クルマへの荷物の積載ルールをおさらい。高さや重さ、落下に要注意・・・今一度思い出したい交通ルール

  • クルマへの荷物の積載ルールをおさらい

みなさんが運転免許を取得した時、さまざまな交通法規を学んだはず。しかし運転免許を取得し日常的に運転するようになると、なんとなく他のクルマの流れに合わせていて、特に法規のことを意識せずに走っていることも多いのではないでしょうか。

道路はクルマ以外にもバイクや自転車、そして多くの歩行者などが利用します。だからこそ利用する人たちが同じ法規を守り、不慮の事故を防止しなければなりません。

ここでは大切な交通法規を今一度思い出し、皆さんと一緒に安全運転を心がけていきましょう。

第9回目は、クルマに荷物を積む際の交通ルールについておさらいしましょう。

乗用車の最大積載量は乗車人数+手荷物が目安

  • キャンプで荷物を積んでいるイメージ

走りや快適性、燃費などとともに、クルマの大切な性能の一つである積載性。みなさんもクルマを購入する際はラゲッジルームやトランクを見てどれくらいの荷物が積めそうかを考えるはず。筆者も知人からクルマ購入の相談を受けるとき、燃費とともに積載性能のことを必ず質問されます。

クルマに荷物を積む際、安全に配慮するのはドライバーの義務。道路交通法を始めとする法規でも積載方法などが定められています。

積載について考える際、まずは自分の愛車が乗用車か貨物車かを知っておく必要があります。多くの人が乗っているクルマは主に人を乗せることを目的にした乗用車になります。ただ、近年はアウトドア用途や趣味のトランスポーターとして貨物車(商用車)を愛車にしている人も増えています。

自動車の用途には「乗用」「貨物」「乗合」「特殊」という4つの区分があり、車検証の「用途」欄に書かれています。また、クルマについているナンバープレートでも確認できます。右上に書かれた3ケタの数字の頭の数字が3・5・7なら乗用車、1・4・6なら貨物車になります。

  • 車検証

貨物車は何kgまでの荷物を積むことができるという最大積載量が決められていて、それを超える重さの荷物を積むことはできません。貨物車の最大積載量は車検証に記載されていますので、遊びに行くときなどは過積載にならないよう注意してください。

難しいのは、乗用車の場合。乗用車は人を乗せて移動することを目的としているため、最大積載量という概念がありません。自動車メーカーはさまざまな使い方を想定してクルマを開発していますが、だからといって荷物の重量を気にせずに積むのはおすすめできません。

トヨタと日産はWEBサイトで、「乗用車の最大積載量を乗車定員+手荷物(1人分10kg)程度を目安にしている」としています。注意したいのは1人あたりの重量を55kgで計算していること。

定員5名のクルマに体重55kgの人が5名乗車し、それぞれ10kgの手荷物を積むとします。その場合は55kg×5人=275kgと10kg×5名分=50kgで人と荷物の総重量が325kgになります。この「325kg」が基準となります。

たとえば4人家族で父親が体重70kg、母親が体重50kg、子どもの体重が20kgと30kgだとすると、155kgの荷物を積むことができる計算になります。体重70kgの男性が1名でリアシートを倒し荷物を満載にして出かける場合は255kgの荷物を積むことができる計算です。

みなさんもクルマに乗る人を想像しながら、自分のクルマにどれくらいの荷物を積むことができるかシミュレーションしておくことをおすすめします。

荷物でドアミラーが確認できなくなるのは違反

  • ドアミラー

次は荷物の積み方を見ていきましょう。

道路交通法第55条2には以下のように定められています。

車両の運転者は、運転者の視野もしくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、または外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯もしくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、または積載をして車両を運転してはならない。

膝の上に荷物を置いてハンドル操作の妨げになるというのは言語道断ですが、たとえばインテリアショップで長尺物を購入してリアシートと助手席を倒して荷物を積むということもあるかと思います。このとき運転席からドアミラー(後写鏡)が見えなくなる積み方をするのは「乗車積載方法違反」となります。
違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円

ちなみに積載とは異なりますが、日差しを遮ろうとして運転席や助手席の窓にカーテンやサンシェード、タオルなどをかけて運転するのも乗車積載方法違反となります。このような運転はしないでください。

  • キャンプ道具でパンパンのラゲッジルーム

SUVやミニバン、コンパクトカーなど乗車スペースとラゲッジスペースがつながっているクルマの場合、荷物を天井付近まで積んでいるためにルームミラー(車室内後写鏡)で後方確認ができなくなった経験がある人もいるはず。これも乗車積載方法違反になるのでしょうか。

ルームミラーは「道路運送車両の保安基準」で衝撃緩和の技術基準が定められていますが、ルームミラーで後方確認ができないことに対する違反の基準は書かれていません。荷台のあるトラックや現金輸送車のようにガラス部がパネルで埋められたクルマだと、ルームミラーでの後方確認はできません。そのため、ルームミラーで後方確認ができなくてもすぐに違反となることはありません。

ただ、運転中の視界確保という安全性を考えると、荷物を積む際はきちんとルームミラーで後方が確認できる範囲に留めておくことを強く推奨します。荷物をリアシートの背もたれより上まで積んでしまうと後方視界が遮られるだけでなく、危険回避でブレーキを強く踏んだ際に荷物が前に崩れてくる可能性があり思わぬ怪我をする危険もあります。

年式が新しいクルマだと後部に設置したカメラの映像をルームミラー内のディスプレイに映すデジタルインナーミラー(名称はメーカーにより異なります)がついているものもあります。部分的に視界が遮られるときはこの機能を活用するのもおすすめです。

ルーフキャリアに荷物を積むときの注意点

  • ルーフキャリア

たくさんの荷物を積んで出かけるためにルーフキャリアを活用している人も多いでしょう。荷物をクルマの外に積む際は、はみ出しに注意する必要があります。2022年5月に道路交通法施行令の一部が改正され、積載制限が見直されました。

■荷物の大きさ
長さ:自動車の長さにその長さの10分の2を加えたもの(全長の1.2倍まで)
幅:自動車の幅にその幅の10分の2を加えたもの(全幅の1.2倍まで)
高さ:3.8mから自動車の積載をする場所の高さを減じたもの。軽自動車は2.5m(地面から積載物上まで3.8m。軽自動車は地面から積載物上まで2.5m)

■積載方法

  • 自動車の車体の前後から自動車の長さの10分の1の長さを超えてはみ出さないこと
  • 自動車の車体の左右から自動車の幅の10分の1の幅を超えてはみ出さないこと
  • 警視庁「変わります!自動車の積載制限」

引用:警視庁「変わります!自動車の積載制限」
https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2022/03/npa_sekisaiseigen.pdf

つまり長さと幅はクルマの1.2倍の大きさまで積むことができるものの、積載する際は前後左右とも1.1倍までしかはみ出すことが認められていないため、ぎりぎりのサイズの荷物を積む際は前後左右のはみ出しを均等にしなければいけません。

バックドアにキャリアを付けて自転車などを積載する場合は、キャリアや積載方法について正しい取り扱い方をしっかりと確認するとともに、ウインカーやナンバープレート、尾灯などが隠れないように積載するようにしましょう。

高さ制限で気をつけたいのは軽自動車。最近は全高が高い軽自動車が多いため、自転車などをルーフに積載すると制限オーバーになる可能性があります。登録車は高さ制限を超えることはなかなかないはずですが、軽自働車を含めて街なかの駐車場などの高さ制限には注意が必要です。

  • ルーフキャリアに積載された自転車

荷物の落下に要注意! 事故が起きれば懲役刑も……

もうひとつ、ルーフキャリアに荷物を積む際に気をつけなければならないのが、走行中の積載物落下です。道路交通法では運転者の遵守事項として「乗降口のドアを閉じ、貨物の積載を確実に行う等当該車両等に乗車している者の転落または積載している物の転落もしくは飛散を防ぐため必要な措置を講ずること」(第71条4)と定めています。

荷物を転落させないために必要な措置を取らなかった場合は「転落等防止措置義務違反」に、転落した荷物が原因で事故や被害が発生すると「転落積載物等危険防止措置義務違反」になり、どちらも以下の違反点数・反則金が課せられます。
違反点:1点
反則金:大型車/7000円、普通車/6000円、二輪車/6000円

高速道路や自動車専用道路においては、道路交通法で以下のように定められています(第75条10)。

自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなることまたは積載している物を転落させ、もしくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。

もし、高速道路で荷物が転落してしまった場合は、「高速自動車国道等運転者遵守事項違反」となり、以下の違反点数・反則金が課せられます。
違反点:2点
反則金:大型車/12000円、普通車/9000円、二輪車/7000円

さらに、積載物の落下は大きな事故につながるかもしれません。もし落下物を原因とする死傷事故が起きた場合は、「過失運転致死傷」が適用される場合もあり、非常に重い罰則が課せられる可能性もあります。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

たくさんの荷物を積んで出かけられるのはとても便利。でも積んでいる荷物が原因でトラブルが発生するのは避けたいところ。出かける際は積載に関するルールを守って、安全運転を心がけてください。

(文:高橋 満<BRIDGE MAN>)

今一度思い出したい交通ルール