水素ステーションとは?場所や価格、仕組みなどを紹介
環境に優しい「燃料電池自動車」は、ガソリンの代わりに水素と酸素の化学反応でモーターを動かしています。そのため、燃料の供給に必要となるのは、ガソリンスタンドではなく「水素ステーション」。一体、どのような設備で、全国のどこにあるかご存じでしょうか。今回は水素ステーションの基礎についてくわしく解説します。
目次
水素ステーションとは
水素ステーションとは、燃料電池自動車(FCV)の燃料である水素を供給する設備のある場所です。車の水素タンクに補給する水素ガスは、圧縮された状態で、蓄圧器に貯蔵されています。
燃料電池自動車は、水素と酸素がおこす化学反応によって発電し、モーターを回転させることで動きます。そのため、水素ガスを供給しないと、車を動かすことはできません。水素ステーションは、燃料電池自動車にとってのガソリンスタンドのような場所であるといえるでしょう。
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水素ステーションの設置場所
水素ステーションは2023年1月現在、都市部を中心に全国163ヶ所に設置されています。主に、首都圏・中京圏・関西圏・九州圏の四大都市圏と、これらを結ぶ幹線沿いを中心に整備が進行中です。
今後開所予定の地域もありますが、整備は始まったばかり。全国的に普及していくためには、まだ時間がかかるかもしれません。しかし、国も水素ステーションの建設整備を支援し普及を推進していることから、今後ますます増えていくことが予想されます。
全国の水素ステーションの場所は、マップや燃料電池実用化推進協議会のホームページなどで調べられます。
水素ステーションでの販売価格
経済産業省の「水電解技術開発ロードマップの策定に向けた課題整理」によると、今後水素の販売価格を2030年に30円/Nm3、2050年には20円/Nm3に下げることを目標にしています。今後は、今よりも安い価格で販売されることが期待できるでしょう。
水素ステーションの仕組み
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「FCV・水素ステーション事業の現状について」
水素ステーションは、水素タンクや蓄圧器など下記のような設備によって構成されています。
設備 | 役割 |
---|---|
水素タンク | 水素を製造するタンク |
圧縮機 | 水素を高圧に圧縮する機械 |
蓄圧器 | 圧縮した水素を蓄える機械 |
プレクーラー | 水素を-40℃まで冷却する機械 |
ディスペンサー | 水素を燃料電池自動車に充填する装置 |
圧縮機や蓄圧器は、装置の構造によって1台のみの場合もあれば複数台設置されている場合もあります。プレクーラーは、燃料電池自動車の水素タンクの温度が上がりすぎないようにするためのものです。プレクーラーで水素を冷却しておくことで、安全な充填を可能にしています。
水素ステーションでは、圧縮された適切な状態で保管されている水素を、ノズルつきのディスペンサーで車両に供給します。ディスペンサーには、温度や量を計測・制御する機能がついているものが多いです。水素ガスの充填時はロックがかかり、充填が完了するまではロックが外れない安全設計になっています。
定置式は、特定の場所に固定で設置されている水素ステーションです。ガソリンスタンドのようなイメージを思い浮かべるとよいでしょう。
定置式水素ステーションはさらに2種類あります。
- オンサイト式
- オフサイト式
オンサイト式は、水素ステーション内で都市ガスやLPガスなどから水素を製造し、充填する方式です。一方オフサイト式は、ガソリンスタンドのように外部から水素を運び、充填する方式を指します。
移動式水素ステーション
移動式の水素ステーションは、トラックの荷台に水素充填装置を積んだもの。定置式よりも小さなスペースに、簡単に設置できることがメリットです。まだ燃料電池自動車のインフラ設備が整っていない現状において、柔軟に水素補給ができる点に良さがあります。
「トラックで移動」というと、デリバリーのイメージが浮かびますが、デリバリーはできません。水素を供給する場所は規定の場所のみなので、そこに行く必要があります。
移動式水素ステーションにも、定置式の水素ステーションに準じた、設置場所の法制度、安全性・安全管理などが適用。法的資格を持っているスタッフが、水素の充填業務や保安体制の担保を行っています。
水素社会の実現に向けた取り組み
将来訪れるであろう水素社会に向けて、さまざまな取り組みがされています。水素ステーションの現状や、整備を進めるための取り組みについてチェックしてみましょう。
水素ステーションの現状
2014年、日本は世界に先駆けて燃料電池自動車を商用化。走るには水素が必要と、以降、水素ステーションの整備を進め、2023年1月時点で全国160箇所以上にまで増加させました。
しかし、10年近くたっても、使用される自動車の中で燃料電池自動車が占める割合も、水素ステーションの数も、水素社会の実現には足りていないのが現実。例えば、減ってきていると言われるガソリンスタンド(SS)でも、全国に29,005箇所あるなど(2021年3月末時点で)、その差は歴然としています。
燃料電池自動車の普及を進めるには、全国どこにでも水素ステーションがあり、不安なく走行できることが大切。国を挙げて水素ステーションの整備が今も進められています。
水素ステーション設置を促す補助金制度
燃料電池自動車の普及を進めるために、国は「水素ステーション整備事業費補助金」事業を実施。整備費用の一部を補助することで、水素ステーションの設置を進めることが目的です。
燃料電池自動車の普及には、水素ステーションの整備が不可欠。水素ステーションの普及が全国的に進めば、燃料電池自動車の普及も進んでいくと期待されています。
水素ステーションの整備は、水素需要が大きいと考えられる四大都市圏や、都市間をつなぐ地域などで進行中です。需要が少ない未整備地域においては、移動式水素ステーションの移設などが検討されています。政府は、2030年までに1000基の水素ステーションを設置することを目標に掲げました。
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水素ステーションに関するよくあるQ&A
水素ステーションについて、よくあるQ&Aをまとめました。販売価格や設置要件など気になる疑問点にお答えします。
Q.水素ステーションでの水素の販売価格は?
A.2023年現在、水素1kgあたり1,200円前後です。
水素の販売価格は、水素ステーションによって若干前後します。将来的には、販売価格を下げることが目標にされています。
Q.水素ステーションは全国にある?
A.2023年現在、全国への整備はまだ完了していません。
四大都市圏やこれらの地域を結ぶ都市など、水素の需要が比較的高い地域では水素ステーションの整備が進んでいます。しかし、東北や山陰など、いまだ開所されていない地域も。
政府は補助金制度を策定し、2030年までに1000基の水素ステーションを設置する目標を掲げました。
Q.水素ステーションの設置要件とは?
A.水素の品質や充填装置などに関する要件があります。
水素ステーションを開所するための要件は下記の通りです。
水素ステーションの設置要件 |
---|
|
出典:燃料電池実用化推進協議会「商用水素ステーション情報」
現在、日本各地で水素ステーションの整備が進められていますが、全国に幅広く普及するまでは時間がかかるでしょう。
Q.水素社会が実現するとどうなる?
A. 温室効果ガスの排出を全体でゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に近づきます。
水素は、水の電気分解や再利用技術などと組み合わせることで、温室効果ガスを排出しないエネルギーになります。水素エネルギーを活用することで、日本をはじめ世界各国が目指している、カーボンニュートラルの実現に近づくでしょう。
また、日本にとっては環境対策以外のメリットも。
日本はエネルギーを海外の特定地域に依存しており、国の安全保障の観点から問題視されてきました。水素は、多様な資源から製造できる物質。特定地域に依存せず、国内やその他の海外の資源からエネルギーを作ることができます。
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未来に向けて、水素ステーションについて知っておきましょう
水素ステーションは、燃料電池自動車が走行するために必要な水素ガスを充填する設備のある場所です。2023年現在、全国163ヶ所に設置されていますが、普及の範囲は限定的です。そのため、お住まいの地域によっては燃料電池自動車を使いたくても、使えないこともあるでしょう。
政府では、自治体や民間団体との連携も深めながら、水素ステーションを全国的に整備することを目標にしています。いずれ実現するであろう水素社会を見据えて、水素ステーションや燃料電池自動車についてしっかりと知っておきましょう。
[GAZOO編集部]
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