多様化する愛車とインターネットで無限に広がるカーライフ・・・実体験カーカルチャー<令和編>
クルマを中心としたブームやカルチャーを、昭和、平成、令和まで3回に分けて振り返るコラム。最終回は2010年代の平成後期から令和まで。そして、現在に続くカーカスタムの移り変わりと、ここまで触れていなかった『走り』以外のカーカルチャーの変遷も振り返ってみたいと思う。
- 個人的な話ではあるが、私にとって2010年前後はかなり激動の時期だった。
実は1995年から2001年まではバイクの編集部に所属していたので、90年代後半のチューニングブームが収束していく様子は外部からの俯瞰的な視点でしか見ていない。そのぶん2002年に再びチューニング誌に戻ったときは、まるで浦島太郎が玉手箱を開けたような気分だったことを覚えている。
チューン人気の衰退と同様に雑誌の売上も苦戦が続き、残念ながら2011年に休刊。私は2012年に長年勤めた出版社を退社し、フリーランスライターの道を選んだわけだ。
86&BRZ、GT-R、Zにスープラetc...スポーツカー復権の兆し!?
前回のコラムでも触れたが、2002年8月に多くのスポーツマシンが生産中止となった以降に、新たな主役となったのがスバルインプレッサWRX STIとランサーエボリューションだった。
この2台の人気を支えていたのは言うまでもなくWRCでの活躍だったのだが、2005年には三菱が、2008年にはスバルがワークス活動を終了。それとほぼ同時期に市販モデルのインプレッサはGR/GV系へ、ランサーは完全な新型のエボリューションⅩへとモデルチェンジが図られた。
だが残念ながら、パフォーマンス面の進化とは裏腹に、それまでのような勢いを維持することはできなかった。
そんななか、チューニング界の新たな救世主として2008年にデビューしたのが日産GT-R(R35)だった。車名からスカイラインがなくなり、エンジンも伝統のストレート6からV型となったが、やはりGT-Rはクルマ好きにとっては絶対的な存在。
知っての通りデビューからしばらくは「チューン禁止」という鉄壁のブロックが敷かれていたが、チャレンジスピリットに溢れるチューナーたちにより徐々に秘められていたパフォーマンスが開放されていったのだ。
海外では“ゴジラ"の愛称が付けられたR35GT-Rの実力は今も第一線級で、サーキットやドラッグレース、最高速テストなどで進化を続け、記録を更新し続けているのだ。
そして現在まで続くクルマのカスタマイズシーンで外すことのできない存在が、2012年に登場したトヨタ・86(ZN6)とスバル・BRZ(ZC6)の2台だ。
なかでも86はトヨタとしてはMR-S以来となる新型スポーツ車ということもあって、デビュー前から大きな注目を集めていた。たしかに当初は否定的な意見もあったが、サイズも価格も手頃なNAエンジン搭載のFRマシンは大人気となり、今では並ぶもののないカスタマイズの主役になっている。
このほか2010年代からの新車では、スズキのスイフトスポーツが圧倒的なコストパフォーマンスを武器に勢いを増したこと。マツダのロードスターも2015年に新型のND系となり再びユーザーを拡大したのも忘れてはならないトピックといえるだろう。
スープラやフェアレディZの新型モデルも登場したし、GRヤリス、GRカローラといったホットモデルも令和の世を賑わせている。
愛車広場でもそんな新世代のスポーツ車を愛車とするオーナーさんたちに出会う機会が増えてきましたね。
86は漫画やアニメの主役マシンとして登場するほどの人気を獲得し、続々と登場する新型スポーツカーたちがクルマ業界を牽引。毎年、年始に開催されるカスタムカーの祭典『東京オートサロン』でも、さまざまなカスタムを施された新型車たちがスポットライトを浴びている。
エコカー台頭のいっぽうで旧車ブームも!!
もちろん、スポーツカーだけではなく、1997年にトヨタから発売されたプリウスを筆頭に、ハイブリッドカーや電気自動車といった次世代のクルマたちが登場し、さまざまな進化を遂げてきたのも平成から令和においてのトピックス。
いっぽうで近年の動きとして注目すべきは、ネオクラシックと呼ばれる1980年代、1990年代を中心とした絶版旧車オーナーの増加だろう。
もちろん新車で第2世代GT-Rやシルビア、RX-7が買えた時代にも、こだわりをもってハコスカやハチロクに乗り続けている人は少なくなかったが、それにしても近年の人気と価格の高騰ぶりは正直なところ異常事態という気がする。
人気の背景にあったのがコロナ禍だったというのも皮肉な話だが、ピークは超えたという話も聞こえるようになってきたので、今後の推移も気になるところだ。
自分よりも年上の愛車に乗る若者に出会うことも増えてきたいっぽうで、エコカーを愛車とするオーナーさんに出会うことも。テスラやBYDといった海外メーカーの電気自動車に乗るオーナーさんを取材する機会がやってくる日も遠くないかもしれない。
インターネットの普及でカーライフは世界へと広がった
というわけで、ここまで3回に渡って昭和、平成、令和までを駆け足で振り返ってきたが、クルマやそのカスタマイズ以上に劇的に変化したのが、デジタル化に伴うオーナー間のコミュニケーション手段なのではないかと感じている。
私が社会に出たバブル期を振り返ってみると、今からは信じられないくらいの超アナログぶり。身近で携帯電話を持っている人なんて土屋(圭市)さんくらいで、それも平野ノラが小道具で使っているショルダーホン(笑)。
雑誌の作り方も写真はフィルム、原稿は原稿用紙に鉛筆で書くのが当たり前で、それらを印刷会社に渡す方法も、人がクルマや電車で運ぶというスタイルだった。
調べてみたら携帯電話の普及率は1993年末でわずか3%、インターネット利用率(個人)に至っては1997年で9%だったらしい。
だから当時は中古パーツの売買は雑誌を通じてというのが主流で「売りたし買いたし」のコーナーに毎号何十ページも割かれ、読者たちは人気のパーツやクルマの情報を手に入れるために発売日前に雑誌を並べるコンビニを求めてクルマを走らせていたとか。
今ならSNSを通じて一瞬でできるミーティングやツーリングの案内や連絡も雑誌の掲示板コーナーが活用されていた。ほかにもあまり公にはしたくないような集会の告知をするために、新聞のお悔やみ欄を利用して暗号(!?)で連絡していたなんて話も聞いたことがある。
いっぽうで、現在ではインターネットを通じて日本中、さらには世界中と手軽に繋がることができる。自分の愛車について世界中のクルマ好きと語り合うことができるし、流行しているカスタムやパーツの情報だって瞬時に知ることができるのだから便利になったものである。
そのほかにもチューニングバブルの時代は、今では信じられないくらいに雑誌の取材も華やかなものだったことを覚えている。なかでも、名門ジム・ラッセル・レーシングスクールに体験入校し、フォーミュラカーで3日間たっぷりとサーキットで走りを学ばせてもらったことは良き経験として忘れられない。
また、ユーノス・ロードスター(NA)を日本での発売よりも早く手に入れて企画車とするべく、アメリカまでミアータを買いに飛んだなんていうのも若き日の思い出だ。
そのころには、現在のカーライフがこんなに多様化するなんて思ってもいなかったし、冒頭の写真のように、今の愛車を電動化や水素エンジンにスワップするような時代も本当に来るかもしれない。
筆者としても、そんな令和に想いを馳せると、ますます多様なカタチの愛車を取材できそうで楽しみが尽きない。
最近は(ほぼ)ブツブツ交換でジムニーを手に入れたり、友人の形見のようなロードスターを引き取ったりと、平成のクルマを愛車としている筆者。ロードスターについては、アメリカでミアータを手に入れたことなどの名残もある感じですね。
というわけで、まだまだ昔話も尽きないが、この続きはGAZOO.comの愛車取材で各地を訪れた際にでも。どこかでお会いしたら、ぜひ気軽に声をかけてくださいね。
(文:川崎英俊)
自動車ライターの実体験カーカルチャー
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