横断歩道やそのほかの歩行者優先のルールを守ろう!・・・今一度思い出したい交通ルール①
みなさんが運転免許を取得した時、さまざまな交通法規を学んだはず。しかし運転免許を取得し日常的に運転するようになると、なんとなく他の車の流れに合わせていて、特に法規のことをあまり意識せずに走っていることも多いのではないでしょうか。
道路は車以外にもバイクや自転車、そして多くの歩行者などが利用します。だからこそ利用する人たちが同じ法規を守り、不慮の事故を防止しなければなりません。
ここでは大切な交通法規を今一度思い出し、皆さんと一緒に安全運転を心がけていきましょう。
第一回目は、横断歩道と歩行者保護について考えます。
<目次>
横断歩道では歩行者優先が大原則
ここ数年、信号機が設置されていない横断歩道において、警察が取り締まりを行っている光景を見かける機会が以前よりも増えました。警察庁が発表しているデータを見ても、それは明らか。警察では「横断歩道における歩行者優先の徹底」を掲げています。
横断歩行者等妨害等違反の取締り状況(件数)
令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
横断歩行者等 妨害等 |
229,395 | 290,532 | 325,796 | 336,504 | 312,250 |
全体 | 5,711,488 | 5,751,798 | 5,546,115 | 5,053,271 | 4,484,894 |
※警察庁HPより https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/oudanhodou/info.html
信号機がない横断歩道において、歩行者が横断歩道を渡ろうと左右を確認しているのに、車やバイクが先に横断歩道を渡ってしまう。これは違反になります。
道路交通法では第38条において「横断歩道等における歩行者等の優先」を定めています。
車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
まず第7条において、道路を通行する歩行者や車両は「信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等に従わなければならない」と定めたうえで第38条があるので、横断歩道では歩行者が最優先。信号機がある横断歩道では信号機の指示に従い、信号機がない横断歩道を歩行者などが渡っていたり、渡ろうとしている人がいたりする際は車やバイクが道を譲らなければならないことになります。
これに違反した場合は横断歩行者等妨害等になります。
違反点:2点
反則金:大型車/1万2000円、普通車/9000円、二輪車/7000円、原付車/6000円
また第38条2では、横断歩道がない交差点を歩行者が横断している際も、車やバイクは歩行者の横断を妨げて交差点を渡ることができないと定めています。
信号機がない横断歩道、横断歩道がない交差点がある道路というと幹線道路ではなく、住宅街や商店街などにある比較的道幅が細い生活道路に多いかと思います。このような道では、歩行者や自転車が横断歩道ではない場所で横断している場面に遭遇することもあります。
このような道ではスピードを控えめに。そして信号がない横断歩道が近づいたら、歩行者などを発見したらすぐに停止できるような速度での運転を心がけましょう。
自転車は横断歩道で優先されることもある?
自転車は、自転車から降りて押して歩いている場合は歩行者と同様とみなされます。そのため、横断歩道で車両は停止の義務があります。
いっぽう、自転車に乗っている状態では軽車両とみなされるため、車両の停止の義務はありません。ただし横断歩道と一緒に自転車横断帯がある場合は自転車が優先となるため、車両は停止の義務があります。
また、自転車にも区分があり「小児用の車」については歩行者の扱いとなる(道路交通法 第2条2の一)ため、車両は停止の義務があります。
「小児用の車」とは、国土交通省の「自転車等に関する法令等の規定」に、「小児用の車(6歳未満のものが乗車する程度の大きさ(車輪がおおむね16インチ以下)で、かつ走行、制動操作が簡単で速度が毎時4~8km程度しか出せない自転車)」と記載されています。
なお、自転車横断帯がなく他に歩行者がいないなど歩行者の通行の妨げとならない横断歩道は、自転車も乗ったまま横断することができます。歩行者がいる場合などは、降りて手押ししながら横断するようにしてください。
軽車両となる自転車には車両の停止義務はないとはいえ、特に自転車に乗った子供などは急に飛び出してくる可能性もありますし、自転車から降りて横断する体制になるかもしれません。どちらにしても、横断歩道は手前で停止できるような速度で進む必要がありますので、自転車であっても譲るくらいの気持ちで安全運転を心がけましょう。
歩行者が道を譲ってくれた場合はどうする?
では次のような場合、あなたはどうしますか?
信号機がない横断歩道を歩行者が渡ろうとしていたので一時停止して道を譲ったら、歩行者が「どうぞ、先に行ってください」と合図をしてきました。
歩行者とのコミュニケーションが取れているのだから、車が先に交差点を渡っても良さそうですが、道路交通法には歩行者が道を譲ってくれたときのことは書かれていません。そのため、一時停止後に歩行者が「お先にどうぞ」と譲ってくれたケースでも警察が取締りをすることがあるそうです。
報道によるとその取り締まりに納得できなかった人が弁護士に相談し、弁護士から警察署長にドライブレコーダーの映像と文書を送付。後に処分が撤回されたようです。
問題は歩行者とドライバーとのコミュニケーションがきちんと取れていなかったとき。ドライバーは譲ってくれたと思い進もうとしたのに、実は歩行者はそういう意図で合図したわけではなく、横断歩道を渡ろうとするかもしれません。
また、交差点で取り締まりをしている警察官からは、ドライバーと歩行者のやり取りが見えていない可能性も十分あります。
信号機のない横断歩道で歩行者が見えた場合は必ず一時停止して歩行者に渡ってもらう。もし歩行者が「お先にどうぞ」と譲ってくれた場合でも、他の歩行者もいるかもしれませんので、基本は先に歩行者に渡ってもらったほうがいいでしょう。
歩行者保護における一時停止や徐行が義務付けられている場面はほかにもある
横断歩道以外にも歩行者保護などの観点から守らなければいけないことは他にもあります。主な内容は以下のとおり。
■交差点(優先道路を通行している場合を除く)、踏切、横断歩道、自転車横断帯およびこれらの手前の側端から前に30メートル以内での追い越し禁止(道路交通法第30条3)
違反点:2点
反則金:大型車/1万2000円、普通車/9000円、二輪車/7000円、原付車/6000円
■歩道と車道の区別のない道路を通行している際に歩行者の横を通過するときは、歩行者との間に安全な間隔をあけなければならない。安全な間隔を開けることができない場合は徐行する(道路交通法第18条2)
※道路交通法に「安全な間隔」の規定はありませんが、警察庁の『運転免許技能試験に係る採点基準の運用の標準について』では「歩行者がこちらに気づいている場合は1m以上、気づいていない恐れがある場合は1.5m以上」となっています。
違反点:2点
反則金:大型車/9000円、普通車/7000円、二輪車/6000円、原付車/5000円
■保護者が一緒にいない児童や幼児、身体の不自由な人が歩いているときは、一時停止または徐行して通行を妨げないようにする(道路交通法第71条2、71条2の2)
違反点:2点
反則金:大型車/9000円、普通車/7000円、二輪車/6000円、原付車/5000円
■通学通園バスの脇を通るときは徐行して安全を確認する(道路交通法第71条2の3)
違反点:2点
反則金:大型車/9000円、普通車/7000円、二輪車/6000円、原付車/5000円
■乗客の乗降のために停車中の路面電車に追いついたときは、乗降が終わり、道路を横断または横断しようとしている人がいなくなるまで一時停止。路面電車に乗降する人のための安全地帯があるとき、または乗り降りする人がいない場合で路面電車と1.5m以上間隔が空いているときは徐行(道路交通法第31条)
違反点:2点
反則金:大型車/9000円、普通車/7000円、二輪車/6000円、原付車/5000円
■安全地帯の脇を通る際、安全地帯に人がいる場合は徐行する(道路交通法第71条3)
違反点:2点
反則金:大型車/9000円、普通車/7000円、二輪車/6000円、原付車/5000円
先日SNSを見ていたら、信号機のない横断歩道で一時停止した車を後ろから追い越し、横断中の歩行者と接触しそうになるというドライブレコーダーの映像が流れてきて肝を冷やしました。
言うまでもなく、これは明らかな道路交通法違反。本人は急いでいるのかもしれませんが、無理な運転が原因で事故を起こしてしまったら、目も当てられません。安全運転は車を運転するすべての人が守るべき責任です。みなさんも気持ちに余裕を持って車を楽しんでください。
歩行者は緊急自動車に道を譲る必要はない?
最後にクイズをひとつ。
サイレンを鳴らし赤色灯をつけた緊急自動車が赤信号の交差点に入り、歩行者が渡っている横断歩道に近づいてきました。次の中で歩行者が道を譲らないといけない緊急自動車はどれでしょうか。
A:パトカー
B:消防車
C:救急車
おそらくほとんどの人は「え? 全部道を譲らないとダメでしょう」と思ったはず。しかし法律的に歩行者が道を譲らないといけないと定められているのは「B:消防車」のみなのです。
道路交通法では「緊急自動車の優先」として次のように決められています。
第40条 交差点又はその附近において、緊急自動車が接近してきたときは、路面電車は交差点を避けて、車両(緊急自動車を除く。以下この条において同じ。)は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となっている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあっては、道路の右側。次項において同じ。)に寄って一時停止しなければならない。
2 前項以外の場所において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は、道路の左側に寄って、これに進路を譲らなければならない。
この内容からわかるように、緊急自動車が近づいてきた時に道を譲るよう決められているのは車両だけで、歩行者については書かれていません。ただ、消防車に関しては消防法の第26条で次のように定められています。
消防車が火災の現場に赴くときは、車馬及び歩行者はこれに道路を譲らなければならない。
一方で、法律的には違反でないとはいえ、サイレンを鳴らした緊急自動車はどれも一刻を争う状況で走行しています。もし横断歩道を渡っているときにサイレンの音が聞こえたら、急いで横断歩道を渡ったり、緊急車両に譲る合図をするなど、緊急自動車を先に通過させてください。
(文:高橋 満<BRIDGE MAN>)
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