愛犬とドライブするならこんなクルマ -- ペット仕様のライトキャンピングカー「ワン!PiNG ACE」 --【ペットとドライブにでかけたい!第6回】

  • ワンピングエースサイドビュー

これまで本連載では、愛犬とのドライブを安全に楽しむためのルール、装備、休憩の取り方や車内の温度管理などを紹介してきました。今回は、愛犬との移動をより快適にするクルマに注目します。

日本RV協会によると、国内のキャンピングカー保有台数は2024年時点で16万5000台に達したそうです。また近年では、ペットを家族の一員として考えるライフスタイルが広がっています。愛犬と一緒に車中泊や長距離旅行を楽しむユーザーも増えているようです。

愛犬と一緒にドライブを楽しみたい——そんなドライバーに向けて開発されたのが、ハイエースをベースにしたペット向けキャンピングカー「ワン!PiNG ACE」(以下、ワンピングエース)です。このモデルは愛犬家特有のニーズに応えるために、トヨタ車用の純正部品を取り扱うトヨタモビリティパーツ神奈川支社が企画しました。

愛犬との外出と日常使用を両立したモデル

  • ワンピングエースフロント3:7

    車体のサイズは一般的なミニバンと同じレベルで、取り回しの良さも魅力のワンピングエース。

ワンピングエースは開発担当者自らが愛犬と出かけるシーンを想定し「もっと一緒に過ごす時間を増やしたい」という思いを叶えるために誕生しました。本格的なキャンピングカーとしての機能性を持ちつつ、家族の送り迎えや買い物といった「普段使い」にも対応できる利便性を両立しています。あわせて、車内での愛犬の安全性や衛生面、さらには災害時の同行避難までを視野に入れた設計が特徴です。

ベース車両には「ハイエースバン SUPER GL(ロングバン・標準ボディ・標準ルーフ)」が採用されています。キャンピングカーでは、車体の大きさが運転のハードルになることがあります。このモデルは標準ボディを採用しているため、全長4,695mm・全幅1,695mmと、一般のミニバンに近い感覚で扱えるサイズです。都市部の狭い道路や駐車場でも取り回しが楽なため、日常使いにも不便は感じないでしょう。

愛犬とのドライブで気になる車内環境

  • レムワンダーのペット用車載設備

    キャンパー鹿児島のペットオーナー向けモデル「rem Wonder」が装備するリードフックやシャワー。

「ペットの家族化」とともに、愛犬と一緒に移動や旅行を楽しむ新しいクルマの使い方が注目されています。愛犬たちとキャンピングカーで移動する際は、車内環境が重要なポイントになります。

滑りやすいフロアは、愛犬にとって大きなストレスになることがあります。意外とかさばるペット(トイレ)シーツや足ふき用ウェットティッシュなどの小物類、ドッグフードといった荷物の収納場所も必要です。そのほか愛犬がゆっくりできる休憩スペースの確保など、考慮すべき点は少なくありません。

  • レクヴィのシート表皮素材

    レクヴィはシートなどに汚れや傷に強い表皮素材を使用することで、ペット仕様ながら明るい内装色を採用しています。

こうした点に配慮し、ワンピングエース以外にもペットとの利用を前提とした装備を備えるキャンピングカーが増えています。

たとえば「店舗訪問者の約4割はペット連れ」というキャンピングカービルダーの「レクヴィ」は、「SOLAN(ソラン)」モデルに防水性や耐久性に優れたシート素材などを採用しています。「キャンパー鹿児島」ブランドを展開する「双日モビリティ」は、ペットの飛び出し防止防止ネットやクッションフロア、抗菌シートなどを装備した特別仕様モデルをラインナップしています。そのほか、リードフックなどの装備も取り入れて、車内で愛犬と安全・快適に過ごす環境づくりを重視したモデルが色々なメーカーから販売されています。

ペット向け装備をまとめた「パッケージ」

  • フロントセンターボードにセットされたクレート

    愛犬の滑りや汚れ防止に配慮したシート表皮と、クレートをしっかり固定できるフロントセンターボード。

ワンピングエースの内装には、愛犬家目線での細やかな配慮が施された「ベーシックパッケージ」が標準装備されています。

専用フロア:犬は滑りやすい床が苦手な動物です。特に車内では急ブレーキやカーブの際に踏ん張りが利きにくくなることがあります。ワンピングエースのフロアは、こうした状況を想定して滑りにくい素材を採用しています。また、爪による傷がつきにくく、仮に傷がついてしまっても目立ちにくい加工が施されているとともに、衛生面にも配慮した抗菌処理が施されています。

専用シートおよびベッドマット:後部座席やベッド用マットの表面には、凹凸加工を施した合成皮革が使用されています。これも、愛犬の足が滑ることや傷がつくことを防止する効果があります。また、布製の表皮に比べて抜け毛が付きにくく、水汚れにも強いため、清掃が楽になるメリットもあります。

フロントセンターボード:小型犬用のクレート(キャリーケース)のためのスペースが運転席と助手席の間に設置されています。しっかりと固定するためのバンドも備わっており、この連載の第2回でご紹介したように走行中の愛犬の安全を確保します。停車中にはクレートを取り外して、愛犬の休憩スペースや飼い主用のテーブルとして利用することもできます。

後部キャビネット:愛犬とのお出かけは思いのほか荷物が多く、整理整頓が難しくなりがちです。大容量の収納スペースは愛犬家にとってありがたい装備です。また、キャビネットの取っ手には、ワンプッシュで収納できるフラットな構造が採用されています。これは、愛犬が鼻をぶつけるなどの怪我を防ぐためという、まさに「愛犬目線」での配慮です。

4つのシートアレンジで多様な使い方に対応

  • ワンピングエースベッドモード

    ワンピングエースのベッドモードは大人2人が寝られるスペース。

ワンピングエースの車内空間は、簡単な操作で4つのモードに切り替えることができます。

ドライブモード:走行時のレイアウトで、後席に3名が乗車できます。道路交通法に基づき、必ず前向きでシートベルトを着用します。

ダイネットモード:車内が、向かい合ってくつろぐリビングルームに変わります。標準装備のスライドテーブルを利用して、食事やデスクワークなどに適した環境を車内に作ることができます。

ベッドモード:後席をフルフラットにすることで、大人2名が就寝可能なスペースが生まれます。ベッドの長さは最大で2,450mmと、大人でも脚を伸ばして休むことができます。

リビングモード(オールフラット):車内全体を平坦な空間にし、愛犬と自由に過ごせるモードです。(完全なフルフラット化には別途オプションが必要です。)

災害時の同行避難も想定

  • ワンピングエース電源部

    災害時のペット同行避難用としても使用できるのは、キャンピングカーのもうひとつの魅力。

ペットと移動できる車両の大きなメリットのひとつとして、災害時における愛犬との「同行避難」サポートがあります。災害発生時には、飼い主がペットを連れて避難する「同行避難」を環境省が推奨しています。とはいえ、動物が苦手な方もいることから、実際には避難所の同じ空間でペットと人が一緒に過ごせないケースは少なくないようです。

自治体が設置する避難所での共同生活が難しい場合には、使い慣れた車内をペットと一緒の避難先として活用できます。ワンピングエースでは、オプション設定されている1000Wのポータブルバッテリーと専用のLED照明を組み合わせれば、停電時でも数日程度は照明を確保できます。そのほか、マイナス18度まで冷却可能な冷蔵庫や、愛犬用のシャワーセットなどもオプション設定されています。災害時には愛犬の衛生環境を維持することにも役立つでしょう。

  • ペットとの生活イメージ

    “ペットの家族化”によって毎日の散歩だけでなく旅行にも愛犬を同伴する飼い主は増えている。

愛犬と一緒に出かけるドライブは、目的地で過ごす時間だけでなく移動そのものも楽しみです。車内にくつろげる空間があれば、旅先での過ごし方もより自由になります。

ペットとクルマの関係は、今後さらに多様化していくと考えられます。ワンピングエースのように愛犬との移動を前提に設計されたクルマは、そうしたニーズに対応する一つの例と言えるでしょう。愛犬とのドライブをより安全で快適なものにするには、クルマ選びを愛犬たちの視点から考えてみることも、ひとつの方法かもしれません。

次回は、国内最大級のペットイベント「インターペット東京」の取材を通して、ペットとのドライブをより快適にするクルマやドライブグッズについての最新情報をご紹介する予定です。

【参考情報】 ワンピングエースの価格
ベースとなる「ハイエースバン SUPER GL」(※1)の車両本体価格に専用架装の費用が追加されます。「ベーシックパッケージ」(※2)は消費税・工賃込みで1,184,920円(参考価格)からの設定(2026年3月現在)。そのほか、LED照明やシャワーセット(タンク容量16L)、冷蔵庫(19L)、シートカバーなど様々なオプションが設定されています。

※1 ロングバン・標準ボディ・標準ルーフ・標準フロア、ガソリン車(2WD)またはディーゼル車(2WD/4WD)
※2 ベッドマット・後部キャビネット・スライドテーブル・外部AC電源・フロントセンターボード。取り扱い地域によって価格が異なる場合があります。

このモデルはトヨタモビリティパーツ神奈川支社が企画したもので、当初は神奈川県内のトヨタ販売店で販売が始まりました。今では展開地域が広がり、福井県、長野県、岐阜県、静岡県でも取り扱いっています。なお、ベース車両がハイエースなため、車両の点検や整備は全国のトヨタディーラーで受けることが可能です。

(文と写真:石川 徹)