知られざる「海外で走る軽自動車」その1 ダイハツ・ミラ
世界でも有数の自動車生産国である日本。ですが、私たちにとっても親しみの深い身近な存在で、かつ日本を代表する小さなクルマである「軽自動車」という概念は、日本だけのものだってご存知でしたか。世界中にも軽自動車並に小さなクルマはたくさんあるのですが、排気量と車体寸法に上限を設けている“軽自動車”という枠は日本だけのもの、なのです。
でも、その枠があるからこそ、決められた上限の中で最良のものをつくる私たち日本人の気質も手伝い、いろいろな機能や性能を詰め込んだ箱庭的なクルマとなったのも事実です。
そんな優れた軽自動車ですから、日本だけで売るのはもったいない! ということで、実は案外、様々な車種が海外で発売されています。ということで今回から6回に分けて、“知られざる「海外で走る軽自動車」”と題してみなさんに海外で活躍する身近な軽自動車をご紹介していきたいと思います!
第1回はダイハツの軽自動車の主役の一つ、「ミラ」をお送りいたします。
海外向けミラは「クオーレ」と呼ばれた
- 最後のクオーレとなった、2006年登場の現行型ミラの欧州仕様。車体外寸に制限がないため、バンパーが大型化されている。エンジンも660ccではなく、1ℓ
- 1980年に登場した初代欧州クオーレ、左ハンドル仕様のダッシュボードのようす。日本ではまずお目にかかれない
- ミラに設定され大人気を誇った高性能&スポーティ仕様、TR-XX。欧州でも一部の国でクオーレTR-XXとして販売された
主流の販売車がムーブなどのトールワゴンに移ったとはいえ、いまなおダイハツの軽自動車の代名詞でもあるミラ。ボンネットがあるハッチバックスタイルは今なお健在です。そんなミラですが、海外(欧州)市場への輸出は古くから行われ、1980年発売の初代ミラ(正式にはミラ・クオーレ)からすでに左ハンドル仕様が用意されていました。ただし名前はミラではなく、「クオーレ」。1985年には日本でのフルモデルチェンジに合わせて2代目になり、この際に欧州では排気量の規制がないためエンジンは847ccまでアップされました。このようにクオーレも日本のミラに合わせてフルモデルチェンジを行っていきましたが、1999年の5代目から989ccに排気量アップするなど、欧州独自のブラッシュアップも見られました。
ところが残念なことに、ダイハツは2013年1月31日をもって欧州での販売を終了。クオーレもそれに合わせて発売を終えました。最後のクオーレは、2006年登場の現行型ミラとなりました。なお、クオーレは最後まで欧州での現地生産は行われず、日本製のままでした。
日本における「クオーレ」と「ミラ」の関係
- 初代欧州クオーレ。ドアミラーと左ハンドルであることに注目。当時の日本ではドアミラーはまだ認可されていなかった。クオーレはミラの欧州名だが、この代を含め日本でまだミラとクオーレが分かれていたときは、日本のクオーレ=欧州クオーレとして同じネーミングだった時期があることになる。
ではここで「ミラ」と「クオーレ」の日本における関係をおさらいしておきましょう。クオーレは、ダイハツが1960年代に軽乗用車として発売した最初のクルマから名付けられている由緒正しいネーミングなのですが、2代目へのモデルチェンジの際に「フェローマックス」となり、さらにエンジンを360ccから550ccに拡大・および大幅に手を入れたマイナーチェンジ時に「マックスクオーレ」となりました。そして1980年、「クオーレ」としてフルモデルチェンジ。そしてミラも「ミラ・クオーレ」という名前で同時にデビューを果たしています。ミラとクオーレの違いは、クオーレ=「乗用車登録の5ナンバー車」、ミラ=「商用車(バン)登録の4ナンバー車」で、ミラ・クオーレという正式な車名からわかるようにミラはクオーレの派生車種のような扱いでしたが、当時は税制上でも安価なバンモデル(ボンネットつきのバンなので、軽ボンバンと呼ばれた)だったミラのほうが販売量は多くなりました。
クオーレ=乗用登録、ミラ=商用登録の流れは1989年まで継続しましたが、それ以降はクオーレの名前は廃止され、乗用も商用もどちらもミラに統一されることになります。なお、クオーレは初代ミラ以前にもマックスクオーレとして存在していたため、ミラとクオーレでは世代の数え方がひとつずれることに注意が必要です。
マレーシアにもミラが
ところで、ミラは欧州以外でもマレーシアでも販売されています。1993年にマレーシア資本の会社とダイハツ、三井物産などが出資して作られたメーカー・プロドゥア社でダイハツ各車をOEMで生産しているのですが、ミラはカンチル(欧州名ニッパ)、クリサ、ビバなどと命名されてマレーシアで製造されました。なお、カンチルは3代目、クリサは5代目、ビバは7代目ミラに相当します。プロドゥアでは現在もダイハツ車をベースにした小型車生産で盛業中です。
なおこの他にも、オーストラリアなどでもミラはハンディバン、シャレード・セントロなどの名称でも販売されていました。軽自動車の持つポテンシャルは、世界でも通用するという証明ですね!
- プロドゥア・ニッパ。3代目ミラをベースにした、マレーシア製のミラ。ニッパは輸出名で、本国マレーシアではカンチルと呼ばれた。後継はクリサ。
(遠藤イヅル+ノオト)
[ガズー編集部]
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