「30万円あったら頭金ではなく趣味に生かしたい!」購入ではなく“中古車サブスク”を選んだ、現役女子大生のリアル【連載コラム:Z世代とクルマのリアル】
「私が暮らす地域では、クルマがないととても不便なんです。でも、自分でクルマを『買う』のは、リスクでしかないと思ったんです」
山口県で大学生活を送る“おかめさん(仮名・20歳)”は現在、月々2万円のサブスクリプション(定額利用)で、中古の軽自動車に乗っています。
走行距離は11万km超えの中古車。車検代と保険料は月額に含まれており、自己負担はガソリン代(月6,000〜8,000円)と駐車場代(月1,000円)のみ。看護学部の2年生、アルバイトで月約8万円を稼ぐおかめさんが「買わず」に「借りる」ことを選んだ理由とは、一体何だったのでしょう。
前回の記事では、データを通じてZ世代が抱える「欲しくても、持てない」経済的な現実を分析しました。給与水準に対して社会保険料が上がり続け、実質的な手取りが増えない中、クルマの「所有」は若者にとって大きなハードルとなっています。
おかめさんも、まさにその現実の中を生きている一人です。クルマが生活に不可欠な地方にいながら、なぜ「買う」ではなく「借りる」を選んだのか、リアルな声を聞きました。
免許は持っている。でも「自分でローンを組んで買った友人はいない」
おかめさんが暮らす地域では、クルマは生活インフラです。一人1台クルマを持つのが当たり前で、大学1年生の夏休みに免許を取るのが暗黙のルールになっているそうです。「2年生以降は実習や国試の準備で時間がなくなるから、1年のうちに取っておかないとって。もう風習みたいな感じですね」とおかめさん。周りの友人もほぼ全員が免許を持っているそうです。
ところが、自分でローンを組んでクルマを買う学生はほぼいません。「自分でローンを組んでクルマを買った友達は、一人もいません。親に買ってもらったか、お下がりか。中古車でも、自分で買おうとする人は、このあたりでは珍しい存在だと思います」。
最寄り駅の列車は1時間に2本程度しかなく、生活圏内にカーシェアリングのステーションも存在しません。そんななか、おかめさんが選んだのが、山口県内の大学生を対象とした中古車のサブスクリプションサービスでした。大学生と地元の自動車販売会社が共同で開発したもので、学生の間でも知られているサービスです。
彼女にとって、クルマは自分を飾るためのものではありません。ブランドにもこだわりはなく、見た目が可愛くて、ちゃんと走ればそれで十分だといいます。「中古でクルマを買おうとしたら頭金は少なくとも30万円。もしそのお金が手元にあるならば、私は全部旅行に使いたいんです。クルマという『モノ』を手元に残すことより、それを使って今しか行けない場所へ行くことの方が、ずっと価値があるんです」とおかめさんは語ります。
ローンは「借金」。奨学金があるのに、これ以上縛られたくない
「クルマの購入に足りない資金はカーローンで補う」。それがこれまでの定番でした。しかし、おかめさんはカーローンを利用したくないと話します。彼女にとって、ローンは便利な支払い手段ではなく「借金」なのです。
前回の記事でも触れた通り、今の大学生の半数以上が「奨学金」を利用しており、返済が「貯蓄」や「生活設計」に影響していると感じる割合は6割を超えます。おかめさんにとってカーローンは「欲しいものを手に入れる手段」ではなく「これ以上抱えたくない負債」でした。同じ「ローン」という言葉でも、上の世代とはその重みがまるで違います。
さらに、クルマを購入したら維持費もかかります。「車検のたびにまとまったお金が出ていくのが怖いんです。あと、故障などで月いくらかかるか読めないのが一番いや」。毎月の収支を厳密に管理したいおかめさんにとって、金額の読めない支出は単なる家計問題ではなく、心理的なストレスにもつながります。
このサービスは、大学と地元の自動車販売会社が連携して提供する、大学生向けのカーリースサービスです。新車を使ったカーリースも多いなか、このサービスでは中古車を活用することで料金を抑え、大学生でも利用しやすい仕組みを提供しています。
おかめさんが利用している軽自動車のプランは月額2万円。これには保険料と車検代が含まれており、自己負担はガソリン代と駐車場代のみです。故障が起きた場合も、基本的に会社側が修理費を負担してくれます。
契約の問い合わせは、Z世代にも身近なSNSのダイレクトメッセージから行います。「借りたい」と連絡すると在庫確認用のコードが届き、現在貸し出し可能な車両を確認した上でグレードを選択。その後、会社に出向いて契約を結べば、その日からクルマに乗れるそう。口コミとSNSを起点にキャンパス内での認知が広がっているようです。
重視したのは総額より「毎月の分かりやすさ」
おかめさんのお財布事情を整理すると次のようになります。収入はアルバイト代の月約8万円。そこからサブスク利用料2万円、ガソリン代6,000〜8,000円、駐車場代1,000円。クルマ関連で合計28,000円前後。食費は自炊中心で、実家から米や野菜を送ってもらっているため月1万円もかかりません。アルバイトのまかないもあるため、食費はほぼゼロに近い月もあります。その他、生活費などを差し引き、残りの約5万円は大好きな旅行に使っているそうです。
では仮に、同じクラスの中古軽自動車を、頭金30万円を支払ってカーローンで購入していたらどうなるでしょうか。毎月のローン返済に加え、任意保険(若い世代では月15,000円前後が目安)、車検積立(月5,000円程度)、駐車場代、ガソリン代を加えると、アルバイト代のかなりの部分がクルマ関連の支出に消えてしまいます。月8万円のアルバイト収入では、趣味の旅行を十分に楽しむ余裕はありません。
とはいえ、大学生活の数年間乗ることを考えれば、トータルの出費として「安い中古車を買って乗り潰したほうが結果的には安上がり」になる可能性も十分にあります。
「トータルで計算すれば、買ったほうが安いのかもしれません。でも、所有してしまうと、税金の振り込み用紙が届いたり、車検で大きなお金が飛んでいったりしますよね。サブスクならその心配がありません。毎月決まった金額を払うだけで乗れるという『わかりやすさ』のほうが、私にとっては重要なんです」
「1年後」が分からないからこそ、縛られないという選択
最後に、将来就職して収入が安定したらマイカーを購入したいか尋ねてみました。「今のところは考えていないですね」とおかめさん。
「必要がなければ、このままサブスクの利用を続けたいと思っています。今の時代、1年後に自分がどこに住んで、どんな仕事をしているか正直わからないじゃないですか」
変化の激しい時代を生きるおかめさんにとって「数年先まで縛られる大きな買い物」はリスクになります。もし都会に引っ越してクルマが必要ではなくなるなら、契約の継続を見直せばよいのです。
「乗れればいい、それだけですね」。自宅の部屋は必要最低限のものしか置かない、本人いわくミニマリスト的な暮らし。テレビも地上波を見る環境は持たず、定額制の動画配信サービスで十分だと話します。
まとまった初期費用を避け、維持費を完全に固定化し、何かあればいつでも手放せる状態に。「所有」へのこだわりを捨て、どこまでも身軽さを追求するおかめさんの選択は、先の見えない時代を生き抜く若者の、非常に合理的で等身大な価値観を鮮やかに映し出していました。
(文:小松暁子 編集:平木昌宏 写真:Adobe Stock)
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