今までの常識は通用しない!? 最新のエンジンオイル事情・・・カーアイテム活用術

  • エンジンオイルが並んだ棚

従来のエンジン車、そしてエンジンを搭載しているハイブリッド車でも欠かせないのがエンジンオイルだ。ちゃんとオイル交換していたとしても、適切で良質なものを選ばないとエンジン本来の性能を引き出せないことになってしまいかねない。とくに最近は省燃費でのオイルに対する依存度は増すばかり。そのほかでも疑問、悩みは尽きない。
今回は、メンテナンスの要、エンジンオイルについて紹介しよう。

エンジンオイルにまつわる悩みを解消していく前に、基本的な役割などを改めて紹介しておこう。エンジンオイルに求められる性能は潤滑だけでなく、冷却、清浄、防錆、密封の5つがあって、人間の血液みたいなものと言われるのはこのためだ。つまり良質なオイルを選んだり、適切なスパンで交換するのはこれらの性能を維持するためとも言える。

さらに言えるのはエンジンの高性能化に合わせてオイルも進化しなければならないということ。高性能化というとパワーアップと思いがちだが、最近では省燃費性におけるオイルへの依存度は高まるばかりだ。

それに応えるためにオイルは進化していて、最新のエンジンには最新のオイルというのがベストだ。ちなみに古いクルマでも最新のオイルであればいいと思うかもしれないが、一概には言えないので、オイルの性状に合わせて慎重に選ぶほうがいい。

  • エンジンオイルを入れているイメージ

    資源価格の高騰もあってオイルの値段も高くなっているだけに、上手に選んで適切に交換することで無駄な出費は抑えたい

エンジンオイルのお悩み解消STEP① 交換時期は守ったほうがいいのか?

むやみに換えるのは考えもの

まず交換時期の基本となるのが自動車メーカーの指定で、取扱説明書などに記載されている。最近の傾向はロングライフ化で、距離は1万2,000kmから1万5,000km毎ぐらい。時間は1年毎が多い。ちなみにオイルフィルターはロングライフ化に伴って、以前のオイル交換2回に1回から毎回交換になっている。

このメーカーの指示というのは純正オイルに基づくもの。昔からメーカーの純正オイルは性能がそこそこで、交換時期についても長すぎるので早めに交換したほうがいいと言われていたりする。世の中には高性能を謳う高価なオイルがたくさんあって、用品店の棚にズラリと並んでいるのでなおさらだ。

もちろん高くていいものを、早めに交換するのはベストではある。ただし、財布への負担は大きいし、オイルは資源でもあるので、むやみに交換してしまうのは考えもの。結論から言うと、純正オイルほどそのエンジンに適したものはない。開発で使われていて、過酷な試験もくぐり抜けている。交換時期についても耐久試験をクリアしているし、純正オイルの強みはオイルが原因でエンジンにトラブルが発生した場合、保証が効くというのは大きい。

もちろん社外オイルを選ぶのは問題ないし、あれこれ試してみるのは楽しいが、頭の片隅に入れておいてほしい。最近ではメンテナンスパックが普及して、オイルも交換時期もメーカーやディーラーの指定なのでこの場合はお任せではある。

メーカー指定の6~7割ぐらいも交換目安の一つ

それでも交換期間で気になる人はメーカー指定の6〜7割ぐらいで換えるといいだろう。またシビアコンディションという条件でのテストも自動車メーカーは別途していて、該当する場合は半分ぐらいでの交換が推奨されている。シビアコンディションは過酷な状況を想像しがちだが、近所へのちょい乗りや渋滞なども含まれるので、当てはまることも多い。

ちなみに安いオイルを小まめに交換するのがいいか、いいオイルを長く使うのがいいか論争は昔から続いているが、安いオイルは性能が低いこともあるので、信頼できるオイルを指定に沿って交換するほうがいい。新品なら安い天ぷら油でも美味しい天ぷらになるかを考えてみると分かりやすいだろう。

  • エンジンオイルの交換サイクルの描かれたシール

    ボンネットの裏にも交換指示は明記されていて、オイル以外もロングライフ化が進んでいる。昔の常識とは変わってきているのだ

  • エンジンオイルは走行距離と時間で管理するのが鉄則

    触ったり、色を見てもオイルの劣化はわからない。走行距離と時間で管理するのが鉄則

エンジンオイルのお悩み解消STEP② 最新のオイルで燃費は上がるのか?

シビアな性能が求められる最新の規格

オイルにはさまざまな規格があって、日米欧でも異なっていたりする。話しが広がりすぎるのもわかりにくくなるだけなので、今回は日本車向けに使われている規格で見てみよう。パッケージを見るとSNやSPのように、Sともうひとつのアルファベットを組み合わせたものがあって、これがオイルのグレードを表す規格だ。もともとはアメリカの規格がベースとなっている。

最新の規格はSPで、SAから順に進化して現在に至る。ポイントはただ単に潤滑性能がよくなっているのではなく、時代によって求められるものに変わっているということ。もちろん最新のSPで重要視されているのは省燃費性で、ロングライフ化すれば省資源にもなるからだ。

ちなみにどれくらいSPで燃費が上がるかというと、10-30Wで3%ほどというデータがある。実際に実感できるかどうかは別の話しで、規格試験をクリアしているのは事実。最新のオイルは燃費向上とロングライフをアシストすると言っていい。つまり財布にも優しいというわけだ。

  • パッケージに書かれているエンジンオイルの規格

    真ん中の円がドーナッツマークと呼ばれる規格の認証。SP規格などをパスしていることがわかる

SNを入れているとエンジンが壊れる!?

正規の規格なのにエンジンが壊れると聞くと驚くだろう。問題なのは欧州車(とくにダウンサイジングターボ)で、潤滑不足のためエンジン内部での動力を伝達しているタイミングチェーンが伸びてしまう例が多発。最悪の場合、点火時期が狂ってピストンなどが破損につながるという深刻な事態になることも。

その対策も実はSP規格の重要な進化点になっている。日本車ではオイルに頼らず対策されているので、欧州車で特に気をつけたい。早めに交換するか、SP規格のオイルを使用するのが対策だ。

  • エンジンの内部のイラスト

    エンジンの上下、つまりバルブとピストンの動きを繋いでいるのがタイミングチェーン。これが伸びると大きなトラブルにつながるのは写真を見てもわかるはず

エンジンオイルのお悩み解消STEP③ 超低粘度は燃費の向上が目的

サラサラしすぎて、オイルではなくて水!?

ここ数年で一気に進んでいるのが低粘度化だ。粘度とはオイルの硬さのことで、パッケージには0W-20や10W-30などと表記され、そのオイルがどれくらいの硬さかを知ることができる。Wが付いている数字が低温で、付いていないほうが高温時。エンジンが暖まったときの性能が問われるので、後者のほうを重視したほうがいい。ただし、前者も冬の始動性にも関係するので、参考にはしたい。

10W-30や10W-40が主流だったところ、20年ほど前に0W-20が出てきて驚いたものである。さらにここ最近になって0W-16は当たり前で、0W-8という超々低粘度も自動車メーカーの指定になっている。こうなると水という感じだ。

理由は当然、エンジンの燃費性能のさらなる向上のため。高度に進化したエンジンでは燃費向上での伸び代はあまりなく、細かい努力の積み重ねというが実際。そのなかでオイルへの依存度は高く、粘度を下げればエンジン内部の抵抗などを下げられるため、燃費向上につなげることができる。

信頼できるオイルを選ぶ重要性が高まっている

ただし、粘度を下げると肝心の金属同士の摩耗を防止する油膜も薄くなるのでその両立には高い技術力が必要となる。昨今はなおさら、信頼できるオイルを選ぶ重要性は高まるばかりだし、純正オイルの信頼感も際立つのもまた事実だ。

  • 省燃費をアピールするエンジンオイルのパッケージ

    パッケージに省燃費性能に優れていることが大々的に明記されている。低粘度は時代の要求でもある

エンジンオイルのお悩み解消STEP③ オイルの性能はベースでまず決まる!

バランスのいい性能、最近増えている合成油

クルマ好き、走り好きが口にするのがベースオイルだ。原油から精製されて造られる「鉱物油」と化学的に作られる「化学合成油」に分かれていて、前者は性能に限界はあるものの価格は安く、後者はその逆。またそれぞれをブレンドした半化学合成油や部分合成油というのもあって、こちらは性能と価格をうまくバランスさせている。

最近、ここに新しく加わったのが「合成油」と呼ばれるカテゴリーで、これはなにかというと原油を化学的に精製して合成したことからこの名称がある。「化学合成油」と混同しやすいが、裁判でも認められていることから、各オイルメーカーが使用している。

「合成油」の特徴は性能が高く、価格が安いことでその点でも普及が進む。さらに燃費向上とエンジン保護を両立させる超低粘度オイルの性能を確保するには鉱物油では役不足というのも影響している。

オイルを選ぶ際は価格やスタッフのオススメだけで選ぶのではなく、ベースオイル、規格、粘度を意識して選ぶといいだろう。そして定期的にしっかりと交換するのも大切で、これを守れば悩みや不安は解消されるはずだ。

  • エンジンオイルのパッケージに書かれている「SYNTHETIC」

    シンセティックも合成油を指す。従来の100%化学合成油はフルシンセティックとなって、少々紛らわしい

ディーゼルもオイルが大切

環境性能を高めた、いわゆるクリーンディーゼルも人気だ。クリーンディーゼルの特徴のひとつが、DPFと呼ばれる排気ガス浄化のフィルター。ここの作動にオイルの成分も影響するため、クリーンディーゼルには専用オイルを使用する必要がある。規格としてはDL-1と呼ばれ、2021年にはよりエンジン保護力を高めたDL-2が登場。最近の国産ディーゼルはこちらを指定していることが多い。

(文、写真:近藤暁史)

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