運転中にスマホをいじる「ながら運転」は厳禁!・・・今一度思い出したい交通ルール
みなさんが運転免許を取得した時、さまざまな交通法規を学んだはず。しかし運転免許を取得し日常的に運転するようになると、なんとなく他のクルマの流れに合わせていて、特に法規のことを意識せずに走っていることも多いのではないでしょうか。
道路はクルマ以外にもバイクや自転車、そして多くの歩行者などが利用します。だからこそ利用する人たちが同じ法規を守り、不慮の事故を防止しなければなりません。
ここでは大切な交通法規を今一度思い出し、皆さんと一緒に安全運転を心がけていきましょう。
第11回目は、運転中のスマホ操作について見ていきましょう。
「ながら運転」は1999年11月から禁止
運転中に通話をしたり、スマホの操作をするのは交通違反。これはドライバーにとって常識。かつては運転中に通話しているドライバーも多かったですが、最近ではすっかり見なくなったように感じます。
運転中の通話など「ながら運転」が禁止されたのは1999年11月。まだ“ガラケー”の時代で、「携帯電話などを手に持って通話すること」「携帯電話などの画面を注視すること」が禁止されました。ちなみに画面の注視はナビやテレビ、ゲーム機などもアウトです。
ただ、道路交通法でながら運転が禁止されたものの単に使用するだけでは罰則がなかったので、違反と知りながら通話やメール操作をしているドライバーも多かったのだと思います。それもあり2004年11月には罰則が強化されました。この罰則強化により、ハンズフリー通話を利用する人が増加しました。
そして多くの人がスマホを使うようになると、運転中にスマホを操作したり画面を注視する人が増加。スマホの場合、通話やメールだけでなく、さまざまなアプリを使う人が多いので、必然的にスマホの画面を見てしまうわけです。
それもあり、2019年12月から運転中の携帯電話などの操作が厳罰化されました。
■携帯電話使用等(保持)
罰則:6か月以下の懲役、または10万円以下の罰金
違反点:3点
反則金:大型車/2万5000円、普通車/1万8000円、2輪車/1万5000円
■携帯電話使用等(交通の危険) ※事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合
罰則:1年以下の懲役、または30万円以下の罰金
違反点:6点
反則金:反則金の対象外(罰則の適用)
引用:警視庁「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/keitai/info.html
上のグラフは警察庁が発表した「携帯電話等使用による交通事故発生状況(令和5年中)」。左のグラフを見ると、厳罰化された2019年には事故が減少しているものの、その後は右肩上がりで増えています。運転中のスマホ操作は違反だし、危険なのも重々承知しているけれど、便利だからやめられないのでしょうか。
右のグラフは死亡事故が発生した際にスマホなどを使っていたかいなかったかを調査したもの。スマホを操作していたときは死亡事故率が約4倍になっています。
クルマは40km/hで走行していると2秒間に約22.2m、60km/hだと2秒間に約33.3も進みます。ドライバーはほんの少しだけ目を話しただけと思っても、それだけの距離を進めば道路状況が変わっていたり、歩行者などが飛び出してくる危険性もあります。万が一事故を起こしてしまったら取り返しがつきません。運転中のスマホ操作は絶対にやめましょう。
ハンズフリーでの通話は違反?
ここで「ながら運転」の定義を見ておきましょう。道路交通法第71条5の5で以下のように書かれています。
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第四号において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第四号において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
「ながら運転」とは走行中(停止しているときを除く)に、
- 装置を手で保持して通話(送信または受信)する
- 画面(画像表示用装置)に表示された画像を注視する
ことを指します。つまり、ハンズフリーの機器を使ってスマホを手に持たない状態で通話するのは「ながら運転」には当たりません。現在、多くのクルマにBluetooth等でスマホをつなぎ、運転しながら通話できる機能がついているのもこれが根拠になっています。
気をつけなければいけないのはイヤホンマイクを外付けして使うタイプ。道路交通法には運転中のイヤホン使用に関する定義はありませんが、もしイヤホンを使用した状態で事故を起こすと安全運転義務違反に問われる可能性があります。
道路交通法第70条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
そして運転中のイヤホン使用は条例で定めている都道府県もあります。
東京都道路交通規則第8条の5
高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。ただし、難聴者が補聴器を使用する場合又は公共目的を遂行する者が当該目的のための指令を受信する場合にイヤホーン等を使用するときは、この限りでない。
滋賀県道路交通法施行細則第14条の6
カーラジオ等を高音にし、またはイヤホーン等を使用して聞く等安全な運転に必要な交通に関する音または声が聞こえないような状態で車両を運転しないこと。ただし、公共目的を遂行するための指令を受信する者が、イヤホーン等を使用するときは、この限りでない。
千葉県道路交通法施行細則第9条の7
車両を運転するときは、音量を上げ音楽を聴く等安全な運転に必要な音声が聞こえないような状態にしないこと。
上の例を見ると、東京都と滋賀県ではイヤホンの使用の禁止について規則が定められていますが、千葉県では定められていません。ただし、イヤホンの使用に関わらず外部の音が聞こえない音量でのカーラジオ等の使用は禁止されています。
自分が住んでいる県、これから出かけるでは禁止されているのかを一度調べてみましょう。
ただし、イヤホンは音量が小さくても外部の音が聞こえにくくなるものもありますし、片耳タイプであっても運転に対して注意力が低下してしまうと「安全運転義務違反」となる場合がありますので、使用はおすすめできません。
信号待ちの間にスマホをいじるのは違反?
では、信号待ちなどで停止しているときのスマホ操作は違反になるのでしょうか。
道路交通法第71条5の5では携帯電話などの操作について「当該自動車等が停止しているときを除き」としています。つまり信号待ちなどで停止しているときのスマホ操作は違反にはなりません。
とはいえ、停止していても運転中のスマホ操作はおすすめできるものではありません。画面に集中することでブレーキペダルの踏み方が緩んでしまう危険性もありますし、操作に集中して信号が変わったことに気づくのが遅れる可能性もあります。信号待ちも含めて運転中はスマホ操作をしない。これくらいの心の余裕が欲しいですね。
ドライバーが飲酒運転をした場合、同乗者も罪に問われます。これは道路交通法第65条4の「運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第一項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。」に基づく処罰です。
ではドライバーが運転中にスマホ操作をした場合は、同乗者も罪に問われるのでしょうか。道路交通法第71条5の5はあくまで運転者に対して運転中の携帯電話等の操作を禁止しているもの。同乗者に対する禁止事項は書かれていません。
つまり運転中にスマホを操作することを同乗者が注意しなくても罪に問われることはありませんが、ながら運転は危険な行為。それが原因で万が一事故などが起こったら取り返しがつきません。もし運転者が操作をしようとしていたら、注意するようにしましょう。
「ながら運転」にはスマホの操作以外も含まれます。ナビやテレビの操作は必然的に「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視」することになるので、「ながら運転」として禁止されています。では画像を注視しない「ながら運転」はどうなのでしょう?
スマホを持ちながら通話することは禁止。でも同乗者と会話したり、みんなで歌って盛り上がることは道路交通法で禁止されていません。飲食や喫煙も禁止されていません。
ただ、話に夢中になって注意力散漫になったり、飲食や喫煙による前方不注意や操作ミスで事故を起こすと、道路交通法第70条の安全運転義務違反に問われる可能性があります。安全で快適なドライブを楽しむためにも運転中は運転に集中し、目的地についたら仲間と存分に楽しみましょう!
(文:高橋 満<BRIDGE MAN>)
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