遠出前はとくに注意したい。タイヤのメンテナンスでトラブル防止

  • タイヤのトレッド

実用車からスポーツカー、また軽自動車から大型ミニバンまで、ボディを支えているのはタイヤだけ。乗用車では、接地面積は1本あたりハガキ1枚程度と言われるほど小さく、タイヤが所定の性能を発揮できないと、クルマ全体が危険な状態に陥ることもあると言える。

JAFの救助出動理由ではバーストやパンクなど、タイヤ関係が上位に入っていて、高速道路では1位、一般道でも2位となっている(2022年)。危険ではなくても、走りが不安定になったり、燃費が悪化するなどいいことはなし。

今回はそんなタイヤまわりの点検やメンテナンスについて紹介しよう。

ポイント1 空気圧は定期的にチェック

タイヤは空気が内側に入っていてこそ、性能が発揮されるもの。なにはなくとも空気圧管理が最重要項目となる。以前は給油ついでに点検をお願いできたが、セルフスタンドが普及してその機会も減っていて、タイヤ関係のトラブル発生が減らない理由のひとつと言われるほど。

セルフスタンドでも、お願いすれば見てくれるし、空気圧ゲージや空気入れは置いてあるので、慣れてしまえば自分でも点検して補充は可能だ。

肝心の指定空気圧は運転席のドアを開けたところに表示されていて、それに従うのが基本(タイヤをインチアップしたとき異なる)。空気の分子はタイヤに使われているゴムの分子よりも小さいため空気は自然に抜けていくものなので、1カ月に1回の割合で点検したほうがいい。

また、細かい点では空気圧点検はタイヤが冷えている冷間か、走って暖まった温間に測るのがいいのかという問題がある。
先に紹介したようにガソリンスタンドで測るとなると必然的に温間になるが、出発直後の家から近い近所のガソリンスタンドで測る分にはあまり気にしなくていいだろう。
その他夏や冬といった季節によっても違いはあるのだが、それよりも定期的に測って、減った分を補充することが大切だ。

  • タイヤの空気圧は運転席のドアを開けたところに記載

    指定空気圧は車種によって異なるため、自分のクルマの数値は確認しておきたい。ドアを開けたところに表示されている

  • タイヤの空気圧ゲージ

    スタンドで点検と補充をするのが一番楽。自分でチェックする場合には空気圧ゲージはひとつあると便利だし、空気は自転車の空気入れ(米式バルブ用)でも入れることはできる

ポイント2 タイヤ表面の状態を目視で確認

突然だが、愛車のタイヤをじっくりと見たことがあるだろうか? ほとんどの人はないし、見たとしても表面をなにげなく見た程度だろう。乗る頻度にもよるが、3カ月に1回程度、つまり四季の変わり目に行なっておきたいのがタイヤの外観点検だ。

まずは表面に亀裂やヒビはないかを確認。ヒビや亀裂があると走行中にそこから裂ける、いわゆるバーストにつながるのでしっかりと見ておきたい。

また釘などが刺さっていないかも同時に確認。釘が刺さっても、最近のタイヤはチューブレスタイヤなので一気には空気は抜けないので、乗っていてもわかりづらい。そのためにも点検が大切だし、少しずつ漏れるので、ポイント1の空気圧点検で1本だけ空気が大きく減っていることでも発見することがある。

  • タイヤのひび割れや傷を目視でチェック

    ヒビや亀裂がないか。釘などが刺さっていないかなど、表面の状態を目で見て確認する

  • タイヤのヒビが入っている様子

    実際にヒビが入っている状態。ここからさらに裂けたり、破裂する可能性があるので、交換したい

ポイント3 表面の減り方についてもポイントあり

タイヤといえば溝が命。溝はとくに雨の日などのウエット走行でのグリップ確保に重要な役割を果たすので、溝残りがどれくらいかをまずは確認する。

その際に基準となるのが、溝の中で一段高くなった部分で、スリップサインと呼ばれている。ここが表面に出てしまっていたらそのタイヤは寿命で、法律で定められている溝の残量1.6mmを切ってしまい車検にもパスしないので交換するしかない。

またブリヂストンによれば、性能を発揮させるためには夏タイヤで溝残量が4mm以上は必要としている。最近はタイヤも高騰しているとはいえ、無理して限界まで使うのは危険ということが言えるだろう。早めに交換するほうがいい。

そして減り具合自体にもポイントがある。まずは1本ずつ点検して、外側と内側の減り方が極端に違わないかを確認。さらに4本もしくは前後2本ずつを比較してみて、均等に減っているかも見ておく。

いずれの場合でもひどく異なる場合は、サスペンションなどの異常が考えられるので、プロに点検をお願いしたほうがいいだろう。空気圧の不良によって片減りなどが発生することもあるので、何度も言うように定期的な空気圧の点検と補充が大切になるというわけだ。

  • タイヤのスリップサイン

    溝の中で一段高くなっている部分があって、ここがスリップサイン。表面とツライチになったら摩耗の限界となった目印となる

  • タイヤのスリップサインの目印

    スリップサインがある場所のサイド部分に三角などの目印があるので、ここを目安にすれば見つけやすい

  • タイヤの偏摩耗の様子

    両サイドや真ん中だけなど、片減りが左右均等に発生することもある。この場合は空気圧管理が悪いのが原因であることが多い

ポイント4 タイヤには賞味期限もある!

溝があれば使用することができるわけではない。表面には細かいヒビが出ていたらダメだし、もし出ていなくても古いタイヤはゴムに含まれる油分が抜けてしまっているので、所定の性能を発揮することかできなくなっている可能性が高い。
簡単に言ってしまえば、ゴムにしなやかさがなくて、カチカチの状態。これでは見た目に問題なくてもグリップ力や乗り心地が低下しているのはわかるはずだ。

タイヤの寿命はタイヤメーカーによると5年ほどとされているのだが、そもそもいつ製造されているのかどうやって知ればいいのだろうか。
じつはタイヤのサイド部分に表示があって、アルファベットと4ケタの数字を組み合わせた部分の数字部分で判断できる。4523とあれば、2023年の45週に製造されたことを示している。ちなみにアルファベットは製造工場を表している。
製造された時期を目安に5年という消費期限を判断すればいいだろう。

ここまで長々と解説してきたが、空気圧を見て、外観の確認をするのはそれほど時間はかからないので、ぜひ定期的に励行してほしい。

また、タイヤが持つ性能をしっかりと最後まで使い切るには前後などでタイヤを入れ替えるローテーションも重要。クルマはフロント部分が重たいことが多くて、前輪のほうが減りが早いのが一般的。それが前後で入れ替えると減りの進行が均等化され、最後まで使い切ることができる。

財布にも環境にも優しいので、定期的にディーラーなどで入れ換えをお願いするといいだろう。

  • タイヤの製造時期表示

    この4桁の数字からいつ作られたかがわかる。この場合は2022年の第49週の製造である

(文:近藤暁史)