のエネルギー危機に備えるのが現実的なのではないでしょうか。

それぞれのユーザーが自分に合ったパワーユニットのクルマに乗る。もちろん、価格も含めてです。暫くは、これにつきると思います。
ただ、自分に合ったクルマに気付いていない方がいらっしゃるのであれば、気付いていただきたいと切に願うのです。

最後に…、HONDAは2026年3月期通期で最大6900億円の赤字を見込んでいます。これは上場以来初ということですので、大きな損失になるのは間違いありません。
ただ、個人的に人生初の愛車がHONDA CITY TURBOⅡだったこともあり、この方向転換が軌道に乗り、将来の飛躍に繋がることを期待しています。

安東弘樹