犬にもある車酔い -- 春のお出かけシーズンを前に、知っておきたい体調の話 --【ペットとドライブにでかけたい!第3回】
今はまだ2月。寒さの残る時期ではありますが、もう少しすると春を迎えます。日常のお散歩に加えて、ちょっとしたお出かけやドライブの機会も増えてくるでしょう。そんな季節を前に考えておきたいのが、愛犬の体調という視点です。
飼い主さんから時々聞くのが、愛犬の車酔いに関する悩み。クルマに乗ると、「よだれ」が増えたり、落ち着きがなくなったり、ひどい場合には吐いてしまう -- 愛犬がそんな症状に見舞われた方も少なくないはずです。今回は、犬にも起こる「車酔い」について、その仕組みと対処について整理します。
犬の車酔いは人間の「乗り物酔い」と同じ
まず知っておきたいのは、犬の車酔いは人間の乗り物酔いと基本的に同じ仕組みで起こるということです。人がクルマや船などに乗って酔うときは、身体の揺れを感じ取る感覚と目から入る視覚情報のふたつにズレが生じることが原因のひとつと考えられています。
犬も同じです。人間と同じように犬の耳の奥には「内耳」と呼ばれる部分があり、そこに三半規管や前庭といった平衡感覚を司る器官があります。私たちも含めて動物は、これらの器官からの情報と視覚情報を無意識のうちに統合し、身体の傾きや姿勢を自然に調整しています。
ところがクルマに乗ると、揺れている身体の感覚と目に入る情報との間にズレが生じやすくなります。これが大きくなると脳の情報処理が追いつかなくなり、自律神経の働きが乱れて吐き気や嘔吐といった症状につながります。犬にとっても、このような症状は「気持ちが悪くなる」という人間の感覚と本質的に変わりません。
車酔いというと「吐くこと」を思い浮かべがちですが、実際にはその前に、さまざまな変化が現れます。よだれが増える、あくびが多くなる、落ち着きがなくなる、呼吸が速くなる。あるいは、逆にじっと動かなくなってしまうこともあります。これらは、犬が不調を感じているサインです。嘔吐はあくまで結果であり、前段階の変化に気づいてあげることが症状を悪化させないための重要なポイントです。
なお、こうしたサインは必ずしも車酔いだけでなく、強い緊張や不安によって現れることもあります。いずれにしても、症状が繰り返し見られる場合は体調面も含めてかかりつけの獣医師に相談しておくと安心です。
車酔いに影響する個体差と成長
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人間と同様にクルマの好き嫌いには個体差がある。子犬時代からクルマでのお出かけが大好きな愛犬もいる一方で、短時間のドライブでも酔ってしまうケースもある。
犬の車酔いには、特有の視覚も関係しているという説があります。犬は、目の前の対象を見ることに適した視覚構造を持つ動物です。一方で、横に流れていく景色を長時間見続けるような経験は、自然界ではほとんどありません。クルマの窓から見えるスピード感のある景色は、犬にとってはとても非日常的な刺激だと思われます。こうした視覚情報が、内耳からの情報とのズレをさらに大きくし、車酔いを起こしやすくする可能性もあります。
ただし、車酔いの出方には個体差があります。まったく酔わない犬もいれば、短時間の移動で症状が出てしまう犬もいます。筆者が最初に迎えた愛犬は、乗車後20分くらいで「よだれ」や「えずき」、時には嘔吐といった症状にしばしば見舞われました。その一方で、現在一緒に暮らしている2頭のうち1頭はドライブが大好きです。
また、一般的に子犬は三半規管などが十分に発達していないため、車酔いを起こしやすい傾向があるともいわれます。筆者のもう1頭の愛犬も子犬時代は稀に車酔いをすることがありましたが、2歳の誕生日を迎えて以降、11才の現在までドライブで体調を崩したことはありません。
そのほか、クルマに乗る経験が少ない犬や、過去に強い車酔いを経験した犬、環境の変化に敏感で緊張しやすい犬でも症状が出やすいことがあるようです。
春のお出かけ前に意識したい、車酔いの予防
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愛犬の安全なドライブに役立つクレートは車酔いの予防にも使えそう。
いずれにしても、車酔いは予防が大切です。これから迎える春先は、特にクルマに乗る機会が久しぶりに増える時期です。強い車酔いを経験すると、揺れや匂い、不快感を愛犬が記憶して、クルマに乗ること自体がストレスになってしまうことがあります。
車酔いのリスクをできるだけ減らすためには、身体が安定するクレートやキャリーバッグを使うことをお勧めします。同乗者の膝の上に乗せたり、車内を比較的自由に動ける状態にしたりするのではなく、やや狭めの空間に入ることで揺れが軽減され、外の景色による刺激も抑えやすくなります。前回は安全面におけるメリットをご紹介しましたが、クレートの使用は車酔い防止にも役立つ可能性があります。
また、食事のタイミングにも注意することをお勧めします。食後すぐや過度な空腹状態でのドライブは車酔いを起こしやすくなることが知られています。お出かけの直前はフードを少なめにしたり、逆に空腹の場合はおやつを食べさせたりといった工夫が車酔いの防止につながることもあるでしょう。
食事の管理や乗せ方と同じくらい重要なのが、ドライバーの運転のしかたです。急ハンドル、急ブレーキ、急加速といった操作は、人が感じる以上に愛犬の身体には強い刺激として伝わります。こうした動きが続くと、愛犬にとっての揺れはさらに大きくなり、車酔いを助長してしまうこともあります。
カーブや交差点では早めに減速し、発進や停止もできるだけ穏やかに行うなど、スムーズな運転を意識することが愛犬の車酔い予防にも役立つでしょう。愛犬にとって負担の少ない運転は、結果的にドライバーにとっても安全運転につながります。
どうしてもクルマ移動が必要な場合
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薬のパッケージ 動物病院で処方してもらえる薬もある。ドライブ出発の1時間前までに飲ませることで、車酔いの予防につながることがあるそうだ(写真はイメージ)。
「ウチの子はクルマが苦手だから、ドライブには連れ出したくない」と感じる飼い主さんも多いでしょう。でも、引っ越しや災害時など、どうしてもクルマで一緒に移動せざるを得ない場面もあるでしょう。そうした場合の選択肢として、獣医師の判断のもとで処方される「酔い止め」的な薬もあります。
犬用の制吐薬(吐き気止め)として用いられる薬の中に、乗り物酔いによる嘔吐の予防を目的に使われるものもあります。車酔いの原因そのものをなくす薬ではありませんが、嘔吐という強い症状を抑えることで乗り物での移動時に愛犬にかかる負担を軽減してくれます。
こうした薬は、基本的には一時的な対処法のひとつと考えるのが安心だと思います。ドライブのために日常的に使うのではなく、「いざ」という時に備えて、かかりつけの獣医師に相談しておくと安心でしょう。
無理をさせない判断が、次につながる
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愛犬の体調を最優先して楽しいドライブを!
走行中に大きな呼吸の変化などが見られた場合、一時的にクルマを停めて換気をするなど症状の悪化を防ぐことが必要です。大切なのは、「予定どおりのドライブ」よりも、「愛犬の体調を優先すること」です。その積み重ねがクルマへの苦手意識を減らし、春以降の外出をより安心で楽しいものにしてくれます。
次回予告|ドライブに大切な「犬の休憩」
次回は、車酔いに限らず、愛犬にとって「移動中の休憩」がどんな意味を持つのかを、春のお出かけシーズンを前に考えていきます。
(文と写真と図:石川 徹)
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