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長野から世界へ。『ブレーキ強化』を競技車から市販車へと普及させたENDLESS・・・カスタマイズパーツ誕生秘話②
華やかなレースシーンで活躍する『ブルーパンサー』のデザインでおなじみのマシン。ブレーキ系アフターパーツメーカーとして、国内でのトップの実力を誇るメーカー『ENDLESS(エンドレス)』の手がけた車両たちである。
『エンドレス』という社名には「常に進化を止めることなく、いつまでも存在し続ける会社でありたい」という創業者の強い思いが込められているそうで、オリジナルの各種ブレーキパッドを皮切りに、ブレーキフルード、ブレーキキャリパー&ローター、ブレーキラインなど、ブレーキ関連ほぼすべてのアイテムを網羅するメジャーブランドへと成長を遂げ、今なお進化を続けている。
ここでは、そんなエンドレスの創業当時から現在にいたるまでのパーツ開発に込めた想いや誕生秘話とともに、ブレーキ関連パーツについても時代の流れとともに振り返ってみたい。
「ブレーキを強化する」という流行のキッカケはジムカーナやダートトライアル
1970年代、国内ではモータースポーツ人気が活況となり、全国各地のサーキットは毎週末のように観客の歓声に包まれた。そして、当時からレース関係者の間では、速く走るためのブレーキ性能の重要性は唱えられていたものの、一般のクルマ好きにはまだ本格的には波及していなかった。
しかし1980年代に入ると『他のクルマ好きとは一線を画したい』と考える走り好きのユーザーが現れ、その受け皿となったのが、ジムカーナやダートトライアルといった単走でタイムを競うモータースポーツだった。簡単な座学と実技講習を受けると取得できる『国内B級ライセンス』の気軽さも手伝い、世の走り好きたちは通称『JAF戦』と呼ばれる単走競技に正式エントリーして100分の1秒を競い合ったのだ。
そして、これらの競技は総じてクルマに施せる改造範囲が狭いのが特徴であり、そこで注目されたのが、数少ない交換部品として許可されていた『ブレーキパッド』だった。
そんなモータースポーツ参加の流行とともに、参加者のクルマにはモータースポーツ由来のステッカーが貼られていった。その波及効果は凄まじく、街中でも頻繁にそういったクルマたちを見かけるようになったほどである。
すると今度は若葉マークの若者達が、そんなジムカーナ仕様のクルマに憧れを持つといった循環が起こりはじめ、その中でも特に多く貼られていたブレーキパッドメーカーのステッカーは『まずはブレーキパッド交換からでしょ!』といった心理作用を与えるのに一役買うことに。消耗品のため合法的に交換が認められていたこともあり、スポーツパッドへの交換が流行り出したというワケだ。
そして『ブレーキパッドを換える』という手段が広く普及していくに従って、制動力や安全性まで含めてブレーキの重要性が知れ渡っていくことになる。
ブレーキパッドと同時にフルードも開発していたエンドレス
1970年代にジュニアフォーミュラのFL500やフロンテやサニーなどで、自らもレースに参戦していた創業者である花里 功氏は、そのレース経験から『より速く走るにはブレーキが重要なファクターになる』と、その重要性をいち早く感じていたという。
ところが、舶来品も含めてより良いブレーキパッドを探し回るも選べるほどの種類はなく、お眼鏡にかなうブレーキパッドを見つけることはできなかった。『ならば自分が気に入るパッドを作ろう』と一念発起。1986年にエンドレスを創業することとなった。
その行動は素早く、翌年の1987年には当時日本の最高峰レースカテゴリーであった『F3000』でブレーキパッドのテストを開始。ブレーキの重要性について長年考え続けていた花里氏の見識と勘所は鋭く、同年、設立わずか1年という期間でF3000での装着率が70%という、驚きのシェアを獲得するに至った。
さらに翌年となる1988年には、長野県佐久市に新社屋を完成させ、市販用ブレーキパッドの量産体制を確立。サニー、ブルーバードといった当時の人気車種、さらには流用パーツとして人気だったMK63キャリパー用などから順にラインアップの拡大が図られていったという。
「ブレーキパッドを強化すると、熱量が増えてブレーキフルードが沸騰する『ベーパーロック』が発生してしまうので、ブレーキフルードもエンドレス創業前から開発に取り組んでいたそうです。創業から6年後には市販車向けブレーキフルードを商品化しました」と教えてくれたのはエンドレス広報の末吉さん。
こうした『ないものは作る!』の精神と行動力によって、その後も、単に“効く”というだけでなく、各ユーザーが走る各ステージでも最適化できるようにと、ローター温度を指標として、最良の制動となるようにパッドの成分配合を変え、ドライバーが意のままにコントロールできるブレーキパッドの数々を商品化していったのだ。
ブレーキ試験機で赤く光るブレーキローター。スーパー耐久のレーシングカーのブレーキローターは600~700度に達する。24時間レースのナイトセッションではローターの焼けているところも見ることができる。
スポーツ用ブレーキパッドの開発から始まったエンドレスのブレーキに対するこだわりは『ブレーキキャリパー』や『ブレーキローター』を自社開発することへと駒を進めていく。
ブレーキチューンの需要レベルが高くなってきたのと同時に、年々高まる馬力や重たくなる車重に耐えかねた車両がクラッシュする例も増えてきたことから「そういった事例を減らしたい」とブレーキシステムの開発に着手したという
1992年にはブレーキ試験機を導入するなど試行錯誤を積み重ね、1998年にスカイラインGT-R(BNR32)用などに向けたブレーキシステムの発売を開始した。
「そんな自社製品を装着したBNR34が2002年のスーパー耐久で初めてシリーズチャンピオンを獲得したんです。その時につけていたゼッケンが『3』だったことから、今でも選べるときには3や13のゼッケンを使うようにしています」というお話からは、開発における苦労が結実した喜びが伝わってくる。
堅牢であり高性能なブレーキシステムはモータースポーツ育ち。キャリパー本体は2ピースモデルだけでなく、モノブロックもラインアップされる。
そして、2003年にはF1チームがエンドレス製のブレーキフルードを採用。同時期からWRC(世界ラリー選手権)でもブレーキシステムが使用され、2020年にはル・マン24時間耐久レースで優勝するなど、数々のタイトル獲得に貢献してきたのだ。
絶対的なストッピングパワーはもちろんのこと、過酷な環境下でもドライバーが求めているフィーリングと“いかに合致させ続けられるか”といったシビアな開発、そしてレーシングドライバーからのインプレッションを基に改良が続けられ、現在もその進化は続いている。
東京オートサロン2024には40系ヴェルファイア ハイブリッドを展示するなど、さまざまな車種に向けた展開も進めている。
そうして性能が突き詰められたブレーキシステムは、市販車向けに調整されマーケットへとリリースされていく。
今やそのターゲットはスポーツカーだけにとどまらず、車重のあるミニバンや多くの人数を乗せるファミリーカー、仕事の機材を乗せて走り回る商用バン&ワゴン車などにまで波及しているのである。
完璧にレストアされた歴代の名車達が並ぶ『130COLLECTION』は、クルマ好きなら一度は訪れてみたいスペース。『ブルーパンサー』の生みの親であるデザイナー鈴木敏充氏の作品も飾られている
モータースポーツ生まれのエンドレスは「ブレーキ性能を生かすためにはサスペンションも重要だ」と考え、1995年から『FUNCTION(ファンクション)』と名付けられたサスペンションキットシリーズも展開。レーシングカーにだけではなく、市販車のストリート用やスポーツ走行用、そしてカスタムオーダーメイドまで幅広いユーザーに対応してくれる。
さらに『130COLLECTION』では、長年レストアしてきた各種名車や、レーシングカーの展示がされており、こだわりのコーヒーを味わえるカフェスペースも設けられるなど、クルマ好きの新スポットとしても人気となっている。
「コンピューター解析精度の向上だったり、最新の5軸加工機を導入したりと、常により良いものを作るためにアップデートを行なっています。電気自動車やハイブリッドカーのレースなども行われるようになってきていますし、そういった需要への対応などもすでに取り組みはじめていますよ」と広報担当の末吉さん。
エンドレスの製品は、これからも進化を止めることなく、ユーザーを足もとから支え続けてくれることだろう。
取材協力:エンドレスアドバンス
[GAZOO編集部]
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