犬用シートベルト?愛犬と一緒のドライブ向け安全グッズ【ペットとドライブにでかけたい!第2回】

  • ケージに入った愛犬

前回は、安全な「ペットとドライブ」について道路交通法の観点から考えてみました。「愛犬を同乗させること」自体は問題ありませんが、愛犬が車内で自由に動ける状態は安全運転の妨げになり得ます。今回はその続きとして「愛犬のシートベルト」とも言える安全に役立つ犬用ドライブグッズをご紹介します。

いちばん安全なのはクレート+確実な固定

  • シートに固定したクレート

    しっかり固定したクレートを利用するのが愛犬を安全にクルマに乗せる方法のひとつ。写真はハイエースをベースにしたトヨタモビリティパーツ神奈川の「ワン!PiNG ACE」。運転席と助手席の間に装備した「センターボード」にクレートを取り付けた様子。

愛犬と飼い主、双方の安全に有力な選択肢は、クレートや堅牢なキャリーに入れてクルマに乗せる方法です。愛犬が運転の邪魔をすることはありませんし、万が一、衝突事故に巻き込まれても愛犬が座席から投げ出されるリスクを抑えられます。ドアや窓ガラスに衝突して大ケガをすることも防ぎやすくなります。

  • シートベルトで固定したクレート

    愛犬家にはおなじみの「リッチェル」のクレートの場合、上部にあるH型の切り欠きにシートベルトを通すしくみ。

「狭い所に閉じ込めてはかわいそう」という意見もあると思いますが、一般的に犬は囲われた空間にいる方が落ち着く習性があります。クレートの中ならカーブやブレーキング時に身体が“もっていかれる”ことも少なく、不安を感じることなく過ごせるメリットもあるでしょう。

  • 荷室に固定した大型クレート

    大型のクレートを荷室に収納した例。上下はハンドグリップと荷室フロアの金具に、左右は後席のISOFIX金具を利用して固定。力をかけても動くことはなく、ドライブ中も愛犬は快適に過ごすことができる(写真はホンダステップワゴン)。

ただし、“置けば終わり”ではありません。クレートやキャリーは「どこに置くか」と「どう留めるか」が大切です。多くの場合、小型犬用のコンパクトなクレートは座席に置いてシートベルトを利用することをメーカーが推奨しています。中・大型犬用のケージは、通常、ハッチバック車のラゲージスペースに積載します。ケージ本体に丈夫なストラップを通して荷室のフックに結ぶなど、しっかり固定しましょう。

なお、クレートやキャリーをクルマに載せる方法は、製品によって細かな部分が異なります。取扱説明書を読んで正しく使うことが重要です。

【補足】SUVやステーションワゴンなどの荷室に愛犬を乗せる場合、キャビンと荷室を分けるネットやゲート類を使用することがあるでしょう。ラゲージスペースに愛犬を乗せた場合、これも「前席へ来ない」=運転を邪魔しないための物理的な仕切りとしては有効です。ただし、愛犬そのものを固定するわけではなく、荷室内で転倒したり、急制動で荷物と干渉したりするリスクは残ります。仕切りはあくまで“侵入防止”。愛犬の居場所を作るケージ等とセットで考えるのが安心です。

車内に“定位置”を作る(運転の妨げを減らす)

クレートや堅牢なキャリーは安全性が高い一方で、飼い主と愛犬との間に距離が生じるデメリットもあります。クレートに慣れていない愛犬は、逆に不安を感じることもあります。そんな場合に向いているのは、助手席や後部座席に固定して「愛犬の席」をつくるグッズです。

  • 助手席にセットしたソフトケージ

    Honda Dogの「ペットシートプラスわん2」は愛犬と飼い主がお互いの姿を確認しながら、安全で快適なドライブをサポートしてくれる。

例えばソフトケージの「ペットシートプラスわん2」(※)は、上部と側面のメッシュを通して愛犬と飼い主がお互いを確認できるよう配慮されています。クルマのシートに取り付ける前提で設計されているため安定性も高く、しっかり固定できます。内部には飛び出し防止用のリードフックも備え付けられており、運転の邪魔になる行動を抑える助けになります。
(※ホンダ車用純正アクセサリーの開発・販売を行うホンダアクセスが展開する、ペット用アクセサリーブランド“Honda Dog”の製品)

  • リアシートに設置したサークル

    小型犬の多頭飼いや中型犬には、リアシート1人分を使ってスペースをつくるサークルも選択肢に入る(写真はHonda Dog の「ペットシートサークル」)。

小型犬を多頭飼いしている飼い主さんや中型犬をクルマに乗せる場合には、後部座席で愛犬の行動範囲を絞るグッズが便利です。1人分の座席スペースを使った大きめのドライブ用サークルをさまざまなメーカーが販売しています。愛犬の快適性を損なわずに、運転席と愛犬のスペースを区切ることに役立ちます。

  • リアシートにセットしたマット

    大型犬向けには、後席全体を覆い、前席への移動を制限できる大型のマットがお勧め(写真はHonda Dogの「ペットシートマット」)。

より広い“区画づくり”が必要な大型犬の場合は後席全体を覆うマットが向いています。前席のヘッドレストを利用して、前に移動しにくいアレンジが可能な製品が販売されています。泥や抜け毛など車内の汚れ対策に役立つグッズであるとともに、滑りにくい素材によって足元が安定し、愛犬の挙動が落ち着くメリットもあります。

停車時にも潜む危険(SA/PAでの飛び出し対策)

ここまで紹介したグッズは主に走行時の安全と愛犬の快適性に役立つものですが、愛犬とのドライブでは停車中も注意が必要です。物音に驚いたり、車外に出られることに興奮したりして、愛犬が予期せぬ行動をとることがあります。高速道路のサービスエリアやパーキングエリアでは、ドアを開けた瞬間に愛犬が車外へ飛び出し、思わぬ事故につながるケースもあります。

実際に2015年3月、中央自動車道の阿智パーキングエリアで停車中に愛犬が飛び出し、それを追って本線に入ってしまった飼い主が重傷を負った事故が報じられています。この事故では、愛犬もクルマにはねられて死亡しています。ドアを開けた瞬間の飛び出しは、愛犬だけでなく飼い主さん自身を危険にさらすこともあるのです。

  • リードにつながれたリアシートの愛犬

    ペットと一緒にドライブする場合、停車時の飛び出しにも注意したい(写真はISOFIX金具のロア・アンカーに係留するHonda Dogの「ペット車外飛び出し防止リード」)。

ペットとのドライブでは、停車時も事故にあわないよう常にリードを着用するのが安心です。チャイルドシート用のISOFIX(アイソフィックス)金具を利用して、首輪やハーネスを比較的簡単にクルマに係留できるリードの利用もお勧めです。ドアを開ける瞬間の飛び出し対策として心強いグッズです。

なお、クルマへ係留する際にお勧めしたいのは、首輪でなくハーネスの利用です。急ブレーキや衝突時には、リードによって愛犬の身体に負荷が発生します。その力をハーネスは広い面で受けとめ、首の1点に集中するのを避けてくれます。飼い主の指示が伝わりにくいため訓練やしつけには首輪が好ましいと言われますが、ドライブ中は「もしも」に備えてハーネスの着用を検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ:安全な「ペットとドライブ」のチェックリスト

  • サークルに収まる愛犬2頭

愛犬との付き合い方は家庭ごとに違います。また、愛犬の性格や体の大きさ、健康状態などによってベストなドライブの方法は異なるでしょう。唯一無二の絶対的な正解はありませんが、重要なのは走行中・緊急時・停車時のそれぞれでリスクをつぶしておくことです。ポイントは次の3点です:

1)走行中に愛犬が運転の妨げにならない状態にあること、
2)急ブレーキや衝突時に、愛犬が車内で投げ出されたりドアや窓ガラスにぶつかったりしない安全策が講じられていること、
3)停車時に飛び出さないよう、ドアを開ける瞬間も含めて愛犬が管理されていること。

具体的には、次のような点を確認することで、愛犬との安全なドライブ方法が決めやすくなります:

  • 愛犬の居場所をどこにするか(助手席/後席/荷室):中・大型犬で飼い主の姿が見えなくても問題ない場合、クレートやケージに入れて荷室に固定するのが安全。飼い主が見えないと落ち着かない愛犬の場合は、後席や助手席などキャビン内で過ごすのが安心。
  • クレートやサークルなどは確実に固定されているか?:グッズの取扱説明書を参照したうえで、シートベルトやラゲージフックなど信頼性の高い車両装備を正しく使う。“置くだけ”になっていないかを確認する。
  • 愛犬が運転を妨げる場所に来られない対策が講じられているか?:小型犬用のソフトケージや後席用のサークルやマットなどで愛犬の移動範囲を制限。あわせて、車内で動ける範囲が広くなりすぎないよう係留具は長さを調整するとともに、確実に装着する。
  • 停車時の飛び出し対策も講じられているか?:愛犬とのドライブは、走行中だけでなく停車時にもリスクが存在することを忘れない。

愛犬は大切な家族の一員です。だからこそ、クレートや“定位置づくり”、停車時の飛び出し対策まで、道具を正しく使って車内の安全環境を整え、安心してドライブを楽しみましょう。

次回予告:ドライブと愛犬の健康編へ

次回からは、愛犬とのドライブで気をつけたい健康面のポイントについてご紹介します。犬にもある車酔い。その対処法や適切な休憩タイミングなどを紹介する予定です。ペットとクルマの関係を、感覚ではなく根拠ある安全で考える――その第一歩として、ぜひ続けて読んでいただければと思います。

(文と写真:石川 徹)

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