実は違反かも!? 『駐車』と『停車』の違いとルールをおさらい・・・今一度思い出したい交通ルール③
みなさんが運転免許を取得した時、さまざまな交通法規を学んだはず。しかし運転免許を取得し日常的に運転するようになると、なんとなく他のクルマの流れに合わせていて、特に法規のことを意識せずに走っていることも多いのではないでしょうか。
道路はクルマ以外にもバイクや自転車、そして多くの歩行者などが利用します。だからこそ利用する人たちが同じ法規を守り、不慮の事故を防止しなければなりません。
ここでは大切な交通法規を今一度思い出し、皆さんと一緒に安全運転を心がけていきましょう。
第3回目は、「駐車」と「停車」について考えます。
<目次>
駐車監視員制度が導入されてから違法駐車は減少
『駐車』と『停車』は何が違う?
駐停車禁止場所
駐車禁止場所
自転車専用通行帯に駐停車するのは違反?
歩道に乗り上げて駐停車するのは違反!
駐車違反をした運転者が出頭しなければ使用者責任が問われる
故障でクルマを動かせなくなった場合も駐車違反になる?
駐車監視員制度が導入されてから違法駐車は減少
内閣府がまとめた『令和5年交通安全白書』によると、令和4年(2022年)中の車両等の道路交通法違反(点数告知にかかる違反を除く)の取締り件数は505万3271件。そのうち、もっとも多かったのは一時停止違反で146万6131件、次に多かったのは最高速度違反で93万2260件でした。駐(停)車違反は15万9258件で7番目の件数。全違反の3%ほどの数でした。
実は筆者は駐停車違反の件数がベスト3に入るのではないかと思いこのデータを探したので、正直意外に感じました。でもよく考えてみると、筆者の居住地でもかつては駅前の道路の路肩は違法駐車の車両で埋め尽くされていたのに、最近は配達などの車両がごく短時間停車している程度です。
違法駐車車両が激減したのは、2006年からスタートした駐車監視員制度が大きいでしょう。それ以前は駐車違反の取り締まりというと巡回している警察官が違法駐車車両を発見するとタイヤと路面にチョークで線を引いて(クルマが動いていないことを確認するのが目的)、しばらくして戻ってきても車両が動かされていないと駐車違反となり、駐車違反取り締まりを行ったことを通知する“輪っか”が付けられました。ドライバーは警察署や交番に出頭して輪っかを外してもらい、そこで違反切符が切られました。
駐車監視員制度が導入されてからは輪っかや悪質な違法駐車車両に付けられた車輪止めは廃止され、新たに『放置車両確認標章』が貼られます。
駐車監視員は違法駐車を発見すると、端末に駐車車両情報を入力。そして放置車両確認標章をフロントガラスに貼り、駐車車両を撮影。所要時間は5分前後で、今では少しの猶予もなく駐車違反となってしまいます。
『駐車』と『停車』は何が違う?
違法駐車と一口に言っても違反の種類はさまざまです。まず知っておきたいのが『駐車』と『停車』の定義です。道路交通法では駐車と停車を以下のように定めています(第2条18と19)。
■駐車
車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止(特定自動運行中の停止を除く。)をし、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態。
■停車
車両等が停止することで駐車以外のもの。
上の内容を整理すると、駐車の要件は次の3つの状態になります。
①継続的に停止している状態
②運転者が離れて直ちに運転できない状態
③ただし、人の乗り降りや5分以内の荷物の積み降ろしは除く
そして停車は、人の乗り降りや5分以内の荷物の積み降ろし、もしくはクルマは停まっているけれど運転者がただちに運転できる状態を指します。
「停まっていても車内に人が乗っていれば取り締まられることはない(駐車違反にならない)」と話す人もいますが、それは間違い。仮に人が乗っていてもその人が免許不保持で運転できないのであれば②に該当し、運転者が乗車していてもクルマを停め続けたり、人の乗り降りや5分以内の荷物の積み下ろし以外で停まっている場合は①に該当するため『駐車』とみなされます。エンジンを始動させた状態かどうか、ハザードランプを点滅させているかどうかも関係ありません。
■駐停車禁止場所
駐車禁止場所では駐車のみが禁止されているので停車は可能。駐停車禁止場所では駐車も停車もできません。駐停車禁止場所は道路交通法第44条で以下のように定められています。
●駐停車禁止の標識や標示のある場所
●交差点および交差点の端から5m以内の場所
●道路の曲がり角から5m以内の場所
●横断歩道および横断歩道の端から前後に5m以内の場所
●自転車横断帯および自転車横断帯の端から前後に5m以内の場所
●踏切および踏切の端から前後に10m以内の場所
●路面電車の軌道敷内
●バスや路面電車の停留所を示す表示柱または表示板から10m以内の場所(運行時間中のみ)
●道路に設けられた安全地帯の左側および前後10m以内の場所
●坂の頂上付近や勾配の急な坂
●トンネル
■駐車禁止場所
そして駐車禁止場所は道路交通法第45条で以下のように定められています。
●駐車禁止の標識や標示のある場所
●駐車場・人の乗降や貨物の積み下ろし施設などの自動車用出入り口から3m以内の場所
●道路工事が行われている区域の端から5m以内の場所
●消防用器具の置き場や消防用防火水槽・これらの道路の接する出入り口から5m以内の場所
●消火栓・指定消防水利の標識がある位置、消防用防火水槽の給水口や吸管投入孔から5m以内の場所
●火災報知器から1m以内の場所
駐車違反で取り締まられた場合、同じ場所でも『放置駐車』か『非放置駐車』かで反則金の額が異なります。放置駐車は道路交通法第51条4項で「運転者がこれ(違法駐車車両)を離れて直ちに運転することができない状態にあるもの」と定められています。
自転車専用通行帯に駐停車するのは違反?
2008年6月1日の改正道路交通法施行以降、左側に自転車専用の通行帯であることが書かれた道路が増えました。自転車専用通行帯は路面が青や茶色で塗装されていて、自転車のマークや「自転車専用」という文字が書かれています。そして自転車専用通行帯であることを示す標識も設置されています。
自転車専用通行帯は文字通り自転車専用のレーンなので、駐車することはできません。ただ、駐停車禁止区間ではない場合、停車は可能となります。
自転車専用通行帯と似たような表示に、青矢印で自転車が通行すべき部分と方向を示した『自転車ナビライン』と、白い矢印で自転車が通行すべき部分と方向を示した『自転車ナビマーク』があります。
警視庁のHPによると、これらは自転車運転者および自動車ドライバーに対して自転車の通行方法を分かりやすく周知し、実効性を高めることを目的として設置されたものであり、新たな交通方法や罰則を定めた道路標示ではありません。
ただ、自転車ナビラインや自転車ナビマークが書かれた道路はそもそも駐車禁止であることがほとんど。ここにクルマを駐車すると自転車は駐車車両を避けるためにクルマの通行帯に出なければいけないので危険です。これらの場所への駐停車は避けるようにしましょう。
歩道に乗り上げて駐停車するのは違反!
ガードレールなどがない道路で、通行するクルマの邪魔にならないようにと歩道に片輪を乗り上げて駐車しているクルマを見かけることがあります。
道路交通法では停車または駐車の方法について以下のように書かれています。
車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない(第47条2)
歩道に乗り上げるのは、道路の左側端を越えているため違反となるうえ、他の交通を妨げる場合があるためやめましょう。
「路肩」と「路側帯」の違いと駐停車の方法
よく「路肩」という言葉は聞きますが、道路交通法で取り締まりの対象となるのは「路側帯」での駐停車です。そもそも「路肩」と「路側帯」はどのように違うのか、また駐停車する際のルールについては、下記の記事にて詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
駐車違反をした運転者が出頭しなければ使用者責任が問われる
駐車違反をしてしまい放置車両確認標章がクルマに貼られていたら、運転者は警察署や交番に出頭しなければなりません。出頭すると交通反則切符が切られて反則金の納付書を渡されるので、反則金を納付すれば手続きは終了します。
運転者が出頭しなかったり、出頭しても反則金を納付しなかった場合は駐車違反をしたクルマの『使用者の責任』が追求されることになり、使用者の住所に弁明通知書と放置違反金仮納付書が送付されます。
もし使用者に弁明の事由があるのであれば、警察に弁明書を提出できます。弁明の事由がない場合は使用者が『放置違反金』を仮納付。仮納付した場合は放置車両確認標章が貼られた翌日から30日経過すると公安委員会の掲示板に『放置違反金公示納付命令書』が掲示されます。これにより使用者に『放置違反金納付命令』が出され、仮納付した金額が放置違反金に充てられます。
注意が必要なのは使用者に弁明通知書と放置違反金仮納付書が送付されたとき。このケースでは交通反則切符が切られないため、「点数が引かれないから」と考える人もいるようです。しかしこれは大きな間違い。
神奈川県警のHPによると、当該納付命令の原因となる違反が行われた日(基準日)の前6ヶ月以内に一定回数以上の納付命令を受けていると、そのクルマを“運転すること”“運転させること”を禁止する措置(車両の使用制限命令)が取られます。車両の使用制限命令の期間は普通自動車で2ヶ月間になります。
前歴(車両の使用制限命令)の回数 | なし | 1回 | 2回以上 |
放置違反金納付命令の回数 | 3回 | 2回 | 1回 |
たとえば家族で使っているクルマだと、駐車違反をした人以外もそのクルマを運転することができなくなります。また、使用者が放置違反金を滞納して公安委員会からの督促を受けた場合、滞納が解消されないと車検を受けることはできません。
車両の使用制限命令が出される前には車両の使用者が出頭して意見を述べたり証拠書類などを提出(または出頭に代えて陳述書を提出)する『聴聞』が行われます。聴聞の結果、車両の使用制限処分の免除や軽減を受けられることもあります。
聴聞を欠席して陳述書も提出がない場合は、使用制限命令に関する意見がないものとみなされて手続が進められ、使用制限命令を受けることとなります。使用制限命令は対象車両の本拠の位置を管轄する所長が行い、被処分者(または代理人)立ち会いのもとで『運転禁止標章』がクルマに貼り付けられます。
故障でクルマを動かせなくなった場合も駐車違反になる?
長くクルマを運転していると、クルマに突然トラブルが発生してその場から動かせなくなることがあります。筆者も愛車の冷却液が漏れて、オーバーヒートによりクルマを動かせなくなったことがあります。このような“不可抗力”の場合、駐車違反は免除されるのでしょうか。
結論は“NO”。たとえ動かすことができなくなったクルマでも、駐車禁止場所などにクルマ停めて、運転者がクルマを離れてただちに運転することができない状態なら、放置駐車違反になります。
故障車を路側帯や路肩に停めたら、すぐにレッカーなどを依頼してすみやかにクルマを動かしましょう。
(文:高橋 満<BRIDGE MAN>)
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