駐停車時に正しいのは左ウインカー? ハザード? 正しい合図を再確認・・・今一度思い出したい交通ルール

  • 駐停車時に正しいのは左ウインカー? ハザード? 正しい合図を再確認

みなさんが運転免許を取得した時、さまざまな交通法規を学んだはず。しかし運転免許を取得し日常的に運転するようになると、なんとなく他のクルマの流れに合わせていて、特に法規のことを意識せずに走っていることも多いのではないでしょうか。

道路はクルマ以外にもバイクや自転車、そして多くの歩行者などが利用します。だからこそ利用する人たちが同じ法規を守り、不慮の事故を防止しなければなりません。

ここでは大切な交通法規を今一度思い出し、皆さんと一緒に安全運転を心がけていきましょう。

第5回目は、運転中に他の車や歩行者などに出す『合図』についておさらいしましょう。

ウインカーは右左折や車線変更が終わるまで出し続ける

  • ウインカー操作

右左折や車線変更をする際は、ウインカー(方向指示器)を使って自分の動きを周囲のクルマや歩行者などに伝えます。みなさんが運転免許を取得するために教習所に通った際にウインカーの出し方を学んだはずですが、現在でも正しくウインカーを使っていますか?

街なかや高速道路を走っていると、ウインカーを一瞬だけ点滅させて車線変更をしたり、信号が青になって左折を始めてからウインカーをつけるクルマに遭遇することがあります。中にはウインカーを出さずに車線変更や右左折をするクルマもいたり……。当然ですが、このような使い方は正しくありません。

ウインカーをはじめ、運転者が周囲に出す合図は、道路交通法第53条1項において以下のように定められています。

第53条 車両(自転車以外の軽車両を除く)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。

  • 右折するクルマ。右折が終わるまでウインカーは出し続ける必要がある

運転者はウインカーなどを使って周囲に合図をする際に行為が終わるまで合図し続けなければならないことから、ウインカーを一瞬だけ点滅させて車線変更をするのは正しい合図を行っていないので道路交通法違反(合図不履行)になります。もちろんウインカーを出さずに車線変更するのも合図不履行違反になります。

違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円、原付車/5000円

実は、ウインカーの消し忘れは違反

気をつけなければいけないのは、ウインカーの消し忘れ。高速道路などで車線変更をした後にウインカーを点滅させたまま走行しているクルマを見かけたことがあるでしょう。道路交通法第53条4項には次のように定められています。

車両の運転者は、第1項又は第2項に規定する行為を終わったときは、当該合図をやめなければならないものとし、また、これらの規定に規定する合図に係る行為をしないのにかかわらず、当該合図をしてはならない。

つまり車線変更が終わったのにウインカーを点滅させたまま走り続けるのは正しい合図の仕方ではないので、違反(合図制限違反)になり取り締まりの対象になってしまうのです。

違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円、原付車/5000円

右左折時とUターンでは交差点の30m手前からウインカーを出す

  • 市街地の道路

合図の方法については、道路交通法施行令第21条で定められています。

第21条 法(※)第53条第1項に規定する合図を行う時期及び合図の方法は、次の表に掲げるとおりとする。
※道路交通法

合図を行う場合 合図を行う時期
左折するとき その行為をしようとする地点(交差点においてその行為をする場合にあっては、当該交差点の手前の側端)から30メートル手前の地点に達したとき
同一方向に進行しながら進路を左方に変えるとき その行為をしようとする時の3秒前のとき
右折し、又は転回するとき その行為をしようとする地点(交差点において右折する場合にあっては、当該交差点の手前の側端)から30メートル手前の地点に達したとき
同一方向に進行しながら進路を右方に変えるとき その行為をしようとする時の3秒前のとき

(道路交通法施行令第21条より抜粋)

交差点で右左折やUターンをする際は、交差点手前の端から30m手前でウインカーを出し始めます。そして右または左への車線変更では、車線変更を行う3秒前からウインカーを出さなければなりません。信号待ちをしている一番前のクルマが青信号になってからウインカーを出したり、ウインカーを出してすぐ車線変更を行ったりするのは合図不履行違反になります。

駐停車時は左にウインカーを出して止まったらウインカーを消す

  • ウインカーレバー

では、道路の脇に駐車や停車を行う際にはどのような合図をするのが正しいのでしょうか。ハザードランプを点けながら減速するクルマ、左ウインカーを点滅させて駐車しているクルマを見かけますが、どちらも正しい方法ではありません。

道路脇の路肩・路側帯に駐停車する際はどのように合図を出せばいいのでしょうか。ここでは駐車禁止・駐停車禁止ではない道路の場合を想定して解説します。

駐停車したいと思ったら、まずは3秒前から左ウインカーを出して周囲に自分の意志を知らせます。そして道路交通法において行為が終わったら合図をやめなければならないと定められているので、駐停車したら左ウインカーを消すのが正しい方法になります。

駐停車中にハザードランプを点滅させる場合

そして駐停車した後は、時間帯と道路状況によって合図の方法が定められています。

自動車(大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車を除く)は、法(※)第52条第1項前段の規定により、夜間、道路(歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道)の幅員が5.5メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示灯又は尾灯をつけなければならない。(後略)
※道路交通法

  • 駐停車のウインカーやハザードの手順

後方から走ってくるクルマが駐停車している車両の存在に気づくよう、夜間に幅5.5m以上ある道路で駐停車する際はハザードランプを点滅させたりテールランプを点灯させたりしなければなりません。

では、車道幅員5.5m以上の道路とはどういうものなのでしょうか。『道路標識、区画線及び道路標示に関する命令』を見ると、「車道中央線」(センターライン)の定めの部分に「車道の幅員が5.5m以上の区間内の中央を示す必要がある車道の中央」という説明があります。

センターラインを引くということは、後ろからだけでなく前方からもクルマがやってきます。だからこそ周囲にクルマが止まっていることを周知させるためにこの法律が定められたのでしょう。逆に日中や幅員5.5m未満の道路においては、ハザードランプを点滅などの定めはありません。

  • ハザードランプ(非常点滅表示灯)のスイッチ

ちなみに道路交通法施行令でハザードランプの点滅が定められているのは、上で紹介したもの以外に、「通学通園バスは、小学校等の児童、生徒又は幼児の乗降のため停車しているとき」(第26条の3)のふたつだけ。その他、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律において、「(液化石油ガスの)充てん作業中は、駐車ブレーキをかけ、非常点滅表示灯を点灯すること」と定められています。つまり、乗用車でハザードランプの使用が定められているのは夜間の駐車のみになります。

ただ、ハザードランプは“非常事態が起こっていること”を周囲に知らせるのも大切な役割。故障や燃料切れなどでやむを得ず駐車する場合は、ハザードランプを点滅させましょう(高速道路では停止表示器材を併用)。故障でレッカー車にけん引される場合なども、後方にけん引されていることを知らせるのにハザードランプは有効です。

クラクションは道路標識で指定された場所以外では原則使用禁止

  • 「警笛鳴らせ」の標識

ウインカーやハザードランプ、尾灯などは光による合図ですが、クルマには音によって合図を出す機能も備わっています。それがクラクション(警音器)です。

道路交通法では、クラクションについて、以下のように定めています。

第54条 車両等(自転車以外の軽車両を除く)の運転者は、次の各号に掲げる場合においては、警音器を鳴らさなければならない。

1. 左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上で道路標識等により指定された場所を通行しようとするとき。
2. 山地部の道路その他曲折が多い道路について道路標識等により指定された区間における左右の見とおしのきかない交差点、見とおしのきかない道路のまがりかど又は見とおしのきかない上り坂の頂上を通行しようとするとき。

つまりクラクションは、見通しが悪い場所で対向車などに自車がこれから通ることを知らせるための機能であり、その機能は道路標識で使用を指定されている場所でのみ使うことができるものになります。

道路交通法第54条2項には「車両等の運転者は、法令の規定により警音器を鳴らさなければならないこととされている場合を除き、警音器を鳴らしてはならない」と定められています。
ただ、2項の最後には「ただし、危険を防止するためやむを得ないときは、この限りでない」と書かれているため、緊急時の危険回避のためにとっさにクラクションを鳴らすことが違反になることはないでしょう。

ただ、信号が青に変わったのに発進しないクルマにクラクションで合図したり、道を譲ってくれたクルマにクラクションを鳴らしてお礼をするのは間違った使い方になります。また、前に割り込んできたクルマに対して「割り込むなよ!」とクラクションを鳴らすのも正しい使い方とは言えないでしょう。

  • クラクションを鳴らすメージ

クラクションを鳴らさなければいけない場所で鳴らさなかった場合は『警音器吹鳴義務違反』となります。

違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円、原付車/5000円

逆にクラクションの使用が定められた場所以外でクラクションを使うと、『警音器使用制限違反』として取り締まりの対象になる可能性があります。このケースでは違反点はなく、一律3000円の反則金が課せられます。

多くのクルマやバイク、自転車や歩行者などが利用する道路では、これから自車がどのような動きをするかを周囲に伝えることで、周りのクルマや人がそれに備えることができます。みんなが気持ちよく道路を通行できるよう、正しい合図を心がけてください。

(文:高橋 満<BRIDGE MAN>)