クルマ愛が結んだ、ありがたいお仕事…安東弘樹連載コラム

  • イベントで登壇する安東弘樹氏_1

突然ですが、私の本職はフリーランスのアナウンサーです。

私は新卒で就職したTBS(私が入社した当時はTBS東京放送)に27年間(1991年~2018年)在籍し、入社以来アナウンス部に所属、お陰様で退社まで異動することなくアナウンサーとして会社員生活を全うすることができました。

TBS時代、テレビではクルマに関する発言はほとんどできませんでしたし、ラジオの仕事は社歴の後半までは担当することが少なく、ごくまれに番組を担当しても、やはり個人的にクルマの話をすることはありませんでした。

プライベートではもちろん、ずっとクルマに夢中で、結婚するまでは、恐らく収入の半分はクルマに使っていたと思います。しかも、休みの日が少ない中、毎日のように仕事終わりで100km前後はクルマを走らせ、それが唯一の楽しみでもありました。

私はお酒を飲みませんので、仕事以外の時間は、クルマを運転することしか考えられず、業界の方との付き合いもほとんどなく、ひたすらクルマの運転を楽しんでいました。いまだに洗車をあまりしないのは、この時からの習慣?なのか、とにかく1分でも時間があれば、運転。なのです。

しかし、その異常とも言える毎日の運転経験が、のちに自分の仕事に直接役に立つとは、当時の私は知る由もありませんでした。

  • 控室前の安東弘樹氏_1

転機

そんな私が、あるラジオ番組で、「クルマの魅力」について1時間、生放送で話す機会を得ることになりました。普段の雑談でクルマの話ばかりをしている私に興味を持ってくれたプロデューサーが、ある番組に「ゲストで」呼んでくれることになったのです。
ミュージシャン、ラッパーの方がDJを務める番組で、1時間のコーナー内、ランキング形式でまるまるクルマの魅力を語ることになりました。

TBS社員としては後輩のそのプロデューサーは「安東さん。遠慮なしで1時間、思う存分クルマの魅力について語ってください!責任は僕がとりますから」と頼もしいことを言ってくれたのをいまだに覚えています。(後にフリーランスのプロデューサーになった彼に、自分の番組に出演してもらい、話を聞いた時は感無量でした)

その番組の中で私は、これまでの鬱憤?を晴らすかのように、思いのたけをマイクにぶつけました(笑)。クルマの魅力だけでなく、自動車業界の課題も含めて、1時間が一瞬に感じるほど喋り倒したのです。

ちなみに、番組に寄せられたメールの数が歴代最多だったと、次の日にプロデューサーが教えてくれました。そして番組に届いたメールのいくつかを私に転送してくれたのです。

やはり「私がそこまでクルマ好きだったのが意外だった」ということや「クルマの知識と想いの深さに引いた(笑)」という内容が多かったと記憶しています。

そして、その番組をたまたま聴いていた某自動車雑誌の編集の方が、雑誌で私の特集を組んでくださったのです。

TBSアナウンス部の奥の小さな部屋で行われたインタビューは3時間にも及びましたが、誌面は1ページもないだろうと思っていました。テレビでは、インタビューを長く収録しても放送ではちょっとだけ、ということがよくありましたので(決して良いことではありません)…。

しかし、販売された雑誌を拝見したところ、私のクルマに関する「極論」が、そのままタイトルになり、大きな写真とともに、カラー4ページにわたる大特集になっていたのです。

私が驚いたのは言うまでもありません。

そして、それを読んだある自動車ジャーナリストの方からSNSを通じてご連絡をいただき、食事をすることになり、そこでも熱くクルマに関して語らせていただきました。

それを、そのジャーナリストの方が何人かの別のジャーナリストに話し、その中のお一人が、ある輸入車販売店のイベントに、当時TBSの局アナだった私を「ゲスト」として呼んでくださったのです。

私がトークショーで紹介されて登場した時のお客様の雰囲気は、いまだにハッキリと覚えています。「え!なんでこの人がゲスト?」と皆さんの顔に書いてありました。そりゃそうです。私のことを知っていてくださったとしても、私がクルマ好き、ということは世間にはほとんど知られていませんでしたので…。

しかし、そのことがむしろ功を奏し、私のマニアックな知識と経験(500kmを無休憩で走り、一日100km走行が日常。とか、ジャーナリストの方が話題に出したクルマのスペックをその場で補足したり)をお話しすると、予想以上の反応をいただき、その販売店の方にも想定以上にご満足いただけたようなのです。

「トークショー中に、一人もその場を離れなかったのは初めてです」と言っていただいた時は本当に嬉しかったです。(お世辞だとしても)

そして自動車業界に

その2ヶ月後、そのトークショーに呼んでくださったジャーナリストの方に推薦していただき、史上初?局アナのまま、日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)選考委員を拝命しました。

当然、私は自動車業界に初めて足を踏み入れることになりましたので、右も左も分かりません。ただ、報道機関の社員としての経験はありますので、その立ち位置で、むしろ自動車業界を取材するような気持ちで、選考委員の仕事をしようと決めました。一つの業界にとっての常識は他業界から見たら非常識かもしれません。そこを観察、指摘するのも私の役割ではないかと開き直りました。

さらに、私はアナウンサーです。そのアナウンサーとしての経験やスキルをこの業界の中で活かすことはできないか、とも考えました。

ちなみに私が所属しているのは、俳優と音楽アーティストがほとんどの、いわゆる「芸能事務所」です。自動車業界とは、これまで完全に無縁でした。さらに「アナウンサー」も私一人しか所属していません。TBS時代に担当していた番組で、現事務所に所属していた俳優さんと共演させていただいたご縁で、所属することになりました。

ですので、当初は自動車業界の仕事がほとんど無かったのは言うまでもありません。

そして、自動車業界のほうでも、例えばメーカーやインポーター主催の新車試乗会に私が顔を出すようになった当初は、メーカー、インポーターの担当者も戸惑っていらっしゃって、「あのー、TBSの安東さんですよね?今日の試乗会参加名簿にお名前があったので、番組の取材かとも思いましたが、今日はメディア取材の日ではないし、お一人でいらっしゃったので混乱しておりました」というようなことを言われる日々がしばらく続きました(笑)。

その都度、私が「今年度からCOTYの選考委員になりまして、その立場で試乗会に参加させていただいています」と答える、という具合で、全ての自動車メーカー、インポーターに私のことが浸透するまでには2,3年、いや、それ以上、掛かりました…。

というのも、全てのメーカー・インポーターが、毎年新しいクルマをリリースする訳ではないので、何年間も「初めまして」の担当者にお会いすることになったのです。

それこそ、これまで試乗会に参加していたのは、クルマ雑誌の元編集者のジャーナリストの方や、ジャーナリストを兼ねているレーシングドライバーなど、基本的には自動車業界の方がほとんどでした。

あの松任谷正隆さんも長年、自動車雑誌に連載コラムをお持ちで、自動車番組に出演している実績がある方です。これまで自動車業界と完全に無縁だったアナウンサーが、試乗会に参加することなどなかったでしょう。

  • イベントで登壇する安東弘樹氏_2

本当に自動車業界全体に私のことが浸透したのは、ここ2、3年と言っても過言ではありません。COTYの選考委員になって5年以上経って、ようやく、です(笑)。私のアピール力が弱いせいでもあるのですが、浸透してきて変わったのが、自動車メーカー、インポーターから、様々なイベントの司会、MCの依頼が来るようになったことでしょう。新車発表イベントはもちろん、クルマに縁のある高級腕時計のイベント、ミニカーのイベントなど、ここ2,3年で、そういったイベントの司会が急に増えました。

自分で申し上げるのもなんですが、クルマに関しての知識と経験は、少なくとも局アナ出身のアナウンサーの中では負けない自信はあります。しかもスペック情報に関しては自動車ジャーナリストの中でも、かなり上の方だと思っております(そもそもジャーナリストとしてスペックを覚える必要はありませんが、笑)。

しかし意外に、それらの知識がMCを担当するうえで助けになったことが、これまでに何度かありました。イベントのゲストの方(俳優さんなど、著名人)が、急に質問してくるようなこともあるのです。

MCの技術以上に?自動車関係のMCを担当するうえで、私より向いている人は少ないのではないか、という自負はあります(笑)。

  • 控室前の安東弘樹氏_2

ただ前述の通り、私は「芸能事務所」に所属しています。初めて自動車メーカーからMCの依頼をいただいた際、クルマ関係の仕事に慣れていないマネージャーに、「COTYの選考委員としての立場があるので、御社の仕事を担当しても、一切、忖度はできませんので、そこを理解していただいたうえで承ります」と必ず伝えてほしいと念を押ししました。

ところが、マネージャーから逆に「事務所としては全ての会社、クライアント(クルマに限らず)の仕事を視野に入れていますので、一つのメーカーの色を出す訳にはいきません。全てのご依頼に対して、『中立的な立場』で、純粋に司会を担当させていただきます。とお伝えしますので、ご安心ください」と返されてしまいました(笑)。

そこは「芸能事務所」の方が上手でした…。

クルマを愛し続けてきたからこそ

とにもかくにも、最近クルマに関してのお仕事をいただけることが増えたのが、私としてはうれしいのです。自分の存在意義とでも言いましょうか、ありがたい限りです。

これまで、クルマを一途に愛してきて良かったと感じております。

私の特徴としては、基本的に全てのクルマを愛している。ということです。

クルマ好きの一部の方が、○○派、アンチ○○派など、対抗する傾向があるのが残念でなりません。今の主流は、電気自動車か内燃機関のクルマか、という「争い」でしょうか。

私は文字通り、全てのクルマを愛しているからこそ、あらゆるメーカーやブランドのMCが楽しいのです。MCを担当するときは、純粋にクルマ好きの気持ちで業務に向き合っています。

それだけに、これまでご依頼をいただいた皆様、あらためて有難うございました!

各自動車メーカー、インポーターの皆様、今後も愛のあるMCをお約束しますので、ご依頼、お待ちしています。(笑)

そして何より、今後、私がMCを担当するイベントなどで、お会いするかもしれないGAZOOサイトの読者の皆様、その際は何卒よろしくお願い申し上げます!

安東弘樹