スタッドレスタイヤはなぜ滑りにくい?凍った道でタイヤが滑る理由とノーマルタイヤとの違い

  • 氷板路のスタッドレスタイヤ

冬道で怖いのは、見た目にはわかりにくい凍結路です。とくに橋の上や日陰などでは路面温度が下がりやすく、氷の表面にできるごく薄い水の膜によって、タイヤが急に滑りやすくなることがあります。こうした状況で頼りになるのがスタッドレスタイヤです。では、ノーマルタイヤと何が違い、なぜ凍った道でも滑りにくいのでしょうか。

この記事では、凍結路が滑りやすい理由とあわせて、スタッドレスタイヤの仕組みを分かりやすく解説します。

そもそもスタッドレスタイヤとは?

  • スタッドレスタイヤvsノーマルタイヤイメージ01

スタッドレスタイヤは、雪や凍った道を走るための冬用タイヤです。「スタッド」とは、タイヤに打ち込む金属の鋲(びょう)やピンのこと。つまりスタッドレスとは、鋲を使わずにゴムと溝の工夫で冬道を走れるようにしたタイヤを指します。

では、なぜスタッドレスタイヤは滑りにくいのでしょうか。これを理解するためには、凍結した道路が「滑りやすくなる」メカニズムを知る必要があります。

凍った道路はなぜ滑りやすいの?

  • 氷雪路イメージ

凍った道路が滑りやすいのは、タイヤと路面の間に薄い水の膜ができやすいからです。氷の表面は、タイヤがかかる圧力や走行中の摩擦によって、ごく表面だけがわずかに溶けることがあります。すると氷の上にうっすらと水が広がり、タイヤが路面をしっかりつかみにくくなります。この水の膜が滑りを助けるような働きをするため、ブレーキを踏んでも止まりにくく、ハンドルを切っても曲がりにくくなります。

また、氷の表面は硬くてなめらかで、乾いた道路のような細かな凹凸が少ないのも特徴です。そのため、タイヤが路面に引っかかりにくく、十分な摩擦を得にくくなります。つまり凍結した道路では、水の膜ができやすいことと、路面そのものをつかみにくいことが重なり、滑りやすくなるのです。

スタッドレスタイヤが滑りにくい理由

  • スタッドレスタイヤvsノーマルタイヤイメージ02

では、スタッドレスタイヤはなぜ凍結路で滑りにくいのでしょうか。その理由は、低温でもしなやかさを保ちやすいゴムに加え、水を逃がしやすい溝や細かな切れ込みによって、滑りの原因となる薄い水膜を減らし、路面をとらえやすくしているためです。

滑りにくさを支える要素は、大きく3つに整理できます。

① 低温でもしなやかさを失いにくいゴム

気温が下がると、タイヤのゴムは硬くなりやすく、路面の細かな凹凸に沿って変形しにくくなります。その結果、接地面が減り、十分な摩擦を得にくくなります。スタッドレスタイヤは、低温でも硬くなりすぎないゴム配合を採用しているため、路面の凹凸に追従しやすく、接地を確保しやすいのが特長です。

一方、通常のタイヤは低温下でゴムがしなやかさを失いやすく、路面への追従性が低下しやすいため、摩擦を生み出しにくくなります。

② サイプ(細かい切れ込み)が水を逃がし、角で路面をとらえる

  • スタッドレスタイヤイメージ01

スタッドレスタイヤの接地面には、無数の細かな溝であるサイプが刻まれています。走行中にタイヤがたわむと、サイプが開閉して路面上の水分を逃がすように働きます。

同時に、サイプが多いほど接地面のエッジ(角)も増えます。このエッジが凍結路面や圧雪路面の表面に細かく引っかかることで、滑りやすい状況でも摩擦を生み出しやすくなります。

一方、ノーマルタイヤはサイプが少ないため、凍結路面をとらえるためのエッジを作りにくい傾向があります。そのため、凍結路ではこうした構造の違いがグリップ力の差として現れやすくなります。

③ 吸水・発泡などの技術で、水の膜ができにくくなる

凍った路面では、表面にできるごく薄い水の膜が滑りやすさの原因になります。そこでスタッドレスタイヤには、その水を減らしやすくする工夫が取り入れられています。代表的なのが、発泡ゴムのようにゴムの中に小さな穴をたくさん作る技術です。

メーカーによって仕組みや呼び方は異なりますが、目的はほぼ同じです。氷の表面にできる水の膜をできるだけ減らし、タイヤが路面に密着しやすくすることです。

雨の日の濡れた路面では、溝を使って水を外に逃がすことが重要です。一方、凍った路面では、氷の上にできる薄い水の膜そのものが滑りやすさにつながります。そのため、水の膜ができにくいようにする工夫が重要になります。

濡れた道に強いタイヤが、凍った道にも強いとは限らない

  • スタッドレスタイヤイメージ02

混同されやすいのが、濡れた路面に強いタイヤなら、凍結した路面にも強いのではないかという考え方です。どちらも水が関わりますが、路面の状態は大きく異なります。

雨で濡れた路面では、ある程度の厚みを持った水が路面に広がるため、タイヤの溝で水を外へ逃がし、ゴムが路面にしっかり触れる状態をつくることが重要です。

一方、凍結した路面では、氷の表面にできるごく薄い水の膜が滑りやすさの原因になります。この水の膜は潤滑油のように働き、タイヤが路面をつかみにくくします。

そのため、太い溝で水を逃がすだけでは十分でない場合があり、細かなサイプで水を逃がしやすくする工夫や、水の膜を残しにくくする技術、さらに低温でもしなやかさを保つゴムの性質が重要になります。

まとめ

  • 雪道イメージ

スタッドレスタイヤが凍結路で滑りにくいのは、低温でもしなやかさを保ちやすいゴム、細かなサイプによる水分の逃がしやすさとエッジ効果、さらに水膜を残しにくくする技術によって、氷の上でも路面をとらえやすくしているためです。見た目には同じように見える冬道でも、実際には薄い水の膜が大きな危険につながることがあります。

ノーマルタイヤとの違いを正しく理解し、路面状況に合ったタイヤを選ぶことが、安全運転の基本といえるでしょう。

(文:新里陽子 編集:平木昌宏 画像:Adobe Stock)