なぜ日本の車は白・黒・グレーが多いのか?データで読み解く3つの背景
街を走るクルマの色は、白・黒・グレーといったモノトーンが多いように感じられます。たしかに、こうした色は無難で合わせやすく、飽きにくいことから、好まれやすい傾向があります。
ただ、モノトーンの多さは、単なる流行や好みだけではありません。販売の現場では選ばれやすく、管理する側にとっても扱いやすい色です。さらに、製造面でも都合がよいという事情があります。こうした条件が重なった結果、モノトーンのクルマは販売台数が増え、街でもよく見かけるようになっているのです。
この記事では、なぜ最近のクルマに白・黒・グレーが多いのか、その理由を解説します。
世界でもモノトーンが主流!日本では白の人気が目立つ
では実際に、いまどのような色が選ばれているのでしょうか。街なかでモノトーンのクルマをよく見かけるという印象は、各種調査データにも表れています。
液体・粉体塗料の大手グローバルサプライヤーであるアクサルタ社の第72回世界自動車人気色調査年次報告書では、2024年の自動車カラートレンドが紹介されています。これを見ると、世界全体で白・グレー・黒・シルバーといったモノトーンが高い支持を集めていることがわかります(※1)。
日本に目を向けると、ホワイトが38%で最も多く、なかでもパール仕上げが29%を占めています。ブラックの内訳はソリッドが4%、エフェクトが14%。グレーは3%、グリーンは1%前年比で増加しています。シルバーは7%で、以前に比べるとやや存在感が小さくなっています。
この結果からは、日本では白や黒といった定番色の人気が高いだけでなく、パールホワイトやエフェクト仕上げのブラックなど、光沢感や質感のある仕上げが好まれていることも読み取れます。
※1【データ出典】アクサルタ社『2024年版世界自動車人気色調査報告書を発表』
https://www.axalta.com/jp/ja_JP/newsroom/news/ColorPopularity2024.html
モノトーンが人気の3つの理由
このモノトーン人気。理由はいくつかの要素が重なっていることが背景にあります。ひとつずつ見ていきましょう。
理由①:売るときに不利になりにくいから
白・黒・グレーが選ばれやすい理由のひとつは、中古車になっても買い手がつきやすいからです。クルマ・ポータルサイト「グーネット」の成約データによると、2023年上半期に購入された中古車の色は、ホワイトが36%、ブラックが23%、グレーが5%でした。3色を合計すると64%となり、中古車を買った人のおよそ3人に2人がモノトーン系を選んでいる計算になります。つまり、白・黒・グレーは中古車市場でも需要が大きい色だといえます(※2)。
この点は、新車を選ぶときの考え方にもつながります。クルマの色は見た目の好みだけでなく、将来手放すときの売りやすさにも関わるためです。中古車として人気がある色なら、次の買い手が見つかりやすく、査定でも大きく不利になりにくいと考える人は多いでしょう。
実際、一般財団法人自動車検査登録情報協会が公表した2025年3月末時点の乗用車の塗色別保有構成では、白が48.95%、黒が17.36%、灰が16.31%で、この3色だけで82.62%を占めています(※3)。
多くの人が選び、中古車でもよく売れる色だからこそ、新車でもさらに選ばれやすくなっていると考えられます。
【データ出典】
※2:グーネットマガジン『【2023年】車の人気色・定番色ランキング!20代女性に人気なカラーは…?』
https://www.goo-net.com/magazine/contents/209812/
※3:一般財団法人自動車検査登録情報協会『乗用車の塗色別保有台数』
https://www.airia.or.jp/publish/file/tosyokubetsu_2025.pdf
理由②:多くの人が使う場面でも受け入れられやすいから
モノトーン系の色は、自家用車だけでなく、カーシェアやレンタカーのように多くの人が使う場面でも選ばれやすい色です。
パーク24が2021年に公表したドライバー向け会員制サービス「タイムズクラブ」の会員を対象に実施した「好きなクルマの色」に関するアンケート結果では、カーシェアやレンタカーで利用するなら何色のクルマがよいかという質問に対し、約7割が希望する色を挙げました。中でも多かったのは、黒16%、白14%、シルバー14%で、上位3色はいずれもベーシックな色でした(※4)。借りるクルマでも、幅広い人に受け入れられやすい無難な色が選ばれやすいことがわかります。
同じ調査では、いちばん好きなクルマの色として白が26%、黒が23%で、この2色だけで約半数を占めました。つまり、白や黒は自分の好みとしても支持されやすく、実際にカーシェアやレンタカーで使う場面でも選ばれやすい色だといえます。派手な色よりも、誰にとっても違和感が少なく、使う場面を選びにくい色のほうが、多くの人が利用するサービスでは採用しやすいのです。
【データ出典】
※4:パーク24『2人に1人が好きなクルマの色は「白」または「黒」と回答 好きなクルマの色と違う色のクルマを保有している人は4割』
https://www.park24.co.jp/news/2021/10/20211008-1.html
理由③:売れ筋色に絞るほど、工場でもつくりやすいから
白・黒・グレーのクルマが多いのは、ユーザーの好みだけが理由ではありません。工場でクルマをつくる側にとっても、よく売れる色に生産を集めたほうが効率がよいからです。
実際、日本ペイントオートモーティブコーティングスが2023年7月5日に公表した資料では、自動車の製造工程の中でも塗装工程は特にエネルギー消費が大きく、工場全体のエネルギー消費の約70%を占めると説明されています(※5)。塗装はもともと手間もエネルギーもかかる工程であり、ここをいかに無駄なく回すかが生産効率に大きく関わります。
さらに、塗装は色の数が増えるほど効率が下がりやすくなります。色を切り替えるたびに、塗料の入れ替えや洗浄が必要になり、その分だけ塗料ロスや洗浄剤の使用、作業時間の増加が起こるためです。塗装設備大手のドイツ・デュールは、2024年2月7日に公開したレポートで、複数の自動車メーカーを分析した結果として、「全生産量の90%超は最大でも上位10色に集中している」と紹介しています(※6)。つまり、実際の工場では多色展開をしていても、生産の大半はごく一部の売れ筋色に集中しているということです。しかも、その上位の定番色として、白・黒・シルバー・グレーが挙げられています。
こうした事情を考えると、メーカーが白・黒・グレーのような定番色を多くそろえるのは自然な流れです。デュールは2020年7月10日公開の資料で、たとえば白のようにひとつのブースで同じ色をまとめて塗る場合、色替え時の塗料ロスを最大10%削減できると説明しています(※7)。色替えが減れば、塗料の無駄だけでなく、洗浄やすすぎの回数も減り、VOC(揮発性有機化合物)の排出も抑えやすくなります。つまり、よく売れる色に生産を集めることは、在庫や販売の都合だけでなく、工場の工程そのものを回しやすくする意味もあるのです。
このため、メーカー側から見ると、白・黒・グレーのような売れ筋色を中心に展開するのは合理的です。需要が多く、中古車でも流通しやすいうえに、生産工程でも無駄を抑えやすいからです。モノトーンのクルマが街なかで多く見えるのは、好みだけでなく、こうした製造現場の事情も重なっているためだといえます。
【データ出典】
※5:日本ペイントオートモーティブコーティングス『Pioneering Sustainable Automotive Coatings: Nippon Paint Takes Center Stage at SURCAR』
https://www.nipponpaint-automotive.com/en/wp-content/uploads/2023/07/230705-Pioneering-Sustainable-Automotive-Coatings-4.pdf
※6:デュール『The EcoSupply P paint supply system provides a range of colors quickly, economically, and residue-free』
https://reframed.durr.com/en/news/small-quantities-many-colors/
※7:デュール『Paint shop of the future: Dürr presents quantum leap for more flexibility in automotive painting』
https://www.durr-group.com/en/media/news/news-detail/view/paint-shop-of-the-future-79076
色はどう選ぶ?迷ったときの判断軸は
ここまで読むと、「結局、モノトーンの車を選ぶのが正解なのでは」と感じるかもしれません。ただ、色選びに正解・不正解があるわけではありません。大切なのは、見た目の印象だけでなく、自分の使い方や目的に合った色を選ぶことです。迷ったときは、次の3つの視点で整理すると考えやすくなります。
まず考えたいのは、数年後に売る可能性があるかどうかです。将来的に手放すことをある程度想定しているなら、白、黒、グレー、シルバーといった無彩色は選択肢に入れやすいでしょう。こうした色は選ぶ人が多く、用途も幅広いため、中古車でも検討されやすい傾向があります。反対に、長く乗るつもりであれば、売却時の条件をそこまで重視しなくてもよくなります。そのぶん、自分の好みや日々の使いやすさを軸に、選びやすくなります。
次に意識したいのが、洗車や手入れにどれくらい手間をかけられるかという点です。こまめな手入れが難しいなら、グレー系は選びやすい色のひとつです。汚れや小傷が目立ちにくく、日常の負担を感じにくい傾向があるためです。
一方で、手入れが苦にならない人であれば、白や黒も含めて選択肢は広がります。とくに黒は、汚れや小傷が目立ちやすい反面、きれいな状態を保てたときの満足感が大きい色でもあります。
そして最後は、その色が本当に好きかどうかです。クルマは毎日目にするものだからこそ、見たときに気分が上がるかどうかは重要な判断材料になります。迷ったときは、この点を最優先にしてもかまいません。
反対に、「特別好きというほどではない」「決め手がない」と感じる場合は、売りやすさや手入れのしやすさといった実用面から絞っていくほうが、判断しやすくなるでしょう。
白、黒、グレーの車が多く見える背景には、流行だけでなく「売りやすさ」「使いやすさ」「作りやすさ」といった実用的な理由があります。こうした条件が重なり、無彩色が選ばれやすくなっていると考えられます。
ただし、それがそのまま正解というわけではありません。色選びはセンスだけで決まるものではなく、自分が何を重視したいのかを整理して考えることが大切です。条件を踏まえたうえで、最後は毎日自分が目にする色として納得できるものを選ぶこと。それが、後悔しにくい選び方といえるでしょう。
(文/新里陽子、編集と図版/平木昌宏、写真:Adobe Stock)
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