過去30年の「売れてるクルマランキング」を分析してみた
自動車雑誌や新聞などで、クルマの販売台数ランキングを見たことがある人も多いと思います。クルマの販売台数ランキングは、人気車種がわかるだけでなく、そのときの流行や世相を表すもの。そこで、1986年からの販売台数ランキングが年ごとにグラフやイラストで紹介されている、ソニー損保インフォグラフィクス「人気乗用車販売台数ランキング」を見ながら、クルマと文化の移り変わりを見てみましょう!
1980年代後半:ファミリーカーの主役はセダン
1986年のベスト5は、トヨタ・カローラ、日産・サニー、トヨタ・マークⅡ、トヨタ・カリーナ、日産・ブルーバード。この当時、SUVやミニバンは少数派で、ファミリーカーの主役は圧倒的にセダンでした。まだ、輸入車も少なく、「カローラ→カリーナ→マークⅡ→クラウン」と、セダンを乗り換えてステップアップしてくのが、“カーライフの王道”だった時代です。この頃は、3ナンバー車の税金が高く、3リッターのトヨタ・クラウンなどは高嶺の花。当時は、販売されるほとんどが5ナンバー車でした。
1980年代後半といえば、バブル経済へ向かっていく時期。1986年こそサニーが2位につけていましたが、1987年にはマークⅡが2位、1988年にはクラウンが3位に。おりからの「ハイソカーブーム」もあって、高級車志向の高まりをデータから読み取ることができます。台数こそ多くなく、ランキングベスト10には入っていないものの、日産・シーマが大ヒットしたのもこの頃。400~500万円という高額車にも関わらず、“シーマ現象”と呼ばれるほどのブームを巻き起こしました。
<1988年の販売台数ランキング>
1990年代:バブル崩壊でクルマの志向も変化
1990年前半になると、ベスト5にホンダ・シビックや日産・マーチといったコンパクトクラスがランクイン。また、このランキングには入っていませんが、1990年代前半はクロスカントリー4WDブームの真っ只中。三菱・パジェロ、トヨタ・ハイラックスサーフ、日産・テラノといった今で言うSUVが数多く売れました。1992年には、パジェロが月間販売台数でカローラを抜いたほど、当時は“クロカン四駆”がブームだったのです。
1990年代も後半に入ると、クロカン四駆ブームは落ち着いてきて、新たな潮流が生まれます。ミニバンです。1994年に登場したホンダ・オデッセイが大ヒット。ホンダは1996年にステップワゴンをデビューさせ、「ホンダ=ミニバン」のイメージを定着させます。
1998年のランキングを見ると、1位こそカローラが死守しているものの、2位:日産・キューブ、3位:マツダ・デミオ、4位:日産・マーチ、5位:トヨタ:スターレットと、コンパクトカーが独占していて、バブル期までの「クルマ=セダン」からミニバンやコンパクトカーへと、クルマの価値観がガラっと変わったことが伺えますね。コンパクトカーやミニバンへのニーズの高まりから、車種のバリエーションが増えたのもこの頃です。
<1995年の販売台数ランキング>
2000年代:主流はコンパクトカーとミニバンに。3代目プリウスも大ヒット
2000年代に入ると、「コンパクトカーとミニバン」の傾向はより顕著になってきます。2000年代前半を語る上で外せないのが、ホンダ・フィットの存在です。2001年に登場したフィットは、発売と同時に大ヒット。翌2002年には、それまで33年間不動の1位だったカローラを追い抜き、トップセラーとなりました。
1980~90年代は、ランキング上位の車種がそれほど入れ替わらないのに対し、2000年代は新しいミニバンやコンパクトカーが出ると、新型車が上位に入ってくるようになります。これは、車種が増えて、1車種あたりの販売台数が減ったから。1990年にトップだったカローラの販売台数は30万台を超えていましたが、2005年は同じくカローラがトップですが、その台数は約15万台。このことからも、車種が増えて、ユーザーニーズが多様化したことがわかりますね。
2000年代にはもうひとつ、忘れてはいけないモデルがあります。2009年に登場したトヨタの3代目プリウスです。それまでマーク2やクラウンといった大型セダンからのダウンサイジング需要もあって発売されるや大ヒット。2009年から2013年まで、年間販売台数トップに君臨するほどの人気車種となりました。
<2005年の販売台数ランキング>
2010年代:アクアが3年連続トップ。ハイブリッド全盛の時代へ!
ここまでくると記憶に新しいところ。2009年から4年連続でトップセラーとなっていたプリウスに代わって、2013年からはとトヨタ・アクアが3年連続で1位に。ホンダ・フリード、日産・セレナ、トヨタ・ヴォクシーといった箱型ミニバンや、ホンダ・ヴェゼル、トヨタ・ハリアー、日産・エクストレイルといったSUVも上位に入って、どのクルマもまんべんなく売れていることがわかります。“ニーズの多様化”がさらに進んだ結果でしょうね。軽自動車や輸入車も含めると、またおもしろい結果が出てきそうです。
<2015年の販売台数ランキング>
こうしてヒット車種を見ていると、なんとなくその時代のトレンドや背景が見えてくると思いませんか? 来年のこの時期、2016年のランキングがどうなっているかが楽しみですね。もしかしたら、4代目プリウスがアクアの連勝記録をストップさせているかもしれません。ソニー損保「人気乗用車販売台数ランキング」では、1年毎のランキングが見られますので、こちらもぜひチェックしてみてください!
(木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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