追い越しと追い抜きの違いとルール、覚えていますか?・・・今一度思い出したい交通ルール②

  • 追い越しと追い抜きの違いとルール、覚えていますか?・・・今一度思い出したい交通ルール

みなさんが運転免許を取得した時、さまざまな交通法規を学んだはず。しかし運転免許を取得し日常的に運転するようになると、なんとなく他のクルマの流れに合わせていて、特に法規のことを意識せずに走っていることも多いのではないでしょうか。

道路はクルマ以外にもバイクや自転車、そして多くの歩行者などが利用します。だからこそ利用する人たちが同じ法規を守り、不慮の事故を防止しなければなりません。

ここでは大切な交通法規を今一度思い出し、皆さんと一緒に安全運転を心がけていきましょう。

第二回目は、「追い越し」と「追い抜き」について考えます。

「追い越し」と「追い抜き」の違いは?

  • 追い越しが終わり走行車線に戻る車両

一般道や高速道路を走っている際、前を走る遅いクルマを追い越すことがあります。「追い越し」と同じような言葉で「追い抜き」がありますが、みなさんはその違いを覚えていますか?

「追い越し」は道路交通法第2条の21で以下のように定められています(法律上は追越し)。

追越し:車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。

つまり、前のクルマの前に出るために進路変更(車線変更)し、追い越した後に元の車線に戻ることを「追い越し」と言います。

一方、進路変更は行わずに前を走るクルマの前に出ることを「追い抜き」と言います。追い抜きは追い越しと区別するために使われる言葉と考えていいでしょう。

追い越しをする際は、なるべく早く相手のクルマを追い越して元の車線に戻りたいもの。だからといって制限速度を超えて追い越しを行えばスピード違反になります。

速度超過をした際の反則金は以下の通りです。

大型車 普通車 二輪車 原付車
高速道路35km/h以上40km/h未満 4万円 3万5000円 3万円 2万円
高速道路30km/h以上35km/h未満 3万円 2万5000円 2万円 1万5000円
25km/h以上30km/h未満 2万5000円 1万8000円 1万5000円 1万2000円
20km/h以上25km/h未満 2万円 1万5000円 1万2000円 1万円
15km/h以上20km/h未満 1万5000円 1万2000円 9000円 7000円
15km/h未満 1万2000円 9000円 7000円 6000円

また、速度超過をした際の違反点は以下の通りです。
■50km/h以上:12点
■30km/h(高速道路は40km/h)以上50km/h未満:6点
■25㎞/h以上30km/h(高速道路は40km/h)未満:3点
■20㎞/h以上25km/h未満:2点
■20㎞/h未満:1点

30km/h(高速道路は40km/h)以上の速度超過は一発免停になります。また、行政処分前歴によって、免停となる点数や期間にも違いがあるので注意が必要です。

さらに、30km/h(高速道路は40km/h)以上の速度超過は行政処分ではなく刑事処分になるため、簡易裁判所で罰金命令が言い渡され、6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられます。略式命令を受けた人が申し立てた場合やより悪質な速度超過の場合は、正式裁判となる場合もあります。

追い越し禁止の場所や標識の補助標識、車線による違い

  • トンネル内は追い越し禁止場所

では、追い越しが禁止されているのはどのような場所でしょうか。

道路交通法第30条で追い越し禁止の場所は以下のように規定されています。

●道路標識等により追い越しが禁止されている道路
●道路の曲がり角付近
●上り坂の頂上付近
●勾配の急な下り坂
●トンネル(車両通行帯の設けられた道路は除く)
●交差点、踏切、横断歩道、自転車横断帯およびこれらの手前から30m以内の場所

追い越し禁止の場所には基本的には道路標識などがあるはずですが、ない場合(見落とした場合)でも上に記した場所では追い越しをしてはいけません。

そもそもなぜ追い越し禁止かというと、危険だから。登り坂の頂上付近やトンネル内は対向車線から接近するクルマが確認しづらいですし、交差点や踏切などはさまざまな危険が潜んでいます。

注意しなければいけないのは、「追い越し禁止」の標識がある場所でも、何が禁止されているかが異なること。というのも、追い越し禁止の標識の下に補助標識があるかないかで、標識の意味が変わってくるのです。

  • 追越し禁止の補助標識

追い越し禁止の標識の下に「追越し禁止」と書かれた補助標識がついている場合は、一切の追い越しが禁止されています。

  • 追越し禁止の標識

追い越し禁止の標識のみ(補助標識がない)の場合は、道路の右側にはみ出して追い越しすることが禁止されています。逆に言えばはみ出さなければ追い越しすることができます。原付きなどを追い越す際、道路の右側にはみ出さないよう注意してください。

また、道路に書かれたセンターラインの種類によっても認められている追い越しの仕方が変わってきます。

  • 黄色の実線のセンターライン

センターラインが黄色の実線の場合は、センターラインの右側(対向車線)にはみ出しての通行が禁止されています。一切の追い越しが禁止されている場所でなければ、はみ出さないで追い越しをすることは可能です。

  • 白い実線のセンターライン

白い実線のセンターラインは片側6m以上の幅がある道路に引かれています。白い実線も右側(対向車線)にはみ出して追い越しすることはできません。

  • 白い破線のセンターライン

白い破線のセンターラインは右側(対向車線)にはみ出して追い越しすることが認められています。
なお、白い破線と黄色い実線が両方引かれている場合は、白い破線側からであれば右側にはみ出して追い越ししても違反にはなりません。

追い越しをする際のルールと禁止事項

  • 2車線の高速道路

追い越しにはほかにもさまざまなルールがあります。

■追い越し車線を走り続けるのはNG

道路交通法は、第20条で車両通行帯(車線)について定めています。

第20条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によって指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となっているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

これは、片側2車線の道路では左側の車線を走り、片側3車線以上の道路ではもっとも右側以外の車線を走りなさいという意味です。

そして第20条3において、追い越しについて定めています。

3 (前略) 追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。

これは追い越しをする際は「これまで走っていた車線の右側から追い越すこと」という意味です。

片側2車線の道路は右側の車線、片側3車線以上の道路はもっとも右側の車線は本来通行が認められていませんが、追い越しは右側から行うため通行できることになります。これが「追い越し車線」と呼ばれる所以です。

追い越し車線は走り続けることが認められていないので、追い越しが終わったら元の車線に戻らなければなりません。追い越し車線を走り続けるのは「車両通行帯違反」となります。
違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円、原付車/5000円

なお、追い越し車線というと高速道路をイメージすると思いますが、道路交通法第20条には高速道路に限定する記述がありません。つまりこれは一般道にも当てはまります。

■左側からの追い越しはNG

前述したように追い越しは「その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」と定められています。片側3車線以上の道路で右側の車線にクルマがいて左側の車線が空いているからといって左側から追い越すと「追越し違反」となります。
ただし、右折待ちで停車している車両を左側車線から追い越す場合など例外もあります。

違反点:2点
反則金:大型車/1万2000円、普通車/9000円、二輪車/7000円、原付車/6000円

■追い越しされる際に妨害するのはNG

後ろを走るクルマが自分のクルマを追い越そうと右側車線に出た場合、急にスピードを上げたりして追い越しの邪魔をするのは「他の車両に追いつかれた車両の義務」違反になります。

第27条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

後ろから速度が速いクルマが近づいて追い越しをするとわかった場合は、むやみにスピードを上げてブロックするのはやめましょう。
違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円、原付車/5000円

■前のクルマが追い越そうとしているときに自分も追い越すのはNG

前を走るクルマに追いつき、追い越し車線に出ようとした際に、前のクルマがさらに前を走るクルマを追い越そうと右ウインカーを出す場合があります。この場合は前のクルマの追い越しが終わるまで待たなければなりません(二重追い越しの禁止)。

第29条 後車は、前車が他の自動車又はトロリーバスを追い越そうとしているときは、追越しを始めてはならない。

複数台のクルマが入り混じって追い越しをすると道路が混乱し、事故に繋がりかねません。追い越しを始める前には周囲の状況をよく確認してから行いましょう。もしルームミラーやバックミラーを見た際に後ろのクルマがすでにウインカーを出して追い越しを始めている場合も追い越しが終わるまで待たなければなりません。
違反点:2点
反則金:大型車/1万2000円、普通車/9000円、二輪車/7000円、原付車/6000円

追い抜きの際もしっかりと安全に注意

車線変更を伴わない「追い抜き」は道路交通法で禁止されていません。そのため、複数車線ある道路で、左側の車線のほうが流れていて右側のクルマを追い抜くという状況もあります。

この場合、右側の車線を走るクルマが急に車線変更してこないかなどに注意して追い抜くようにしましょう。

追い越しや追い抜きは余裕を持って、無理せず行うことが大切

このように、追い越しにはさまざまなルールが定められています。その理由は、追い越しに危険が潜んでいるからでしょう。
また追い抜きもルールが定められていなくても、危険な状況が想定されます。

道路には多くのクルマが流れに合わせて走っています。追い越しや追い抜きは、この流れよりもスピードが出る可能性があるため、操作や判断を誤ると円滑な流れを遮り事故に繋がる可能性があります。

追い越しや追い抜きをする際は余裕を持って安全に行うようにしてください。

(文:高橋 満<BRIDGE MAN>)

今一度思い出したい交通ルール